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ちゃんとした監督に率いられた、ちゃんとした選手たちが掴んだ日本一。インターハイ決勝 桐光学園高校×明秀日立高校マッチレビュー
土屋雅史コラム by 土屋 雅史決勝戦のハーフタイム。後半に向けて伊藤コーチと選手たちがミーティングをしていた時、萬場監督は少し離れた位置から、静かにその光景を見守っていた。「今のこのスタイルに関して言えば、自分としては今まで来た全国大会とは違った見方ができていると思っています」。それまではすべての意志決定を1人で行っていたという指揮官も、あるいはこの大会を通じてチームの、そして自身の成長を実感していたのかもしれない。
おそらくは“ニュアンス”にもこだわるタイプだ。準決勝後の取材エリアで話していた一連を思い出す。「僕は『全国制覇』って絶対に使わないようにしているんです。子どもたちにも話したんですけど、全国を制覇するような力は正直ないと思います。このタイミングで『頂点に立つ』『日本一になる』ことはもしかしたらできるかなということは、多少なりとも自信はあります。ただ、その結果によって何かが変わるということはないので、彼らにとっては、山田のタフさ、静学の上手さ、日大藤沢の個人のスキル、そういうものを身に着けるための大会であり、気付きの得られる大会ということで、あとは気持ち良く帰れるかどうかだけだと思います」
その“繊細さ”はJリーグの世界でも選手の育成に定評のある京都サンガF.C.のチョウ・キジェ監督や長澤徹ヘッドコーチ、前ヴァンフォーレ甲府監督の吉田達磨氏に近いものを感じる。要は、1つの言葉が持つ力をわかっているということだろう。極めて理知的に、丁寧に、ちゃんと話してくれる姿勢は、日本一を勝ち獲った決勝の試合後まで、何ひとつ変わらなかった。
今年の春。彼らは難しい時期を迎えていた。チーム内で問題が勃発し、萬場監督は1か月グラウンドでの技術指導に立たなかったという。部の活動も2週間ほど止まり、その期間に伊藤コーチ、大塚コーチと選手たちは改めて向き合ったことで、自分たちの在り方を見つめ直した。
「『サッカーに集中できる環境ができていない。それを作るまでは練習には出ない』と萬場先生に言われて、そこで真剣にどういう部活にしていきたいかということと自分たちは向き合ったことで、チームを変えられたと思います」。山本は真剣な表情で当時を振り返る。
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