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ラグビー コラム 2023年5月10日

リプレースメント・バトル ~13人の三重ホンダヒートに入替戦の魂を見た~

be rugby ~ラグビーであれ~ by 藤島 大
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ジャパンラグビー リーグワン2022-23

【入替戦 第1節 D1/D2 第1戦-1ハイライト】三重ホンダヒート(D2 2位) vs. グリーンロケッツ東葛(D1 11位)

痛い。でもヒートは崩れない。ところが27-12の後半9分、こんどはバッソンが脚を傷めてプレーを続けられなくなる。専門職の右プロップがこれで底をついた。ノーコンテストで14人に減員。6番の小林亮太もタッチラインの外へ向かった。こういう大勝負には欠かせぬクラブの魂だ。さらに、その10分後には4番のヴィリアミ・アフ・カイポウリにイエローのカードが突き出される。

痛い。後半21分のところで27-24。正直、逆転は不可避と考えた。だがヒートは踏ん張る。同31分、罰を終えて戻った直後のカイポウリがトライを奪った。バスの中の沈黙の読書家たちもきっと「おー」と発声したはずだ。

14人が13人になって14人に戻ると、なんだか15人がそろったような勢いを得られた。このあたりも激しいコンタクトをともなうラグビーらしい心理だろう。

勝利会見でヒートの上田泰平ヘッドコーチは言った。

「この状況はまったく想定していませんでしたが、13人になった場合はもはや戦術どうのこうのではない」

正直だ。広報チームがコメントを練り上げたら「あらゆる状況を想定しながら準備はしてきました」と答える。でもスクラムを支える同じポジションの人間が前後半のそれぞれ16分と9分でいなくなると想像するのは難しい。

入替戦を英語ではこうも表現する。「Replacement Battle」。なんとなくいい。ゲームでなくバトル。そこでは何が起きても動じぬ心のあり方が問われる。

5月13日。第2戦が行われる。こんどはグリーンロケッツの本拠、柏の葉公園総合競技場 がバトルフィールドになる。5点差をめぐり、どう結末が転がろうと不思議ではない。

ヒートのフロントローの編成(第1戦の終盤、攻守に欠かせぬ左プロップの鶴川達彦も負傷退場)を含め、執筆時には第2戦のメンバーも発表されていない。それでも5月5日の鈴鹿でのひとつの闘争を8日後の明暗と切り離して書きたかった。ヒートは8番と7番を失いながら、残った者すべてが8番と7番のように体を張った。

パブロ・マテーラはチームの人であった。前半終了後、ロッカー室へ戻る仲間をベンチの前で迎え、ひとりひとりに手を差し出す。

すると背番号9、33歳の山路健太だけが腰のあたりをポンと叩き返した。いたわり、敬い、感謝もするように。「ああ、そういうことなんだな」と思った。そういうことがどういうことかは言葉にしづらい。ただ、そういうことなのだ。

文:藤島 大

藤島大

藤島 大

1961年生まれ。J SPORTSラグビー解説者。都立秋川高校、早稲田大学でラグビー部に所属。都立国立高校、早稲田大学でコーチも務めた。 スポーツニッポン新聞社を経て、92年に独立。第1回からラグビーのW杯をすべて取材。 著書に『熱狂のアルカディア』(文藝春秋)、『人類のためだ。』(鉄筆)、『知と熱』『序列を超えて。』『ラグビーって、いいもんだね。』(鉄筆文庫)近著は『事実を集めて「嘘」を書く』(エクスナレッジ)など。 ラグビーマガジン、週刊現代などに連載。ラジオNIKKEIで毎月第一月曜に『藤島大の楕円球にみる夢』放送中。

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