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モーグルのW杯は12月中に行われた序盤戦、北米を舞台とした中盤戦の計6戦が終わり、世界選手権開催による休止期間に入った。
今回はこれまでの6戦の結果を踏まえた、今季の注目点を4つピックアップしてみたい。
(1)8連覇は目の前。結局、絶対王者の時代はまだまだ続く
今季開幕戦の優勝者が、第6戦終了時点でのランキング1位の選手。イエロービブをつけてたざわ湖の大会初日に出場する
昨季、ミカエル・キングズベリー(CAN)は、平昌五輪金メダルを獲得し、さらに前人未到のW杯総合7連覇を達成。ところが、W杯では3戦連続で堀島行真(JPN)に敗れたことから、“いよいよ長期政権にも陰りが見えたか?”や、“五輪金メダルも手にして、モチベーションが低下しているのでは?”といった見られかたをされたのは事実だった。
ところが、そんな読みは大ハズレもいいところであった。
絶対王者は今季、開幕戦で優勝すると連戦連勝で、6戦5勝とこれまでと何も変わらない快進撃をみせている。高難度エアをサクッと飛び、難斜面でも簡単に滑っているかのように、ハイスピードでコブを乗り越えていく。今季も、あのキングズベリーのままだった。
昨季の不調から立ち直ったベンジャミン・キャベ(FRA)、世界選手権も含めると過去に5度キングスベリーに勝っている堀島、そして要注目のアップカマーであるウォルター・ウォルバーグ(SWE)、さらに原大智(JPN)ら追撃する2位以下の選手たちにも勢いがあり、緊張感の高いレースが続いてはいる。
だが、残るは4戦。キングズベリーのスコアは現在545点で、2位のキャベが375点と離れており、いつものキングズベリーが続く限り、逆転は困難だろう。8連覇の可能性は極めて高いのだ。
(2)今季も続く女子の大混戦。カギを握るのはエアの技術力アップの成否か?
急成長株のアンソニーは同じオーストラリアのコックスより上位にいる。
第6戦終了時点で、女子ランキングトップはペリーヌ・ラフォン(FRA)。彼女は昨年の総合王者であり、平昌五輪金メダリスト。順位だけをみれば、順当な結果だと思える。
だが、そのポジションは決して安泰とは言えない。なぜなら、6戦中に優勝は2回のみで、そのスコア500点。2位で優勝1回のジャカラ・アンソニー(AUS)は405点、3位で優勝2回のジャエリン・カーフ(USA)は400点と、差がそれほどついていないのだ。数字の上では、次の第7戦(秋田たざわ湖大会)で、カーフには同点で並ばれ、アンソニーには追い抜かれてしまう可能性さえあるのだ。つまり、残る4戦の展開次第で総合順位は大きく入れ替わることになる。
この混戦を制するカギになりそうなのがエアだ。
2000年代前半、全盛期の上村愛子がコーク720を得意技としていた時期があった。ところが、これに追随する選手は少なく、いつの間にか難度の高いオフアクシス系の技を見せる女子選手がほとんどいなくなってしまった歴史がある。ところが、ここ数シーズンで再びコークに挑む選手が登場。そして今季、混戦を抜け出すための手段として、エアのレベルアップに挑む選手が目立ってきた。アメリカの選手が先導するような形だが、ラフォンも世界選手権優勝、W杯連覇を視野にコークに挑んでいる。残る4戦。どんな展開が待っているのだろうか?
(3)続々登場! 新たな4年間の主役候補たち
18歳のウォルバーグは昨季は総合12位。1年で急激に力をつけた
アフター平昌世代ともいえる若手がトップ戦線に名を連ねていることは、今季の目新しい話題だ。
まず男子は、総合3位のウォルター・ウォルバーグに大注目。180cmを越える長身から繰り出す高難度エアは迫力満点。荒削りながらターンの質も高い。今季は2位2回、3位1回と大躍進。そして、2000年生まれの18歳……。次期王者候補が誕生である。
女子は、総合2位のジャカラ・アンソニーのブレイクが目立つ。ラフォンと同い年の彼女は昨季総合17位の選手。そこから、総合優勝を狙える位置への驚異的なジャンプアップを果たしたのだ。 また、昨季W杯の秋田たざわ湖大会DMで、2000年代生まれの選手として初めて優勝したテス・ジョンソンも表彰台2回で今のところ総合5位。上位グループに定着した印象だ。 日本の堀島、原、冨高らも含め、こうした若い面々が新たな4年間の主要登場人物となっていくのだろう。
(4)SNOW JAPANは2大エースのみならず、女子も大健闘
1440特訓中だという堀島。世界選手権で、たざわ湖で披露はあるか?
さて、日本勢はどうか? 男子は、予想された通り、堀島&原の2大エース時代が本格到来した様相だ。
堀島は第6戦までで2位2回で総合4位。その大きなトピックが、開幕戦で4回転のコーク1440に挑戦したことだろう。大成功ではなかったが、それは堀島がモーグルにおけるエアの新たな進化の扉をこじ開けた瞬間であった。
原は怪我で調整が遅れていたが、第4戦ではW杯初表彰台を経験し、総合7位と勢いに乗っている。エアにも新たな工夫が見られ、トップランカーとしての貫禄も増してきた。
残る4戦のうち、自国開催大会が2戦あることは2人にとって有利な条件。ランキング的にあと1歩、2歩上を目指したいところだ。
また、女子は昨季、平昌五輪出場の条件を満たせたのが、村田愛里咲(引退)のみだったこともあり、冬の時代の到来を予感させた。ところが、冬を通り越して春がやってきた。
冨高日向子は全戦決勝進出で第3戦DMでは4位。現在総合8位。なんと、ジャスティン・デュフォー・ラポイント(CAN)、ブリトニー・コックス(AUS)よりも上位にいるのだ。
靭帯断裂の怪我から復帰もなかなか完全復活とならなかった星野純子も、今季は好調だ。毎回のように決勝に進み、現在総合11位。
そして、総合順位は18位ながら、住吉輝紗良も特筆すべき活躍をした。第5戦でファイナルを1位で突破し初のスーパーファイナルに進んだのだ。残念ながらそこでは転倒により6位に終わったが、この実績は本人にとって大きな自信になっただろう。
世界選手権が終わると、2月23日より終盤戦がスタート。たざわ湖で2戦(MO、DM)、そしてカザフスタンのシムブラクで同じく2戦(MO、DM)が行われる。キングズベリーの8連覇はなるか? 女子の混戦を制するのは誰か? 新世代の選手たちはどこまでやれるのか? 目が離せないレースが続く。
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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