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~日本代表ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ~ 「9月にピークを持って行けるようチームを作って行きます」
“最強ラガーマン”列伝 ~ラグビーW杯2023~ by 村上 晃一ジェイミー・ジョセフHC
ラグビーワールドカップ2023の開幕まで3か月を切った。2019年大会以上の戦績を目指す日本代表は、6月12日から千葉県浦安市で強化合宿をスタートさせた。リーグワン新人賞を受賞した長田智希ほかノンキャップ10名を含む総勢46名の日本代表および日本代表候補メンバーを、どのように強化し、7月8日から始まるリポビタンDチャレンジカップ2023の5試合に臨むのか。2016年の就任以来、7年間、チームを引っ張ってきたジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチに強化ポイントなどを伺った。
――現時点での日本代表の完成度をどのように感じていますか。
「去年の11月以来の日本代表チームの集合になります。チーム作りには時間がかかります。
RWCは9月の開幕なので、そのプロセスはゆっくりしたものになります。実際のゲームで試すのは7月8日のオールブラックス・フィフティーンとの対戦です。2019年でRWCの経験をした選手がおり、怪我で選ぶことができなかった選手が戻ってきましたし、新しい選手も入って来て、エキサイティングなチームができていると思います。楽しみですが、キャンプ中にやるべきことが多いですね」
――RWCの開幕までの時間で重点を置くポイントはありますか。
「浦安合宿(6月12日~)の最初の2週間は選手をリセットさせる期間にしたいと思います。昨年の日本代表活動に参加した選手は、11月の代表活動後、すぐにリーグワンのシーズンに入って、また日本代表の合宿に参加することになっています。怪我を抱えている選手もいるので、まずは怪我から回復して身体を作っていくのが最初のプライオリティーになります。パシフィックネーションズカップ(PNC)のサモア、トンガ、フィジーとの対戦ではフィジカル面を求められます。タックルやブレイクダウンのところのフィジカルなプレッシャーに備えなければいけません」
ラグビーワールドカップ2023 特集ページ
――オーストラリアからディフェンス専門のコーチを呼ぶのは、リーグワンのブレイクダウン、タックルのところでレッドカード、イエローカードが出たこともありますか。
「それも理由の一つです。しかし、レッドカードが出たチームや選手のタックルは、高すぎるなどテクニックがともなっていません。カードを受けても仕方ないでしょう。ラグビーは変わり、この点はRWCの大きな焦点にもなります。リーグワンのプレーオフ、準決勝、決勝を見ても最終結果を左右していました。正しいテクニックを身に着け、一貫性のあるトレーニングもしなければなりません。それをディフェンスコーチが手助けします。一番大事なのはテクニックとタックルに関して意識を変えることです」
――7月、8月の試合では、選手起用をどのように考えていますか。選手は絞っていくのでしょうか。あるいは、スコッド内の選手にはチャンスを与えていくのでしょうか。
「選手にチャンスを与えたいと思っていますが、バランスが大事です。RWCの準備期間中に怪我人が出ると、他の選手にチャンスが生まれることもあるでしょう。いろいろな選手のコンビネーションも確認していきたいと思います。7月のテストマッチでは全員に機会があるようにしたいですね。限られた機会しか与えられない選手が、そのチャンスをしっかりとつかまないといけないと思います」
――オールブラックス・フィフティーンとの試合では、選手たちにどんな期待がありますか。
「いつの時代も日本代表のジャージーを着用したときは最高のパフォーマンスを見せなくてはいけません。その選手もRWCのメンバーに選ばれることを意識しているわけで、機会を与えられたら、それをしっかりものにしてほしいです。最初の数週間の目的は身体づくり、ゲームの理解を深めることなので、9月にピークを持っていくようにチームを作っていきます」
――オールブラックス・フィフティーンとパシフィックネーションズカップ(PNC)についてですが、前者はノンテストマッチ、後者は国代表同士のテストマッチです。試合に臨む違いはありますか。
「我々にとってはすべて同じです。RWCまでに6試合あるので、一試合一試合パフォーマンスを積み上げていきます。オールブラックス・フィフティーンとの試合は、7か月ぶりの試合になるので、ベストパフォーマンスが出ないかもしれませんが、相手にとっても最初のゲームなので、お互いにその状況でどれだけベストの試合ができるかどうかでしょう」
ラグビーワールドカップ2019 日本代表vs.サモア代表
――PNCでは、サモアと対戦します(7月22日、札幌ドーム)。RWCのプール戦でも戦う相手ですが、どんな試合にしたいですか。
「同じプールですから用心しなくてはいけません。今回のサモアとのテストマッチから、RWCで戦うまで2カ月以上の間隔があります。9月は勝利しなくてはないない試合です。1999年のRWC前に私が日本代表でサモアと対戦したとき、PNCでは勝利しましたが、RWCでは負けました。最終的にRWCで勝利するチームを作る必要があります。そういう意味では7月のパフォーマンスにこだわりすぎてはいけません。サモアが9月も同じメンバー、戦略で臨んでくるかどうかも分からない。日本も同じで、チームのプログラムの進み具合で変わってくるでしょう」
――現在の日本代表は、4年前のチームと比べてどんな違いがありますか。
「これはよく聞かれるのですが、難しい質問です。この4年間でラグビーのゲームが大きく変わりました。我々のチームも引退した選手がいて、若い選手も入ってきています。現在のチームで私が好ましく思っているのは、ここ数年で重要なポジションを確立してきたことです。たとえば、FW第一列は2019年のRWCメンバーから大きく変わらず、さらに経験値を高めています。若い選手が出てきているのも楽しみです」
――長田智希、木田晴斗というリーグワンのルーキーもメンバー入りしてきましたね。
「両選手ともリーグワン最初のシーズンにかかわらず、一貫して良いプレーをしていました。2人ともファイナルでプレーしたということは、所属チームから信用されていたということです。彼らが、浦安、宮崎の合宿でいかにステップアップできるかを見ていきます。これまで経験したことのないプレッシャーのなかでも一貫したパフォーマンスができるかどうかでしょう」
――RWCで戦うチームのことも聞かせてください。まず、チリについてはどのような印象を持っていますか。
「チリは、アルゼンチンやウルグアイという南米と同じく、パッションがあり、アグレッシブです。RWC出場を決めるために手ごわい相手に勝ちました。コーチングと育成強化のシステムが向上し、日本にプレッシャーをかけてくるでしょう。簡単に勝てる相手ではありません。2019年の開幕戦のロシア代表のように、失うものは何もないという感じですべてをぶつけてくるでしょう。それを抑え込み、勝ち切れるかどうか、しっかり向き合いたいです」
――イングランドはヘッドコーチが変わりました。何かチームの変化は感じますか。
「シックスネーションズの戦いを見ると勢いを失ったように見えました。その反面、新しいコーチンググループ、選手にとって良い経験になったでしょう。彼らはRWCまでに修正してくると思います。コーチが変わってもイングランドの戦い方は変わらず、サプライズはないでしょう。それに対応するだけです。セットピースでプレッシャーをかけ、キッキングゲームで大きなプレッシャーをかけ、力で勝ろうとする。チャレンジングですが、最善を尽くすのみです」
――サモアについてはどんな印象ですか。
「フィジカルなチームでボールを動かしてきます。PNCで一度対戦すると、日本に対してどう出てくるかが見えてくると思います。サモアも新しい選手が入ってくるし、オールブラックス(ニュージーランド代表)経験者ほか他国代表の選手たちもいて自信をつけています。スティーブン・ロトルアはオールブラックスでテストマッチに出場していましたが、サモア代表に選ばれるかもしれません。過去にRWCでトップ8に行ったことのあるチームでもあり、我々にとって大きなチャレンジです」
――アルゼンチンはどうですか。
「この一年の間に、オールブラックスに勝ち、イングランドも倒しました。新しいコーチになって良い状態にあると思います。しかし、RWCは一回限りの戦いです。それにむかってしっかり準備します。まるでRWCのファイナルかと思わせるようなパッションで選手を盛り上げ、勝ち切りたいと思っています」
――2019年のRWCでは毎試合プランを変えて相手を驚かせていました。今回も同じように変えていくのですか。
「毎試合プランを変えるのは、RWCに限ったことではありません。自分たちの一貫したプレーを続ける中で、相手によって変えていきます。4年前のRWCでは成功して勝つことができましたが、そのプロセスは変わりません。7月に試して、どんなプランで戦うか考えていきたいと思います」
――ジョセフヘッドコーチのメンタルは4年前のRWCとどう違いますか。
「自分自身には何も違いはありません。良い状態です。ただし、4年前に比べるとチームと長い期間一緒にいるので選手の理解は深まったと思います。状況によって、どのボタンを押せばいいかということも分かるようになりました。今回は競争心を持った若い選手が入ってきて、新しいコーチもいますので、新たな影響をもたらしてくれると思います」
――RWCがフランスで行われることで、気を付けなくてはいけないことはありますか。
「とくにフランスだからと言って心配していることはありません。どんな国に行ってもその国の文化を受け入れ、適応することが大事です。ひとつあるとすれば食事ですね。日本食は日本人コーチ、スタッフ、選手には大事なことなので、今回はシェフに帯同してもらおうと思っています」
――RWCに向けて、日本のファンの皆さんにメッセージをお願いします。
「日本のファンの皆さん、チームはこれから本当にハードな練習をして、RWCでトップ8以上に勝ち上れるように頑張ります。ぜひ、チームを応援してください。ありがとうございます」
7年間にわたってチームを率いてきたジョセフヘッドコーチは、その間に選手たちと信頼関係を築いてきた。今回のメンバーは指揮官が信頼し、RWCに向かってさらに上り調子になるような選手たちだということだ。9月にピークを持って行くというジョセフコーチの手腕を期待しつつ、日本代表の選手選考、戦いぶりを観察していきたい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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