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11年ぶりのプレミア帰還は新たなスタート。東京ヴェルディユースが突き進む「やりたいところ」への大いなるチャレンジ 高円宮杯プレミアリーグEAST 川崎フロンターレU-18×東京ヴェルディユースマッチレビュー
土屋雅史コラム by 土屋 雅史
「全部足りてねえなっていう感じですね。すべてを上げていかないと難しいなと。今持っているものは一生懸命出したと思うんですけど、『これでは到底やりたいところにはいけないよね』という話を選手たちとしたところです」
試合が終わったばかりのグラウンドの片隅で、穏やかな表情を浮かべながら小笠原資暁監督はそう口にした。今シーズンの東京ヴェルディユースが真剣に目指す『やりたいところ』へとたどり着くための航海が、いよいよ幕を開けた。
プレミアリーグEAST開幕戦。「初戦の硬さがあるのは想定内だったので、自分は声を出してチームを引っ張ろうと思ったんですけど、想像以上に硬かったですね」とキャプテンマークを任された仲山獅恩が話したように、東京Vユースはやや川崎フロンターレU-18の勢いを受ける格好で立ち上がる。
実に11年ぶりにトップディビジョンへと帰還しただけに、もちろんその舞台を経験している選手は、この日のピッチに1人もいない。楽しみと、不安と、ワクワクと、ドキドキと。いろいろな感情が入り混じる中、13分には先制点を献上。いきなりビハインドを背負う展開を強いられる。
1トップに入っている寺村智晴は、逆境に立たされたチームに入ったスイッチをはっきりと感じていた。「チーム自体も『やれるかな?』みたいな不安はあったと思うんですけど、失点してしまってから目が覚めた感じでした」。もう、やるしかない。27分。木下晴天のクロスがペナルティエリア内で相手のハンドを誘発。仲山のPKは相手GKにストップされたものの、詰めた寺村が丁寧にプッシュ。まずは同点に追い付いてみせる。
32分。ジュニアからの生え抜きレフティが魅せる。舛舘環汰が左へ振り分け、受けた草間信はキックフェイントから足裏で切り返し、そのまま左足でのシュートを選択。相手に当たってわずかにコースの変わったボールは、ゴールネットへ突き刺さる。5分間で引っ繰り返ったスコア。前半はアウェイチームが1点をリードして終了した。
ところが後半は流れが一変。中盤の顔ぶれを変えた相手にボールを動かされ、少しずつ選手たちは体力を奪われていく。「プレスに行ったはいいけれど、パスを通されて3人ぐらいが守備できない状況になるとか、そういうところがもったいないなと思いますね。相手はそこを使ってきたいチームで、じゃあそこを使わせないとどうなるかというと、一番のストロングを取り上げられた状態になるので、そこに持っていきたいというところで、できたシーンももちろんありますけど、完璧に遂行するというところには全然遠いなという感じです」(小笠原監督)
77分にオウンゴールで追い付かれると、その1分後にはビルドアップを引っ掛けられたショートカウンターから連続失点。2分間で再逆転を許してしまう。ファイナルスコアは2-3。「逆転できたところは良かったですけど、2点獲られて逆転されてしまったところで、反省と収穫の両方があった試合だったと思います」(寺村)。オープニングマッチで白星をもぎ取ることは叶わなかった。
「東京ヴェルディユースを率いる小笠原資暁監督
3月。プレミアの開幕を1か月後に控えたタイミングで、小笠原監督は今季のチームが目指すべき『やりたいところ』を教えてくれた。
「一番やりたいのは“半面”でずっとサッカーをして、相手を倒していって、全試合それで勝って優勝することですね。そうありたいなという中で、それに向かって練習から、いかに理想と現実を近づけるかという作業かなと思います」
その決意を知っていただけに、この日聞いた冒頭の言葉にも十分にうなずけた。「僕は極端な性格なので、やるからにはそれができるようにしたいですし、そこから逆算して全部をやりたいなという感じですね」と指揮官は言うものの、その気概は彼が籍を置くクラブが“ヨミウリ”時代から貫いてきた哲学と、過不足なく一致しているようにも見える。
おそらくはこの年代の中でも、トップクラスにサッカーと真摯に向き合っている仲山は、さも当然のように開幕戦の敗戦の責任を、自分自身へと向けていた。「さっきデータを見たら1人でシュートを9本も打っていて、1点も獲れていないというのは自分の問題で、もう負けたゲームの責任は全部自分にあるので、他の選手が引きずる必要はないです。あとは自分が決めるだけなので、2節目からはそこにこだわってやっていきたいと思います」。次節はFC東京U-18と対峙する東京ダービー。10番の躍動は勝利への絶対条件だ。
シーズンはまだまだ長い。だが、まず見据えるのは目の前の試合と目の前のトレーニング。それを積み重ねた先にしか、望んだ姿へと到達するすべはない。このチームでの1試合目を終えて、小笠原監督にはより明確に見えてきたものがあるようだ。
「1試合終わって、足りないものがますます見えました。それをまた1つずつクリアしていくことで、次の試合は今日よりもっと良い試合ができるかどうかという楽しみが出てくるはずなので、そこにポジティブに選手が向かえるような1週間を過ごしたいなと。練習からバチバチやって、クオリティをみんなが求めて、『来週は絶対勝つぞ』というような1週間を過ごして試合に向かっていかないと、それこそ勝っても負けても意味がないんです」
「だから、トレーニングをどれだけ高い水準でやれるかというところで、そこから楽しみにしていた次の試合ですべてを出し尽くして、結果がどうなるかという、そのサイクルを回していく感じですね。やっぱり強い相手と毎週やれることが、プレミアで戦う意味だと思います。ただただ強い相手とサッカーをやって、そいつらに優っていく、そいつらを倒していくと。それ以上でも、それ以下でもない気はしますね。強い相手に勝つ。それが楽しいんです」
選手が変わっても、指導者が変わっても、ランドで育ってきた彼らには、絶対に譲れないものが脈々と受け継がれている。強いヤツらに勝って、自分たちの方が強いことを証明してやる。いたってシンプルで、いたって根源的。2025年の東京ヴェルディユースも、自分たちの信じた『やりたいところ』へと続く道を、一直線に突き進む。
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文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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