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あのベルギー戦を振り返る放送の冒頭。自らも歌っていた君が代を聞き終えた森岡隆三は、「鳥肌が立ちましたね」と話していた。まったく一緒だ。パソコンの画面で同じ映像を見ていた私も、森岡同様に自然と鳥肌が立っていた。2002年6月4日。この日の埼玉スタジアム2002には、会場を訪れていた人も、テレビの前で見守っていた人も、ありとあらゆる日本サッカーを応援する人のエネルギーが、まるで“元気玉”のように結集していたように思う。
初めて尽くしだった。ワールドカップがアジアに来るのも、複数国で共催されるのも、もちろん日本で開催されるのも初めて。あるいは、開催国が初戦で負ければ初めて、グループステージを突破できなければ初めて、というネガティブな“初めて”も事前情報として用意されていた。
チームを率いていたのはフィリップ・トルシエ。来日した時はまったくの無名だった指揮官は、しかしこの代表監督を務めていた4年間においては、日本で最も有名なフランス人だったかもしれない。そのぐらい2002年のワールドカップに臨む日本代表への関心は高かったのだ。
同じグループに入ったのはベルギー、ロシア、チュニジア。何とも言えない3か国が揃う。勝てないこともなさそうだが、負けないとも言い切れない。前回大会で敗れたアルゼンチン。結果的にこの大会を制したブラジル。ディフェンディングチャンピオンのフランス。わかりやすい強豪が同居していないだけに、最大の目標だった決勝トーナメント進出には希望と不安が入り混じっていた。
バイシクルシュートで日本から先制点を奪うヴィルモッツ。引退後は母国ベルギーやコートジボワール、イラン代表などの監督を歴任。
初戦。相手はベルギー。55,256人の大観衆が日の丸を振る。後半。のちに監督としてワールドカップに帰ってくるマルク・ヴィルモッツのオーバーヘッドが、日本ゴールを撃ち抜く。静まり返ったスタンドは、だがそこから青の歓喜で沸騰する。鈴木隆行のつま先シュート。そして、稲本潤一の豪快な逆転ゴール。結果は追い付かれてのドローではあったものの、「凄いものを見た」という高揚感に日本中が包まれた。
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