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サッカー&フットサル コラム 2026年8月26日

「目を揃える」フィロソフィーの正統な後継者。川崎フロンターレU-18・小川尋斗は掴み取れるステージをすべて掴み取る 【NEXT TEENS FILE.】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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川崎フロンターレU-18・小川尋斗

この伝統あるクラブのトップチームでプレーするからには、生半可な覚悟で日々を過ごすわけにはいかないことも、もう間違いなく理解している。自分の持ち味が出せれば、通用する自信はある。それを存分に発揮するための努力を、地道に、真摯に、重ねていくだけだ。

「来年の1月からトップの選手の一員としてプレーすることが決まって、夏もずっとトップの方に練習参加させてもらっていて、もう練習に参加しているならトップの一員だと思っていますし、それならばJリーグに関わっていかないといけないので、そこを目指してもっと日々頑張っていきたいです」

一つひとつのプレーに、見る者を唸らせる上手さを忍ばせられる、川崎フロンターレU-18の“サッカーが上手い”司令塔。小川尋斗は今まで以上にボールとの関係性を深め続け、さらなる飛躍につながるはずのネクストステージを掴み取っていく。

4月18日。プレミアリーグEAST第3節。昌平高校にホームで逆転勝ちを収め、シーズン初白星を手にした試合後。小川が話していたことが、非常に興味深かった。「サッカーは1つのボールでゴールを獲るスポーツで、全員の目が揃っていないとやっていけないスポーツだと思います」

それを聞いていて、「ああ、フロンターレの選手なんだな」と思った。なぜなら個人的に『目が揃う』というフレーズをよく使う人の筆頭格だと認識しているのは、フロンターレのレジェンドであり、今季からトップチームのヘッドコーチを務めている中村憲剛だったからだ。

もともとは風間八宏元監督(現・南葛SC監督)が、フロンターレに持ち込んだ文化だと理解している。それがしっかりと浸透しているからだろう。小川もごくごく普通にそのフレーズを使っていたあたりに、このクラブのフィロソフィーの一端が透けて見えた。

今季の川崎U-18において、小川は『目を揃える』中心を担うキーマンだ。2年生だった昨シーズンもプレミアでは全22試合に出場。中盤の位置で全体のバランスを整えつつ、機を見て繰り出す効果的なパスや、ゴールに近い位置で披露するアイデアには、目を惹くものが確実にあった。

最高学年となった今シーズンのパフォーマンスには、より逞しさも加わっている。4月の時点で「去年は悔しい想いをしたので、『自分が引っ張ってやるぞ』という気持ちも込めてプレーしていますし、ここで結果を残さないと自分の目標であるトップ昇格は叶わないと思うので、もっともっとプレーで見せていかないとなという想いはあります」と言い切っており、その決意をプレーにはっきりと滲ませてきた。

不退転の覚悟は、最高の形で実る。7月5日。藤田明日翔と同じタイミングで、クラブから来年1月のトップチーム加入内定を知らせるリリースが発表される。小学校4年生でフロンターレのアカデミーに身を投じ、目指し続けてきたプロサッカー選手という職業を、小川は自らの手で力強く手繰り寄せた。

 

本人も話していたように、プレミアリーグが中断していたこの夏の期間はトップチームの活動に帯同。ハイレベルな選手たちが揃う環境の中で、刺激的な時間を過ごしてきた。

「自分の特徴のハードワークするところだったり、ボールを受けて散らすところは結構トップでも通用するなという手応えはあるんですけど、今はサイドバックも含めていろいろなポジションをやらせてもらっている中で、トップでの守備はまだほとんどやったことがなかったので、そこはかなり良い経験になったなと感じています」

8月23日。新たに創設された『U-21 Jリーグ』の開幕戦。U-21川崎フロンターレがU-21ジュビロ磐田戦と対峙するアウェイゲーム。一昨年までU-18の指揮を執っていた長橋康弘監督は、小川をトップ下の位置でスタメン起用する。

「今日はトップ下で出たので、ゴールという数字で見える結果を残そうと思っていました」という背番号37は、6分にミドルレンジから左足で果敢にフィニッシュ。軌道は枠を外れたが、得点への意欲を前面に打ち出す。

1点のビハインドを負っていた41分。木村風斗が左サイドからボールを預けると、小川は瞬時に最適解を導き出す。「ゴール前だったので、自分で仕掛ける選択肢もあったんですけど、一番ゴールに近い選択肢が『風斗に出す』ことだったので、そこまで見えていたのは良かったかなと思います」

狭いスペースへ通したのは優しいリターンパス。木村の折り返しを受けた木下勝正のシュートが、ゴールネットをきっちり揺らす。U-18所属の3人で奪い切った同点弾。U-21川崎がスコアを振り出しに引き戻す。

さらに小川の真骨頂とも言うべきプレーが飛び出したのは、2-1と逆転に成功して迎えた79分。巧みなポジショニングで山市秀翔からの縦パスを引き出し、左前方を走る廣瀬寧生へメッセージを込めたボールを届けると、廣瀬はカットインから豪快なシュートをゴールネットへ突き刺してみせる。

センターサークル付近でまったくのフリーになっていた動き出しも、そこから廣瀬へ送ったラストパスも、“らしさ”にあふれた一連だったが、本人は「同級生の廣瀬と勝正が点を決めて、スタメンで出ている自分が点を決められなかったのが一番悔しいですね」とのこと。試合には3-1で勝利したものの、自分の結果への渇望感を露わにする姿勢も、実に頼もしい。

小川は『AFC U20アジアカップ中国2027予選』を戦うU-19日本代表に招集されたため、この試合の翌日からしばらくフロンターレを離れることになった。まずはチームの勝利に貢献することが最優先。ただ、視線はその先の未来にも向いているようだ。

「日本代表の一員としてプレーすることは凄く貴重な時間ですし、嬉しいことですけど、それだけで終わらずに、そこでも結果を残して代表に入り続けることもそうですし、そこでプレーする姿をフロンターレの人たちに見てもらって、Jリーグの試合に関わっていくところにフォーカスしてやっていけたらなと考えています」

「トップチームの中でも、きっと若さというのは武器になりますし、ハードワークだったり、しっかり走るというところは、ベテランの方々には出せない特徴だと思うので、走るというところをベースに置きながら、その中でも技術を全面に出していけたらなと思います。やっぱり今の目標はJ1に出ることですね」

U-18所属だからとか、まだ18歳だからとか、そんなことで遠慮するつもりは毛頭ない。掴み取れるステージは、全部掴み取ってやる。フロンターレの未来を担い得る、確かな才能を有したプレーメイカー。小川尋斗はすべての経験を自身の糧に変換し、等々力のピッチに立つ日を明確にイメージしながら、今できることと100パーセントのエネルギーで向き合っていく。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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