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サッカーを軽く扱うヤツは絶対に許さない。ジュビロ磐田U-18・安間貴義監督が目指すのは「世論ではなく、社会で生きているチーム」 高円宮杯プレミアリーグWEST ジュビロ磐田U-18×サンフレッチェ広島ユースマッチレビュー
土屋雅史コラム by 土屋 雅史ヤマハスタジアムのピッチに立つジュビロ磐田U-18のスタメン11人
面白いことを言う人だなあと思った。プレミアリーグの開幕を2週間後に控えた、ベガルタ仙台ユースとのトレーニングマッチの試合後。ジュビロ磐田U-18を率いる安間貴義監督は、自分のチームをこんなふうに評してみせる。
「ウチは“世論”で生きているチームではなくて、“社会”で生きているチームです。みんなが『出せよ』『無理だよ』『今の1個早くしてよ』とか、思ったことを言うじゃないですか。その姿勢はずっと求めてきていることで、『裏でグチグチ言うな』と。だから、ウチには面倒くさいオフ・ザ・ピッチの攻防がないんです」
世論ではなく、社会で生きているチーム。何となくイメージはわかるものの、もう少し説明が欲しいかもしれない。さらに詳しく聞くと、安間監督は具体的な例示を交えて、丁寧に説明してくれた。
「結局、『何となくこのサッカーがいい』みたいなものがあると、それに便乗してしまいがちなんじゃないかと。たとえば『サイドチェンジがすごく良い攻撃だ』と言っても、一番近いところが空いているなら、そこを使うのが一番良いプレーですし、この対戦相手に対して、このチームにとって何が一番いい選択なのかは、自分で決めろと」
「サイドチェンジをしたこと自体が褒められるのっておかしくて、サイドチェンジしたことによってチャンスになるのならば、ゲームが読めているということなので、それを褒めるのはわかるんですよ。でも、サイドチェンジすることで、数的不利になる状況も結構あるわけで、それを自分でちゃんと判断していかないといけないんです」
少し解像度は上がってきた。いわば、いくら『みんなが良いとするもの』であっても、それが『自分たちにとっても良いもの』だとは限らない。大事なのは目の前の問題を解決するために何が必要なのかを、ちゃんと判断し、実行する力。もちろんサッカーの話ではあるけれど、これはサッカーの話だけにはとどまらない。
磐田U-18は3月にドイツ遠征を敢行したのだが、安間監督が振り返ったあるエピソードも非常に興味深かった。「最初はチームの決まりということで、『団体で散歩する』はずだったんですけど、散歩の時間もそれぞれ違っていいはずだし、せっかくこっちに来ているんだから、何でもかんでも団体ではなくて、少人数のグループで行動していいんじゃないのと。でも、『1人だと危ないから2人以上ね』と(笑)。そこから入っていきました」
「最初は『スーパーも行っちゃダメだ』というルールだったんですけど、『ホテルの目の前にスーパーがあったら、そこに行って、何かを買ってくるのが普通じゃん。行かせろ、行かせろ』って言っちゃいました(笑)。何か問題があったら、その時のために我々スタッフが付いているわけで、どこまでが安全で、どこからは危ないかも、せっかく海外に行くんだったら、自分で体感することが大事なんじゃないかなって」
2年生GKの櫨瑞貴は、ドイツで体験した“現地実習”を楽しそうに思い出す。「5人ぐらいで街に出たりしましたし、近くにあったスーパーのレジでも、さすがにドイツ語はわからないので、英語でやり取りしたんですけど、なかなか聞き取れなくて(笑)」
「それでも、ドイツのお土産のチョコとか補食はスーパーで買ったりしたので、凄く良い経験になりました。次に海外に行く時までには、もっと英語を勉強して、もっとコミュニケーションが取れるようにしたいなと感じましたね」。これも実際にスーパーの店員さんと“マッチアップ”したからこそ、言語の大切さを実感することができたわけだ。
開幕から全試合にスタメン出場している櫨は、自身の強みにコーチングを挙げているが、このチーム自体に漂い始めた、ポジティブな意見交換を交わせるような雰囲気も、敏感に察知している。
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「練習からいろいろな意見が飛び交っていて、みんなどんどん言うんですよ。でも、それもちゃんと筋が通っているというか、『確かにそうだな』という気づきがありますし、お互いがちゃんと言い合うことで、どんどん成長していると思うので、それを試合でもできたら、どんどん試合の中で改善できるのかなって。今は練習からみんな刺激し合ってやれているので、そこはさらに成長していく1つの鍵かなと思います」
ジュビロ磐田U-18・櫨瑞貴
この日のサンフレッチェ広島ユース戦は、3点を先行される苦しい展開に。そこから奥田悠真と西岡健斗のゴールで1点差まで追い上げたものの、ファイナルスコアは2-3。一歩及ばず勝利を挙げることは叶わなかったが、指揮官は最初の失点に繋がった平岩煌麻のプレーに対して、ハーフタイムに厳しい言葉を投げ掛けたという。
「何でもないクリアボールを、なんか凄く良いことをしてやろうと思って、たぶんトラップで相手と入れ替わろうとしたと思うんですけど、それがうまくいかなくて、9番の子に持っていかれて、失点したことでゲームを潰してしまったので、『クソみたいな失点してんな』と。『説明しろ』と言いました」(安間監督)
前述した仙台ユースとのトレーニングマッチ時。安間監督にいろいろなことを伺った中で、個人的に強く印象に残ったのはこんな話だった。「サッカーは奥深くて面白いですよ。だからこそ、サッカーを軽く扱っている選手にはブチ切れています。去年トップの監督になった時も、痛がって倒れている選手が気になったので、『オマエら、そもそも俳優じゃないからな。サッカー選手だから』って。それを最初に言いました」
それを聞いていたからこそ、この日の安間監督が示した“一貫性”にも合点が行った。それでもこの指揮官が、ただただ感情をぶつけていただけのはずがない。次の言葉には、指導者としての豊富な経験値と、選手たちに対する確かな愛情が滲んだ。
「去年の煌麻だったら、ここでプレーしている自分は想像も付かなかったと思うんですね。だけど、たぶん今はしっかり成長してきて、いろいろできると思って勘違いしていた中で、『サッカーを軽く扱うと、ろくなことがない』という場面を逃さずに伝えないといけないですし、もう1回自分自身やチームにそれを知らしめるためには大きなプレーだったと、今後の行動で証明できるようにしてほしいなと思っています」
端から見ていても、喝を入れられた後半の平岩は懸命に頑張っていた。試合終了を告げるホイッスルが鳴った瞬間。平岩は地面に両手をついて、がっくりとうなだれる。『サッカーの扱い方』を改めて思い知らされた彼が、ここからどんな形でそれを体現していくのか、今から楽しみでならない。
ここまでのリーグ戦で3ゴールを挙げて、チームの攻撃を牽引している奥田悠真は、指揮官への確かな信頼をこう語っている。「自分たちをピッチで表現、体現していくのがこのチームのコンセプトですし、そこを1年間通して貫き通したことが、今年の結果になると思うので、それは楽しみですね。安間さんは選手に対しても素直に自分の意見を伝えてくれて、厳しく言うところはもちろん言いますけど、そこには温かみもあって、チーム全体で上に行こうとしてくれる監督なので、凄く尊敬しています」
「最近はチーム全体の発言数も増えてきましたし、年齢関係なく、1年生から3年生に言うシーンも多く見られますし、『声を出すのがサッカーだ』と安間さんも言っているとおり、サッカーは1人ではやっていけないですし、そこに生まれるコミュニケーションに醍醐味を感じるスポーツでもあるので、そういうところはもっともっと高めていけたらなと思います」
思索する指揮官に率いられた、『“世論”で生きているチームではなくて、“社会”で生きているチーム』が繰り広げるのは、プレミアリーグといういばらの道を突き進む、胸が高鳴るような成長譚。物事の本質と向き合うことで、サッカーという競技の真理の扉に手を掛け始めた、今シーズンのジュビロ磐田U-18から、目が離せない。
ジュビロ磐田U-18・安間貴義監督
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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