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サッカー&フットサル コラム 2026年9月29日

「OR」ではなく「AND」という指揮官の信念。ファジアーノ岡山U-18は明日の成長を信じて今日の自分と向き合っていく 高円宮杯プレミアリーグWEST ファジアーノ岡山U-18×名古屋グランパスU-18マッチレビュー

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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ホームゲームを戦うファジアーノ岡山U-18

結果が出ないことが、苦しくないはずがない。誰だって勝ちたい。負けたくない。でも、この年代だからこそ、プロサッカー選手を目指すからこそ、身に付けなくてはいけないことがある。もちろん目の前の勝利を目指しながら、一つずつ、一つずつ、やれることを増やして、一歩ずつ、一歩ずつ、前へと進んでいく。

「攻守においてアグレッシブに、矢印が前に出ることは、トップチームを含めたファジアーノ岡山の良さですよね。一方で、その矢印の出し方として、どういう状況で前に行くのかというところへ、今まさに取り組んでいて、彼らもそういう絵がぼんやり見えてきていたところから、かなり見えてきているけれども、そこに技術がまだ追いついてこない段階なので、決して暗闇の中にいるような感じでは全然ないですし、ちゃんと前に進んでいる手応えはあります」

今シーズンからチームを率いる経験豊富な安部雄大監督は、きっぱりとそう言い切った。最下位に沈むシビアなリーグ戦が続いているファジアーノ岡山U-18の若雉たちは、苦しみながら、もがきながら、それでも明日の成長を信じて、今日の自分と必死に向き合っている。

「前半で2失点してしまって、ゲームの展開がちょっと難しくなったんですけど、後半は自分たちがこの1年でやってきていることが、攻撃の部分で出せたと思います。ただ、やっぱり試合の運び方で、今日も得点した後にすぐ失点しましたし、そういうところがまだまだ弱いかなと感じています」

2年生ながら後半からはキャプテンマークを巻いていた堤清史郎は、そう話して唇を噛む。プレミアリーグWEST第15節。上位に付ける名古屋グランパスU-18を、スチールハブフィールド寄島で迎え撃った一戦。51分までに3点を先行された岡山U-18は、後半に入って2点を返したが、ファイナルスコアは4-2。今季初のホーム勝利は、またもおあずけとなった。

ややもったいなかったのは、80分に元野蒼空が追撃の1点を決めたものの、その2分後に4失点目を喫したこと。安部監督も「ほとんどの試合で立ち上がりや終了間際に獲られたり、点を獲ったすぐ後に獲られたりしていて、そこの部分は口酸っぱく言ってはいるんですけど、今日も4失点目が大きなターニングポイントだったと思います」と言及したとおり、反撃態勢に入った直後の失点だっただけに、チームの気勢が削がれた感は否めない。

現状のリーグ戦の立ち位置は、残留圏の10位と勝点で12ポイント差の最下位。それでもキャプテンの安西来起が、「自分たちが成長していることは感じていますし、そこをさらに伸ばしながら、足りないところも伸ばせるように、一人ひとりが自分に矢印を向けて、日々の練習からやっていけたらなと思います」と懸命に前を向く姿が印象的だった。

「現状で名古屋さんとは備えている力の差はある中で、グループとして何とか対抗できないかという形で臨んだわけですけど、もちろんやれている部分も少しずつ見えてきている一方で、やっぱり勝敗を分けるのは個人の強さだったり、上手さであって、『質』の部分をまじまじと突きつけられたかなと思っています」

優勝争いを繰り広げている名古屋U-18との現状の差を語った安部監督だが、興味深いのは曖昧になりそうな部分を、曖昧にしない姿勢。そのワードを使うだけになりがちな『質』という言葉に対しても、その解像度を上げて、選手たちにフィードバックしているという。

「サッカーは『最後は質だよね』ということになるんですけど、『じゃあ、質って何だ?』と。個々の選手がゲームの中で感じるものは、それぞれあると思うんですよね。サイドチェンジのボールの質、最後のフィニッシュの質、フィニッシュにしても、その1つ前のコントロールとか動き出し、そのあたりを選手たちが自分で考えて、理解して、我々からもフィードバックしています」

「ただ単に『質だよね』という言葉だけが独り歩きして、いつまでも改善されていかないのはもったいないので、そこは突き詰めてやっていきたいんですよね。『質』って本当にいっぱいあるんです。でも、これだけやればという答えもないし、結局全部が繋がっていくので、もう根気強くやっていくしかないかなと思っています」

ファジアーノ岡山U-18を率いる安部雄大監督

21年間にわたってヴィッセル神戸で指導に当たり、昨シーズンは神戸U-18をプレミアリーグWEST制覇へ導いた指揮官には、確固たる信念がある。指導者にとって永遠の命題とも言える勝利と育成。その捉え方は「OR」ではなく、「AND」だというものだ。

「結果が出ていないことに対して、選手を成長させることが優先だという定義付けは、絶対にしてはいけないと思っています。我々はもちろん今日の試合も勝ちたかったし、勝つために準備をしているので、勝利と育成は『OR』ではなく、『AND』でしか答えられません」

「もしかしたら何かを省略した方が、リスクが少なくなることも当然わかります。だけど、我々が今やっていることは、今後どういうサッカーに触れたとしても、トライしていかなくてはいけないことであって、彼らがこれから大学やプロに行って、そういったことができなくて、自分自身に対してもどかしくなるのは、携わった僕としても辛いことなんです」

「だから、僕も勝ちたいし、悔しいし、『もうこれだけ負けて何を言ってるんだ』と思われても、そこは自分が矢面に立ってやり続けようと思っていますし、クラブも凄く理解してくれて、協力体制を敷いてくださっているので、決して勝たなくていいなんて言い訳をするつもりもないし、勝敗の責任は本当に感じていますけど。僕自身は迷わずに、自分が大事にしていることを続けてやっていきたいなと思っています」

結果が出ないことが、苦しくないはずがない。誰だって勝ちたい。負けたくない。でも、この年代だからこそ、プロサッカー選手を目指すからこそ、身に付けなくてはいけないことがある。キャプテンの安西は、まだこの「AND」の先に見えてくるはずの景色を諦めていない。

「先輩たちが自分たちに残してくれたものを、また後輩に残すのが3年生の使命だと思うので、これからあとプレミアの7試合も、本当に最後の最後まで、自分たちは絶対諦めずに、挑戦し続けたいなと思います」

どれだけ過去を振り返っても、どんなに未来を見据えても、今できることは目の前のピッチで全力を尽くすことだけ。岡山U-18はこれまで積み上げてきたものを、これから積み上げていくものを信じて、残されたプレミアリーグの630分間も、100パーセントの熱量で、愚直に、まっすぐに、戦い抜く。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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