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ピックアップ コラム 2019年3月25日

今年の世界王者が8名エントリー、2018年度を締める豪華大会まもなく開幕・柔道ワールドマスターズ広州

柔×コラム by 古田 英毅
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ワールドランキング上位16名のみ(欠場の場合出場権繰り上がり、地元から1枠の設定あり)が参加を許されるIJFワールドツアー最上位大会、柔道ワールドマスターズ広州2018がいよいよ今週末、15日と16日に中国・広州で開催される。この模様はJSPORTSで生中継される。

例年年末から欧州シリーズが始まる2月初旬までの選手の動きは比較的緩やかであるが、柔道界はワールドツアー制度が浸透して、年々はっきりしたオフシーズンがなくなりつつある。この傾向を反映して今大会にも現役世界王者8名が参加、かなり豪華なラインナップとなった。かつてワールドマスターズがスタートした頃、大会のレベルの変動が年ごと階級ごとに激しすぎた2010年から2014年あたりと比べるとまさしく隔日の感がある。

丸山城志郎

グランドスラム大阪で阿部一二三に勝利、世界の注目を浴びる丸山城志郎

陣容豪華ゆえ注目階級はあくまでそれぞれのファンのお好み次第、客観的にこれと挙げることは難しい。それでも敢えてということで、いくつか。

「人」としては66kg級の日本代表・丸山城志郎を挙げておきたい。ご存知の通り11月のグランドスラム大阪で世界選手権2連覇中の阿部一二三を巴投「技有」で下し優勝、今乗りに乗っている25歳である。世界的にも「阿部に勝つ」選手が現れたということは大事件、投げの恐怖をまき散らして圧し、実際に投げて勝ったというその内容もインパクト十分。このワールドマスターズで優勝して客観的な実績も得たとなればこれはまさに最強挑戦者の誕生であり、世界がその戦いぶりを注視すること間違いなし。序列上の敵はワールドランキング2位のヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)、実力上のライバルは正統派背負投ファイターのミハエル・プルヤエフ(ロシア)。

73kg級では9月のバクー世界選手権で決勝を争ったアン・チャンリン(韓国)と橋本壮市の、2018年と2017年の世界選手権金メダリストが同時エントリー。ともに今大会がバクー以来初めての大会出場、この両者の対決に注目が集まる。

男子は日本人が優勝した軽量2階級を除く全ての階級で今年の世界選手権金メダリストが参戦、わけても大混戦で会場を沸かせた81kg級と90kg級が面白い。81kg級は新世界王者サイード・モラエイ(イラン)に凄まじい投げ連発で銅メダルを獲得したヴェダット・アルバイラク(トルコ)、同大会にはいなかった佐々木健志まで加えて世界選手権本番に勝るとも劣らぬ陣容。90kg級も王者ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)に銀メダリストのイワンフェリペ・シウバ=モラレス(キューバ)、ミハエル・イゴルニコフ(ロシア)と実力者目白押しである。100kg超級も新王者グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)を筆頭に今年の金銀銅メダリスト3人が参戦、急成長中のロシア勢2人も加えて、来期の世界選手権の上位候補がぎっしりだ。

女子は、IJFが出場を示唆していた48kg級新王者ダリア・ビロディド(ウクライナ)がドロー2日前のきょう(12日)に至ってもエントリーなし。今年の金メダリストの参戦は57kg級の芳田司、63kg級のクラリス・アグベニュー(フランス)、78kg級の濱田尚里の3人で、これがそのまま注目階級と言える。

57kg級は芳田に出口クリスタ(カナダ)、ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)、ラファエラ・シウバ(ブラジル)に玉置桃と危険な選手がほぼ全員出揃って、そのまま世界選手権決勝ラウンドと見立ててもおかしくない陣容。凄まじい出来で王座に就いた芳田はグランドスラム大阪の敗戦であの絶対的な印象が揺らいでおり、捲土重来を期す大会である。バクーの表彰台に上がった4人が全員顔を揃えた63kg級はアグベニューと田代未来が抜け出した同大会の様相が来年度の展望として通用するかの検証がテーマ。78kg級は出来が「日替わり」の濱田、梅木真美、佐藤瑠香の日本勢3名によるトップ争いが見どころ、最強の敵はマデリーン・マロンガ(フランス)。

グランドスラム大阪で素晴らしい出来を見せたもと世界王者イダリス・オルティ

グランドスラム大阪で素晴らしい出来を見せたもと世界王者イダリス・オルティス

そして、78kg超級のイダリス・オルティス(キューバ)と、日本のホープ素根輝の対戦が見逃せない。調子の波が激しいオルティスは世界選手権は低調も、11月のグランドスラム大阪ではここ数年一番の出来を見せて優勝。決勝では素根を「指導3」で破っている。一方の素根は現役世界王者朝比奈沙羅に3連勝中も、ここで再びオルティスに敗れては最後に残った課題である海外勢への強さのアピールが出来ず、どころか同一選手に連敗という評価上の不利をかこつことになる。東京五輪の代表権、そして本大会の様相を直截に占う一番と言える。

古田 英毅

「eJudo」編集長。国内の主要大会はほぼ全てを直接取材、レポートを執筆する。自身も柔道六段でインターハイ出場歴あり。2019年東京世界選手権から、全日本柔道連盟の場内解説者も務める。J SPORTSワールドツアー中継ではデータマンを担当。

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