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あらゆる守備能力を兼ね備えた世代屈指のセンターバック。川崎フロンターレU-18・土屋櫂大は生田のグラウンドから世界へと羽ばたいていく 【NEXT TEENS FILE.】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史川崎フロンターレU-18・土屋櫂大
日の丸の付いたユニフォームに袖を通し、世界の列強と戦ってきたアカデミー出身の先輩と伍するだけのポテンシャルは、十二分に有している。来年から足を踏み入れるプロのステージでも、自分らしく、溌溂と、未来だけを見つめて、行けるところまで駆け上がってやる。
「フロンターレにはジュニアユースから入って、昇格だけを目指してやってきたので、素直に嬉しい気持ちはありますけど、来年からもっともっと厳しい世界になると思うので、年齢に関係なく、自分からガツガツと物怖じせずやっていけたらいいなと思っています」
川崎フロンターレU-18のキャプテンも任されている、あらゆる守備のパラメーターを高次元で兼ね備えた、世代有数のセンターバック。土屋櫂大がこれから積み上げていくキャリアには、まだまだ見たことのない色彩豊かな景色がいくつも待ち受けているはずだ。
初めて体感した“ワールドクラス”は、とにかく刺激的だった。昨年11月に開催されたFIFA U-17ワールドカップ。U-17日本代表の一員として初めての世界大会に挑んだ土屋は、ディフェンスラインを束ねる役割を託され、グループステージとラウンド16の4試合にフル出場を果たし、かけがえのない経験を得た。
スペインやアルゼンチンを筆頭に、マッチアップした強豪国の対戦相手には既にヨーロッパのトップレベルの公式戦でピッチに立っていた者もいた中で、もちろん手応えを掴んだ部分もありながら、今までに感じたことのないようなプレーレベルを味わったことで、新たな課題も浮かび上がってくる。
「フィジカル面やスピードと自分に自信のあった部分でも、ワールドカップでは消されていた部分もあったので、そこは改めて見つめ直しています。筋トレもやっていますし、スピードの強化という面では今年からフィジカルコーチの方も付いてくださっているので、コーチングスタッフに相談しながら、フィジカル面も上げていっています」
フィジカルレベルの基準に据えるのは、実際に肌を合わせた列強のフォワードたち。彼らがさらに成長するのであれば、自分もさらに成長しないわけにはいかない。土屋は今まで以上に高い意識を携えながら、日常のトレーニングと真摯に向き合っている。
夏のクラブユース選手権では、自らの劇的なゴールでチームを救う試合も経験した。ファイナル進出の懸かった西が丘での準決勝。アビスパ福岡U-18との一戦は後半に入って失点を喫すると、以降は何度も相手ゴールに迫るものの、なかなか得点を奪うまでには至らない。
追い込まれた最終盤。競り合いの高さと強さを生かすため、前線へとポジションを変えていた土屋は「なんか今日は『まだ追い付けるな』という自信しかなかったんです」と、その時のメンタルを振り返るが、そんな言葉を証明するかのようなシーンは、アディショナルタイムに訪れる。
80+3分。ともにU-17ワールドカップを戦った盟友の柴田翔太郎が右サイドでボールを持つと、2人のイメージは完璧に共有される。「柴田が左足で切り返した時は、『もう絶対ニアのあそこにボールが飛び込んでくる』と思いましたし、彼を信じていました」。予想通りにニアへ届いたクロス。懸命に頭で合わせたボールは、ゆっくりとゴールネットへ吸い込まれていく。
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「もう感覚です!気持ちで押し込みました!」。いつもは冷静なキャプテンも、渾身のガッツポーズ。この土壇場の同点弾で息を吹き返した川崎U-18は、9人目までもつれ込むPK戦を制して、歓喜の輪を作る。結果的に悪天候の影響で40分一本勝負となったファイナルではガンバ大阪ユース相手に苦杯を嘗めたが、この準決勝で挙げた得点にはキャプテンとしての、そしてフロンターレの選手としての意地が、存分に詰め込まれていた。
クラブユース選手権準決勝。土屋が起死回生の同点ゴールを叩き込む!
クラブユース選手権後には、SBSカップに参戦するU-18日本代表に選出されると、ここでもチームのキャプテンを任され、3試合すべてにスタメンフル出場。抜群のリーダーシップを発揮しながら、プレー面でも丁寧なビルドアップと空中戦の強さで、チームを最後方から支え続けた。
代表のチームメイトも、この人の能力には一目置いている。「守備の球際の部分や間合いの詰め方が、やっぱり土屋は上手いなと感じました」(大宮アルディージャU18・斉藤秀輝)「櫂大は安心感がありますし、『ここにいたら、ここにボールをくれる』というところで任せられる部分も多くて、そこは代表に入って一番驚きました。もともと知ってはいましたけど、凄いです」(名古屋グランパスU-18・池間叶)
土屋は今月からキルギスで開催されているFIFA U-20ワールドカップのアジア1次予選、『AFC U20アジアカップ中国2025予選』に臨むU-19日本代表にも“飛び級”で選出されていたが、残念ながら負傷の影響で無念の離脱。それでも代表スタッフからその実力が高く評価されていることに、疑いの余地はない。
来季のトップチーム昇格は内定済み。レベルの高い先輩たちと切磋琢磨しながら、プロサッカー選手に必要な力を地道に培っていく覚悟は整っている。「高井(幸大)選手もそうですけど、日本を代表するようなディフェンダーの選手がフロンターレからどんどん出ているので、まずはチームに欠かせない選手になるということを目標として、来年から頑張っていきたいと思います」
谷口彰悟、板倉滉、そして高井幸大。フロンターレを支えてきた偉大な“守備者”たちの背中を追い掛けながら、自分ならいつかは彼らを追い越すことができると信じて、土屋櫂大は通い慣れた生田のグラウンドから、より大きな世界へと力強く羽ばたいていく。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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