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正直に言うと、ここまで調整をしてきているとは思わなかった。2年ぶりに世界選手権に現れたキム・ヨナは、SP、フリーを通してほぼノーミス。唯一、SPのフリップに不正エッジ判定がついた以外、完ぺきな演技を見せた。
「競技に戻ってきたのは、スケートを愛しているから。もちろん、日々のトレーニングに戻ることは楽ではなかった。でも一度目標を達成してしまっているので、プレッシャーはない。楽しみながら滑りました」
優勝記者会見で、キムはそう語った。韓国メディアの数も多く、次々と質問は彼女に集中する。だが嫌そうな顔も見せることなく、淡々と通訳を通して質問に答え続けた。
毎シーズン、普通の選手たちはGPシリーズなどから出場し、調整をしてピークに持っていく。私たち報道陣も、ファンたちも、選手たちが1試合ごとにプログラムの完成度を上げていき、調子を上げていくのを一緒になって見守ってきた。
そんな中で2年間休暇を取っていた選手がいきなり登場して、こつこつと実績を積み重ねてきた他の選手たちを追い越し、軽々と金メダルをさらっていくというのは、正直に言えば何とも複雑な気持ちだった。
だがロンドン世界選手権で見せたアスリートとしてのキムの強さは、否定しようのない見事な復帰だった。ほとんどの女子がもっとも簡単な3トウループの3+3コンビネーションで四苦八苦しているというのに、なんでもないかのように3ルッツ+3トウループを軽々と決めた。フリーでは、まったく失敗しそうな気配がなく、ものすごい集中力を彼女から感じた。
唯一難をつけるなら、個人的な感想ながら、彼女のプログラムが何も心に残らなかったことだろうか。SP「吸血鬼のキス」フリー「レ・ミゼラブル」ともによく構成のできたプログラムであることは間違いない。だが彼女の演技を通して、強さ、巧さは十分に感じたものの、それ以上に心に訴えかけるものを感じることはできなかった。その意味において、ジャンプへの気前良いGOEの加点は納得できるが、フリーでは5コンポーネンツに9点台が並んだことには少し驚いた。
ただやはり2年ぶりの世界選手権という大舞台への復帰でありながら、これほどまでに完成度の高い演技を堂々と見せたことに対するご褒美、という意味合いもあったのに違いない。今回の世界選手権では、浅田もコストナーも技術的にベストな演技ではなかった。いよいよ五輪の勝負となる来季、この3人がベストな演技をしたときに、どのような評価がくだされるのかぜひ見てみたいと思う。
田村 明子
盛岡市出身、ノンフィクションライター。1977年留学のため単身渡米し、現在ニューヨーク在住。長い滞米生活と語学力を生かして多様な方面で執筆活動を行う。フィギュアスケートは1993年からはじめ、これまで15回の世界選手権、3度の冬季五輪を取材。選手のみならず、コーチ、ジャッジ、ISU関係者など幅広い人脈を駆使して多面的な視点から執筆。著書に「氷上の光と影」(新潮社)他。
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