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なお、第8戦土曜日には、メディア向けのサタデーミーティングも行われたが、普段のような会見ではなく、今回は座談会としてフランクな形が取られた。ときに冗談めかした話も盛り込み、さりげなく自分の思いを伝える近藤会長の姿を見た上野禎久JRP社長は、「もう尊敬しかない。近藤さんとはほぼ同期なので、モータースポーツの浮き沈みも一緒に経験している、それだけに経験値が近いのでよくわかる。加えて、エンターテインメントからチームオーナー、経営者と全部やられていて、その引き出しの多さにびっくりする。なにより声が遠くまで届く。その反響が素晴らしい」と存在感の大きさを認める。
一方、日本のトップフォーミュラが50年という節目を迎えるなか、ファンにとっても気になるのが、”海外とのつながり”ではないだろうか。かつて、全日本選手権フォーミュラ・ニッポンの時代には、シリーズの1戦をマレーシア・セパンサーキットで開催したこともあるが、近藤会長は、これからの海外戦略をどう見ているのか。「僕がJRPの会長になってから、『アジア向けに発信しよう』とずっと言い続けている。それが、JRPの内でも浸透しはじめ、レースエンジンを供給する両メーカーも、アジアの方を向いていろいろとやっていくのは”あり”だという感じになってきた。今年は、参戦しているリアム・ローソンがF1ドライバーとしてデビューしたことで世界への情報発信ができたが、JRPとしても『これからアジアのどの扉をノックしに行こうか』という考えになっている。ただ、まだ『ここをノックすれば、少し扉が開くのでは』という見分けが全然できていない。残念ながら、メディアに報告できるほどのレベルとは言えない」と断りつつ、近藤会長自らが描く青写真は、粛々と進んでいるように感じ取れた。
折しも、今シーズンのチャンピオンに輝いた宮田は、来シーズンから海外レースへのチャレンジが噂されている。会見では、「挑戦できるかはわからないが、海外に出ることによって、今まで日本のファンしかいなかったのが世界中でファンが増える。彼らは、”スーパーフォーミュラでチャンピオンを獲った宮田莉朋”(の存在)を通して、スーパーフォーミュラを観るようになると思う。それが僕にできること」と、F1デビューを果たしたリアム・ローソン(TEAM MUGEN)を押さえて王座に就いた自分が、世界へと羽ばたくことでこのレースをアピールできると語ったが、JRPにも、”国内最高峰のレース”に留まらないようなプロモーション展開が期待される。
「会長だから威厳を保とうとか、そういう気持ちは毛頭ない」と、今後もチームとJRPの間に立ち、相談される会長を目指すという近藤会長。ドライバー、チーム代表、監督、そしてJRP会長……さまざまな立場からモータースポーツに携わってきたキャリアをどう活かし、どのような風を吹かせるのか。その挑戦は、まだ始まったばかりだ。
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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