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サッカー フットサル コラム 2025年6月30日

愛と勇気の戦闘型ボランチ。サガン鳥栖U-18・東口藍太郎がプロのピッチと年代別代表を経験して実感したこと 【NEXT TEENS FILE.】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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サガン鳥栖U-18・東口藍太郎

自分の戦うステージが引き上げられていることは、はっきりと感じている。だからこそ、もっと上手くなりたい。もっと強くなりたい。思い描いているような場所までたどり着くために、今まで以上に地道な努力を怠らず、ピッチの中で誰よりも走って、誰よりも戦って、誰よりも勝利に貢献してやる。

「今回世界を見たことで、改めて『世界の選手とやり合いたいな』と思いましたし、そのためにはもっと日常の質というところで、ピッチ内もピッチ外ももっとレベルを上げないといけないなということは感じたので、これからも自分のペースでしっかりやっていきたいなと思います」

サガン鳥栖U-18のダブルキャプテンに指名されている、気合の入った小柄なファイター。東口藍太郎はトップチームや年代別代表でのハイレベルな活動も糧に、もっと成長するための材料をいつでも探し求めている。

「入りのところで、しっかり入れなかったというところと、シンプルに相手の方が1対1だったり、個人の局面で優っていたと思います」。東口は終わったばかりの試合を悔しそうに振り返る。リーグ戦6連勝で迎えたホームゲーム。神村学園高校との一戦は、序盤からなかなかリズムを生み出せない中、前半だけで3失点を献上。想定外の展開を強いられる。

背番号8も中盤を懸命に走り回るものの、状況は好転しない。1点を返せない時間が続く中で、さらに2点を奪われ、ファイナルスコアは0-5。試合が終わった瞬間。全力を出し尽くした東口は、しばらくピッチに倒れ込んだまま動けない。

「やっぱり6連勝して、チームの中でどこかに隙が生まれていたのかなと思いますし、リーグ戦を戦っていく中ではこういうゲームを勝ち切りたいですけど、負けも経験しないといけないので、逆にクラブユースの前にいろいろなことに気付けて良かったなと思います」。ふつふつと沸いてくる自分への怒りを抑えながら、言葉少なに語る姿からはチームリーダーとしての自覚と反省が垣間見える。

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前述したように、今季の鳥栖U-18はダブルキャプテンを採用。東口と黒木雄也が2人でチームを束ねる役割を担っているが、お互いの正反対と言っていいキャラクターが、良い補完関係を築いているという。

「自分は結構真面目な方で、背負い過ぎちゃうタイプなんですけど、黒木はそこまで真面目な方でもないので(笑)、いい感じでお互いをカバーし合いながらできていますし、アイツはプレーで引っ張れるので、心強いかなと思いますね。どちらかと言うと黒木が優しくて、自分が厳しいタイプなので、言うところはしっかり言える関係性は意識してやっています」

もちろんみんなとも円滑な関係を築きたい。とはいえ、時にはチームのために、その選手のために、強く言わないといけない場面もある。それがキャプテンとしての責任であり、担うべき役割。そんなことも東口は十分すぎるほどにわかっている。

「優しくしすぎて負けるのが自分としてもチームとしても一番嫌ですし、やっぱり勝てたらみんな結果オーライだと思うので、その場では強く言うような、ピッチ内では厳しいところも見せながら、でも、『勝ったら笑顔で終われるよね』という感じはイメージしていて、ピッチ外での下級生との関わり方も考えていますね」

今シーズンに入って2種登録を果たした東口は、3月26日に開催されたYBCルヴァンカップ1回戦の松本山雅FC戦の試合メンバーに入ると、スコアレスで突入した延長後半開始からピッチへ解き放たれ、プロの舞台の雰囲気を肌で感じることとなる。

「試合中は『観客が多いな』と思ったんですけど、いざピッチに入ってみると何も変わらないというか、意外と慌てずにリラックスしてやれましたし、もうその時は延長戦で、全員が『行くぞ』という雰囲気になっていたので、自分もその勢いに乗りながらやれたかなと思います」

結果的に試合には0-1で敗れたものの、「『自分が今まで目標としてきたのはここなんだな』と再確認できたので、もう1回そこに向かって頑張りたいなと強く思いましたし、ユースで練習する時も、誰よりも基準高くやらないといけないなというのは感じました」と話す東口の中でこの日の30分間が、改めて高いモチベーションを持ち続けることの必要性を突き付けられる、貴重な機会だったことは間違いない。

 

今季はプレミアでも一定以上のパフォーマンスを続けてきた成果として、5月にはスイス遠征に挑むU-18日本代表にも選出され、自身初の年代別代表も経験。ヨーロッパの強豪国と対峙したことも、より目線が上がる1つのきっかけになったようだ。

「クオリティのところは日本人の方が絶対に上手いので、そこは自信になりましたけど、どれだけ良いビルドアップをしても、点が決まらないと意味がないですし、海外の選手は雑なところはありますけど、ゴールはしっかり決めてくる印象もあったので、本当にそこは見習っていかないといけないかなと思います」

「個人的には世界の選手は速いし、大きいしというところで、日本では取れていたボールもなかなか取れない経験もしましたし、そこまで通用しなかったわけではないですけど、このプレミアリーグの試合ではどの試合でも圧倒的な存在にならないと、世界には追い付かないなと強く感じました」

参考にしている選手は元フランス代表のエンゴロ・カンテ。確かにプレースタイルも似通ったものがあり、思わず『鳥栖のカンテ』という異名を付けたくなるところだが、そう水を向けられた際に返ってきた言葉が、何とも頼もしくて振るっていた。

「カンテの映像は結構見ていて、ボールの奪い方は参考になりますし、プレー的にもイメージはしているので、『鳥栖のカンテ』と呼ばれるのもメチャクチャ嬉しいですけど、やっぱり『鳥栖の東口』として自分の名前をどんどん売れたらいいなと思います」

ピッチ上で発するエネルギーとパワーには、一際目を惹くものを携えている。ここからはさらに次のフェーズへと飛び込んでいくための勝負の時間。『鳥栖のカンテ』ではなく、『鳥栖の東口』を日本中へ轟かせるための飽くなき挑戦。愛と勇気の戦闘型ボランチ。鳥栖U-18を束ねる東口藍太郎が、丁寧に伸ばしていく成長曲線には、今まで以上に注視する必要がありそうだ。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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