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サッカー&フットサル コラム 2026年9月25日

みんなの先頭に立つ自覚がもたらし始めた本格的な覚醒。流通経済大柏高校・古川蒼真が足を踏み入れる「本当に濃い4か月」【NEXT TEENS FILE.】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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流通経済大柏高校・古川蒼真

その日、纏っていたのは“王様”の風格だったと言っていいだろう。前年王者と対峙した首位攻防戦での2ゴール1アシスト。結果に直結する圧倒的なパフォーマンスを披露して、チームを完勝に導いてしまったのだから。

「本当にチームとしても、今日が大一番の山場だとはみんなで話し合っていたので、そこをみんなの力や周りの支えを合わせて勝つことができたのは、本当に大きいと思いますし、鹿島相手でも自分が活躍する自信はあったので、ゴールも獲れて、アシストもできて、十分に通用したなという手応えはあります」

タレント揃いの流通経済大柏高校の中でも、際立った違いを生み出すことのできる、背番号14の特別な才能。古川蒼真は初夏に味わった悔しい経験もパワーに変えて、このプレミアリーグというシビアなステージの中でも、突き抜けた存在へと力強く駆け上がる。

「選手たちにも『全国の決勝だと思って行け』と。『いや、今日の試合は言い過ぎじゃないぐらい、その価値があると思うよ』と言って送り出しました」と榎本雅大監督も明かした、正真正銘のビッグマッチ。高円宮杯プレミアリーグEAST第14節。首位の流通経済大柏がホームで迎え撃つのは、勝点1差で2位に迫る鹿島アントラーズユース。前半戦の対戦時には完敗を喫した、因縁の相手だ。

この大一番で指揮官が古川を送り出したのは2トップの一角。今季は主に左右のサイドバックやサイドハーフを務めてきたが、前節の横浜FCユース戦の後半でも起用された最前線に、ストライカーの渡辺瞳也と並ぶことになる。

その横浜FCユース戦は3点を先行されながら、3点を追い付いてドローに持ち込む展開に。89分に渡辺のアシストから執念の同点弾を挙げたのは、フォワードにスライドしていた古川だった。

「ここまでフォワードはほとんどやっていなかったですけど、基本的に自分の武器であるスピードを全面的に出そうとは思っていましたし、ルーズボールを瞳也が拾って、自分が抜けるみたいなイメージは常に持っていたので、それでゴールを獲れたことで、ある程度の感覚は自分の中で掴めたのかなと思います」。新たなポジションにも好感触を携えて、勝負の90分間に挑んでいく。

渡辺のゴールで1点を先行した流通経済大柏は、40分に決定機を創り出す。右サイドから福田明史が果敢に仕掛け、ペナルティエリア内へ侵入。真横でサポートしていた古川は「最初は明史が出してくれるかなと思ったら、出してくれなかったので(笑)、そのまま中に入っていきました」と思考を切り替える。

福田の突破は相手ディフェンスに止められたものの、こぼれを拾った加島宏樹が丁寧なラストパス。14番が右足を振り抜くと、ボールは鮮やかにゴールネットを揺らす。「エノさん(榎本監督)が瞳也に出していた指示もよく聞いていて、そのおかげもあってフォワードのイメージはついていたので、それが得点につながったのかなと思います」。まずは1ゴール。

後半は2点差を追い掛ける鹿島ユースがギアを上げた中で、71分に魅せたのは正確なセットプレー。右サイドで手にしたFKのスポットに立った古川は、ニアサイドへ速い軌道をグサリ。飛び込んだ大徳剛矢のヘディングは、確実にゴールネットを捉える。

「流経はセットプレーが武器なので、メンディー(サイモン友)に行くような強いシュート性のボールを蹴れば、メンディーか剛矢が中で競れるんじゃないかなと。剛矢がスーパーゴールを決めてくれて良かったです」。これで1ゴール1アシスト。

圧巻は79分の一撃だ。スローインの流れから渡辺が残したボールを、ペナルティエリアのすぐ外でもらった古川は、少し中央へ持ち出しながら右足一閃。ボールはゴール右スミギリギリへ滑り込む。

「最初は後ろ向きだったので、パスするかシュートするか迷った時に、ボックスの近くだったので、前を向ければシュートを打てるというイメージは常に頭の片隅に持っていました。瞬時に相手の状況をチラッと見た時に、あまりガツガツ来る感じでもなかったですし、ボールを持った瞬間に『たぶん横に行けばついてきにくいな』と考えて、横に行ったらコースが見えたので、思いきり振りました」

「流経に来てから、シュートの打ち方は山根さん(山根巌コーチ)からだいぶ教わって、基本的に上を狙うというよりは、ポストを狙いつつインパクトするみたいに、しっかりコースを狙うのではなくて、『“右らへん”を狙う』みたいなイメージがあったので、足を振ったら本当にいいコースに行って良かったです」

14番が記録した2ゴール1アシストに、榎本監督も「目覚めましたね、アイツ。本人の中で自覚が芽生えてきているので、そこが嬉しいです」と破顔一笑。誰もが認める古川のスペシャルなポテンシャルが、重要な一戦で一際まばゆく輝いた。

大一番で2ゴール1アシスト。勝負強さが光った

忘れたくない瞬間がある。6月のインターハイ千葉県予選決勝。永遠のライバル・市立船橋高校との試合は、1点のビハインドを負っていた後半の土壇場で、渡辺がPKを沈めてスコアは振り出しに。さらに延長でもPKを獲得すると、指揮官はキッカーに古川を指名したが、まさかの失敗。結局チームはPK戦の末に敗れ、全国出場を逃してしまう。

「ハッキリ言ってインハイの時は、自分がそこまで影響力のある人間だと思っていませんでしたし、チームの選手の中のひとりという認識だったんですけど、あのインハイのPKは、エノさんが自分をエースだと認めてくれていたから蹴らせたということを後から聞いて、『自分はこんな考えじゃダメなんじゃないか』と、凄く後悔したんです」

以降は自分がチームの勝敗を担うべき存在であることを自覚し、明確な結果を残すことにフォーカスしてきた。だからこそ鹿島ユース戦の躍動は、“あのPK”からの成長を証明する意味でも、普通の1試合の活躍以上の意味合いがあったというわけだ。

「本当にインハイの負けがあったからこそ、今の自分がありますし、自分を強くしてくれたと思っているので、後悔はありましたけど、もう引きずっていないです。自分はキャプテンではないですけど、チームの先頭に常に立ち続けて、背中で語るというか、チームを勝たせられるような存在になっていけば、エノさんにも改めて信頼してもらえるんじゃないかなと思っています」

この仲間たちと一緒に戦える時間も、もう4か月を切っている。間違いなくチームの力に自信は持っているものの、ここまではまだ何も成し遂げていない。ゆえに、ここから先は収穫の時期。もう獲れるものは、すべて獲り尽くす。

「ここからの4か月は、人生の中でも本当に濃い4か月にしたいと思いますし、そのためには、自分がもっと成長することが一番大事だと思っています。自分がもっと先頭に立ってチームを引っ張っていけば、自然と選手権でも、プレミアでも優勝できると思いますし、ずっと成長し続けられるというか、またいろいろな学びがあると思うので、まずはこれからの1試合1試合も、アントラーズ戦みたいな感じで、常に気合を入れて頑張っていこうと思います」

背負うべきものが大きければ大きいほど、それをポジティブなエネルギーに変えていくことで、人は想像を超えるような自分に進化することができる。エースの自覚の芽生えがもたらし始めている、本格的な覚醒。古川蒼真が足を踏み入れていく「本当に濃い4か月」には、まだまだいくらでも成長するための余地が残されている。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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