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そして、60分を過ぎると、尚志高が反撃に移る。まるで、それまでは死んだふりをしていたかのような効率的な攻撃だった。とくに、右サイドのドリブラー若林来希がしかけ、右サイドバックの冨岡和真が追い越していく縦に速い攻撃と、左右のサイドチェンジが有効だった。
徹底的にパスをつなぐ川崎の攻撃に対し、シンプルでスピードのある尚志高の攻撃が対照的だった。そして、やはり右サイドの若林のクロスから形を作った尚志高は最後はFWの網代陽勇が混戦の中から決めて再び勝ち越し、そのまま逃げ切った。
90分を通じたシュート数は川崎の13本に対して尚志高が10本。ボール支配率の差に比べると、シュート数もCKの数も両者の差は小さかった。尚志高がシンプルな攻めで相手ゴールに迫ったからこそ、こういう数字になったのだろう。つまり、ともに持ち味を出した試合だったと言える。
川崎としては、あれだけ攻撃を仕掛けながら相手の中央の守備を突破できなかったことが敗因。突破を仕掛けては、屈強な相手DF陣に跳ね返され続けた90分だった。
川崎のツートップの岡崎と高橋宗杜はいずれも175センチ前後と小柄で動き回るタイプのFWだったが、1人大型で相手のDFと競り合いながらボールを収められるFWがいたら攻撃の幅も大きくなったはずだ。
今や世界のトップを狙おうという日本代表でも、いわゆるCFタイプのFWがいないのが弱点の一つだった。また、U-17日本代表はアジアカップでは大量得点を奪ったが、先日のU-17ワールドカップでは攻撃陣はスピードでもパワーでも世界相手に通用しなかった。
守備や中盤は戦術に忠実で勤勉な日本人の良さが生きるが、やはり攻撃陣には「個の力」が必要なのだということを痛感させられたのだが、川崎フロンターレU-18の攻撃が跳ね返され続けるのを見ていて、そんなことを思い出させられた。
尚志高は見事な試合運びで川崎を破った。だが、同時刻に行われていた試合で青森山田がFC東京U-18を2対0で破ったため、優勝は青森山田と決まった。
同日に行われたプリンスリーグWEST最終節でも、EASTと同じように3チームが絡む優勝争いが繰り広げられたが、前節まで首位にいたサンフレッチェ広島F.C.ユースがそのまま優勝を決め、来週には青森山田高と広島の間でプレミアリーグファイナルが行われる。
U-18年代のトップを決める試合だ。「個の力」の躍動に期待したい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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