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激戦続出!
12月22日に行われた、モーグルW杯の2012-2013シーズン(‘13季)W杯第2戦、オーストリア・クライシュベルグ大会デュアルモーグルは、接戦ばかりのバトルが続く稀に見る展開。ハラハラドキドキのレースとなった。
デュアルモーグル種目は、予選ラウンドがモーグル種目(シングル)と同じスタイル&採点方式だが、決勝ラウンドは2人が並んで滑る勝ち抜き戦方式。4人のターンジャッジ、2人のエアジャッジ、1人のタイムジャッジがおり、それぞれが持ち点5点を3対2、5対0などと両選手に振り分け、各対戦の勝ち負けを決める。つまり、最大点差は35対0、最小点差は18対17だ。
そしてこのクライシュベルグ大会では、18対17及び19対16というどちらが勝ってもおかしくない僅差の対戦が、男子で6回、女子で9回も見られたのだ(男女各16対戦中)。デュアルの接戦は、観る者を興奮させ、モーグルの醍醐味を味わわせてくれる。かつては決勝ラウンドがデュアルなのがモーグルの基本だった。今季はW杯全12戦中5戦が、このスタイルだ。
接戦が多くなった理由は、コースが比較的イージーで、ターン技術の差は出にくかったという点が挙げられる。タイム点はコース長によって基準点が決まるのだが、今回の予選ラウンドでは7.5点満点を含む7点台が男女とも続出した。平均斜度28度と極度な緩斜面ではなかったが、ちょうどスピードを出しやすい、W杯選手にとっては攻めやすいコース設定だったと思われる。ちなみに、このクライシュベルグは2015年の世界選手権会場となる予定だ。
そんな中、またしても大物食いか?という好走を見せたのが、伊藤みきだ。準々決勝で、ジャスティン・デュフォー-ラポイント(カナダ)とサイドバイサイド。見事、女王候補筆頭に先着ゴールする。タイム点は3対2で伊藤の勝ち、ターン点は10対10の同点と評価された。しかしエア点が、6対4でジャスティンの勝ち。結果、18対17でジャスティンの勝利となったのだった。昨季の対ハンナ・カーニー(アメリカ)戦2勝に続く、金星寸前だった。惜敗したとはいえ、スピードが課題と言える伊藤が、大きな失敗のないジャスティン以上のタイムで滑った点は、大きく評価出来る。
19歳、四方元幾も、可能性を感じさせる滑りを見せた。予選16位で自身2度目の決勝ラウンド進出を果たし、決勝ラウンド一回戦の相手はミカエル・キングスバリー(カナダ)。スタートで出遅れたが、必死に王者を追いあげ、逆転先着ゴールしてみせた。ターン点で惜敗し、エア点で完敗し、22対13と点差は付けられたが、王者を相手にスピードで負けなかった点は大きい。本来、コーク1080も飛ぶエアが魅力な選手だけに、タイムでも勝負出来たことは次につながる。
並んで滑るデュアルで、トップ選手に勝った、あるいは互角に滑った経験は本人の自信になる。さらには、この大会以後のジャッジ評価にも影響を及ぼすのだ。
ジャスティンとヘザー・マクフィー(アメリカ)の女子準決勝対戦も、大変迫力があった。両者の対戦は第1戦決勝の再戦であり、今後の女子モーグルをも占う一戦。これに関しては、女王ハンナの怪我からの回復状況も含め、次回コラムで触れたいと思う。
最も迫力のあるバトルを見せたのが、男子準決勝のミカエル・キングスバリー(カナダ)vsアレックス・ビロドウ(カナダ)だ。新旧王者の第1戦決勝に続く対戦であり、先輩アレックスとしては、後輩ミック(ミカエル)に連敗は避けたかったはず。 意地がぶつかる対戦は、先行したアレックスが先にターンミスをするが、必死に追いかけたミックが第2エア前で体制を乱し、両スキーを外す大転倒。新王者ミックにとっては、おそらく初めてであろう屈辱的な結末。真の王者を決する勝負の’13季は1勝1敗となり、今後の展開がさらに興味深くなった。
この2人の共通点は、単に同じカナダ代表というだけではない。両者ともモントリオール近郊がホームという、先輩後輩の間柄だ。 アレックスは18歳だった。06季、ダブルバックフル、コーク1080を飛ぶ選手として衝撃的にW杯デビュー。総合2位となり、ルーキー・オブ・ザ・イヤーも獲得。’09季にW杯総合優勝し、’10季にバンクーバー五輪でカナダ人初の自国開催五輪の金メダリストとなった。
ミックは17歳だった’10季、やはりダブルバックフル、コーク1080を武器とする選手としてデビュー。ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。’11季にはW杯総合3位、’12季にはW杯総合優勝と駆け上がった。
2人に共通するのは、ホームエリアと武器とするエアトリック。先輩アレックスは最強エアのパイオニアであり、後輩ミックは同じエアを”完コピ”以上に仕上げてしまった。
アレックスは五輪金という大偉業があるものの、W杯通算勝利は11勝。ミックはすでにその勝利数に並んでいる。そんな関係性からも、意地でも後輩に負けたくない先輩と、先輩越えをしてリアルキングになりたい後輩。今季の第1戦、第2戦とも、そんな感情が透けて見えるような戦いだった。
怪我から完全復活し、W杯初優勝を果たしたブライオン・ウィルソン(アメリカ)はアッパレだが、新旧王者の白熱バトルはさらにインパクトの強いものだった。
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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