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世界選手権にビッグサプライズはナシ。絶対王者が2冠、原が五輪に続く連続3位に
世界選手権MOの表彰台。男子は平昌と同じメンバー。2位はともにオーストラリアの選手だった
アメリカ・ユタ州パークシティを舞台とした、フリースタイルの世界選手権(スノーボードと併催)が終わった。
モーグルの歴史において、長野五輪を例外として五輪は本命が金メダルを獲得することがほとんどだったが、世界選手権には違う傾向がある。意外な選手が優勝する例が多くあるのだ。
例えば、この10年間でも、'09猪苗代大会男子MOのパトリック・デニーン(USA)、'15クライシュベルグ大会男子MOのアントニー・ベナ(FRA)、そして、'17シェラネバダ大会二冠の堀島行真といった具合に、W杯総合優勝歴のない予想外の選手が、栄冠を掴んでいるのだ。
ところが、今回の大会はそうしたサプライズ要素はほとんどナシ。今季のW杯の流れと連動したような結果となった。
男子はMO、DMともにミカエル・キングズベリー(CAN)が安定&安泰のパフォーマンスで2冠。以下、上位は固定メンバー数名が占めるという結果だったのだ。
■■■■RESULT■■■■
●モーグル
1:ミカエル・キングズベリー(CAN)
2:マット・グラハム(AUS)
3:原大智(JPN)
●デュアルモーグル
1:ミカエル・キングズベリー(CAN)
2:ブラッドリー・ウィルソン(USA)
3:原大智(JPN)
世界選手権用の秘密兵器かと思われたコーク1440(今季開幕戦でトライし失敗)を見せることがなかった堀島行真は、2種目とも上位進出も2大会連続表彰台とはならず。今季、大ブレイク中のウォルター・ウォルバーグ(SWE)もまだ粗さが目立ち表彰台に上がることはなかった。
特筆点といえるのは、2種目で3位の原大智だろう。平昌で、大舞台を楽しむことができるメンタルの強さを見せた原は、今回もその特性を発揮。平昌から続けて世界のビッグゲームで3大会連続3位という堂々の結果を残した。
デュアルに強いウィルソンが2位。前回大会での堀島とのビッグファイナルも印象強い
また、DMではブラッドリー・ウィルソン(USA)のビッグファイナル進出も見逃せない。この選手は常に爆裂覚悟のフルアタックを見せる。当然、失敗するケースも少なくないため、総合優勝争いに絡まず、総合7位あたりが定位置。もう少し抑え目に滑れば成績も安定し、ランキングもアップするかもしれない。だが、それをしないのがウィルソンの魅力なのだ。そのフルアタックはとくにDMでうまくハマることがある。今回もそのようになり2大会連続での2位となったのだ。
女子もW杯と同様の展開に。勝負の分かれ目はエアのレベルアップ
第6戦終了時点で総合8位の冨高。残る4戦でどこまで上げられるか?
一方、女子はペリーヌ・ラフォン(FRA)が、数名の上位メンバーを半歩リードするが、独走とはならず……というまさに、W杯同様の展開が見られた。
■■■■RESULT■■■■
●モーグル
1:ユリア・ギャリシェバ(KAZ)
2:ジャカラ・アンソニー(AUS)
3:ペリーヌ・ラフォン(FRA)
●デュアルモーグル
1:ペリーヌ・ラフォン(FRA)
2:ジャエリン・カーフ(USA)
3:テス・ジョンソン(USA)
結果的に、第一エアのバックフリップのグラブを加えたギャリシェバ、コークを取り入れたラフォンと、エアを進化させた選手が評価されたことになる。逆に、クロエとジャスティンのデュフォー・ラポイント姉妹(CAN)のように、エアの向上がない選手は表彰台に上がりづらくなっているというのが現実だろう。
もうひとり、'17季の総合王者・ブリトニー・コックス(AUS)は、MO20位、DM15位という散々な戦績だった。もはや、彼女のパワフルなターンはジャッジに評価されないというのは明らかなので、根本的な改善が必要だといえる。
日本勢は、冨高日向子がMO、DMともに8位。星野純子はMO9位・DM6位、住吉輝紗良はMO21位・DM11位。昨シーズン、この3名が五輪出場基準を満たせなかったのが嘘のような大健闘だった。特に冨高のどのレースでも確実に決勝に残る絶対的な安定感というのは得難いスキルだ。
キングズベリーのV8はほぼ確定!? だが、エキサイティングな状況は変わらず
さて、休止期間を経て、W杯は2月下旬より再開される。残るはたざわ湖で2戦(2/23-24)、カザフスタンのシムブラクで2戦と計4戦である。
数字の上ではまだ、多くの選手に総合優勝のチャンスはある男子だが、現実的にはキングズベリーの8連覇の可能性は高い。最短でたざわ湖の2戦目(DM)で決まることになる。
今季は怪我で調整不足だったが、平昌に続く見事な結果を残し、秋田たざわ湖大会に挑む原
見応えがありそうなのが2位、3位争い。原、堀島、前述のウォルバーグ、ベンジャミン・キャベ(FRA)、マット・グラハム(AUS)あたりが激烈バトルを展開しそうだ。
女子は第6戦終了時点で、スコア100点以内にラフォン(500点)、アンソニー(405点)、カーフ(400点)と上位3選手がひしめいており、このなかの誰が総合優勝してもおかしくない状況だ。
カギとなるのは4戦のうち2戦がデュアルであること。これはカーフにとって有利な条件となる。というのも彼女は、過去13度のW杯&世界選手権の表彰台経験のうち、デュアルがなんと7戦、うち3戦が優勝という圧倒的強さなのだ。モーグルとデュアルの開催比率を考えても、常に攻撃的なターンを見せるカーフがデュアルで強い選手であることは間違いなく、これは大きなアドバンテージとなるだろう。
また、総合4位(323点)のギャリシェバは、逆転優勝するにはラフォンの失速が前提になるので可能性は低いが、2戦が自国開催であり、どこまで追い上げられるかが見もの。
自国開催という意味では、日本勢にとってもランキングを上げるチャンス。冨高の初表彰台もそろそろありそうだ。
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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