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緑の背番号10を託されたマジカルレフティ。昌平高校・山口豪太が「本気のサッカー」を突き詰めた先に見据える兄との共闘 【NEXT TEENS FILE.】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史昌平高校・山口豪太
この背番号10がひとたびボールを持つと、何かが起きそうな予感がピッチ上に充満する。得意の左足を振るって掛ける魔法には、相手だけではなく、時には味方が惑わされることも。それを見た多くの人は、そのスペシャルな才能に魅入られてしまう。
「このチームメイトと一緒にやれるのも今年が最後の年なので、この1年はみんなと楽しんでサッカーをやりたいと思いますし、そこは強く意識しています。自分が背中で引っ張っていけたらいいなと思いますね」
入学時から一貫して注目を集め続けてきた、昌平高校が誇るマジカルレフティ。山口豪太はいよいよ足を踏み入れる高校ラストイヤーへ、強い覚悟を抱いて飛び込んでいる。
「1試合目はトップ下で出て、2アシストできて自分の特徴も出せたんですけど、2試合目はチームとしても雰囲気が悪くて、試合も負けましたし、自分も良いプレーが出せなかったです」
プレミアリーグEAST参入3年目を迎えた昌平。今季の開幕戦は市立船橋高校相手に、90分の決勝ゴールで粘り強く勝ち切ったものの、第2節は流通経済大柏高校に0-3で完敗。自身のパフォーマンスも振るわなかった山口は、改めて気合いを入れ直していた。
第3節のホームゲームは浦和レッズユースとの“埼玉ダービー”。1-0でリードしていた70分に、その真価は発揮される。相手のパスを引っ掛けた高江洲春虎から右サイドでボールを受けた10番は、1人目のマーカーを剥がし、2人目のマーカーもシザーズでヒラリ。ゴールライン際。中央の状況を“色覚”で把握する。
「璃喜のスパイクがオレンジで、その色が見えたので、『空いてるな』と思って出しました」。利き足とは逆の右足で、『オレンジのスパイク』を履いていた長璃喜へと丁寧なラストパスを通し、追加点を冷静に演出してみせる。
さらなる輝きを放ったのは、1点差に迫られていた86分。安藤愛斗のパスを引き出し、対峙した相手を右手で弾きながら右サイドを運ぶと、エリア内へ侵入した瞬間から駆け引きは始まっていた。「今日は結構シュートを打っていて、『たぶんまた足を出してくるな』と思ったので、切り返しました」
12分。66分。68分。エリア内へと潜った3度のチャンスには、いずれもフィニッシュを選択。「あれを見せていたから最後の切り返しが効いたかなと思います」。伏線を回収する格好で、足の裏を使って巧みに切り返し、狭いコースに再び右足で完璧なラストパス。島田大雅のシュートが確実にゴールネットを揺らす。
ファイナルスコアは3-1。「試合途中ぐらいでちょっと疲れて、頭が動かなくなったんですけど、最後に息を吹き返せましたし(笑)、今日は結構自分の特徴を出せていたので良かったと思います」と笑った山口の2アシストが、チームに2試合ぶりの白星を鮮やかにもたらした。
FC LAVIDAに在籍していた中学年代から、“天才レフティ”として周囲の耳目を集めていた山口だが、とりわけ高校入学後は決して順風満帆な日々を送ってきたわけではない。「結構警戒されているなとは思います」と自身も話すように、相手も昌平のキーマンを潰そうと、あの手この手で対応策を練り上げる。1年時は疲労骨折に体調不良も重なり、自分の納得が行くようなシーズンは過ごせず。2年時のインターハイでは5アシストを記録し、チームの日本一にきっちり貢献したものの、選手権予選では準々決勝でまさかの敗退。力不足を痛感するような経験も重ねてきた。
その中でも緑のユニフォームを纏ってきた2年間で、明らかな成長を実感している部分もある。「“心”の部分ですね。チームに良い声を掛けることは凄く意識していて、自分が文句を言ってもチームはマイナスな方にしか行かないですし、そこでプラスの声を掛ければ、チームの輪も大きくなっていくのかなって」
プレシーズンの時期にチームをまとめる役割を託された際、プラスの声掛けが仲間に与える影響の重要性を痛感。そこからは選手同士がポジティブな要求をできるような環境づくりを意識してきたという。「最近は良い声で要求できるようになって、ただの文句を言う人がいなくなったかなと。チームとしても凄く上向きにやっていけていると思います」。グループの一体感にも手応えを掴んでいるようだ。
4人兄弟の末っ子に当たる山口にとって、一番上の兄の存在は語り落とせない。山口大輝。27歳。流通経済大学を卒業後、当時はJFLに所属していたいわきFCへ2020年に加入すると、クラブとともにステップアップを果たし、今季もJ2を戦うチームの中で、中盤のキーマンとして欠かせない役割を担っている。
「プレースタイルが違うので、アドバイスはそこまでもらわないんですけど、プロでお兄ちゃんと同じチームでサッカーしてみたいなという気持ちはあります。小さいころからお兄ちゃんとかその友だちとボールを蹴るのが好きでしたけど、年が10歳離れていて、自分が小学生のころは遊んでもらっていた感じなので、『本気のサッカー』で一緒にやってみたいなと思います」
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配信期間 : 2025年4月27日午前10:50 ~
以前から思い描いてきた大きな目標として、『本気のサッカー』で兄と同じピッチに立つためにも、この1年はとにかく大事な勝負の年。本人も確かな決意をきっぱりと口にする。
「このチームで悔いなく1年間過ごして、その中で自分がチームを勝たせられる選手になれば、プロからも見てもらえると思いますし、そういう話ももらえると思うので、まずは勝利に貢献できるように頑張っていきたいです。チームとしては三冠を目指していて、日本一は絶対にまた獲りたいと思っていますし、個人としてはアシストだけじゃなくて、得点も獲れる選手になっていって、相手にとって怖い選手になっていくのが今年の目標です」
突き進む。目の前に広がる打開すべきスペースを。切り拓く。望んだ未来へと繋がっているはずのオフロードを。繊細で豪快な左足を宿した、昌平の10番を背負う稀代のファンタジスタ。2025年の山口豪太からは、今まで以上に目が離せない。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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