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多くの高校が、青森山田のプレッシングを前にボールを下げる選択をしたのに対して、近江の選手たちは相手がプレスをかけてくる勢いを逆に利用して、相手をギリギリまで引き付けてからパスをつないだり、ターンしてドリブルに移ることでプレッシングをはがしていったのだ。
ドリブルをまじえながら大きな展開を見せた西飛勇吾や右サイドでのドリブルでボールを運んだ鵜戸瑛士など、ボールテクニックは確かなものだった。
相手を引き付けてプレーするのは、かなり勇気の必要なプレーだったはずだが、相手が怯まずにつないできたことで青森山田の選手たちもタジタジになる場面もあった。
後半ポジションチェンジで攻撃にギアを入れた近江が金山耀太のクロスから同点に持ち込む
最終的には青森山田のフィジカル能力が上回り、また分厚い守備組織を前にシュートまでは持ち込めなかったものの(決勝戦での近江のシュートは前後半1本ずつ)、テクニックを前面に出して強豪に立ち向かった戦いぶりは多くの観客に感銘を与えるものだった。
全国選手権での滋賀県勢の優勝は18大会前の野洲高校まで遡る。
当時の野洲は個人技を生かしたサッカーで「セクシー・フットボール」と謳われたものだったが、今回の近江も“セクシーさ”ではけっして見劣りしていなかったかもしれない。
なにしろ、相手の運動量やプレッシングの激しさは18年前とは格段に上がっていたからである。
第102回大会で記録に残るのは、当然、優勝してプレミアリーグとの「2冠」を達成した青森山田なのだろうが、近江の健闘も記憶として残しておくべきものだ。
第102 回全国高校サッカー決勝、近江がスタイルを貫き強豪青森山田からゴールを奪う
青森山田はとにかく、勝負に徹した戦い方だった。
全国大会で3度の優勝を置き土産に退任した黒田剛監督(J2リーグ、FC町田ゼルビア監督に就任して、チームをJ1昇格に導いた)の跡を継いだ正木昌宣監督としては「結果を出すしかない」状況だったろうし、青森山田という高校の監督として結果を出すことは至上命令だったのだろう。
しかし、あれだけの好選手を集めたチームなのであれば、慎重なだけでなく、もっとチャレンジングな戦いを挑んでほしかった。
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