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たとえば、決勝戦。実力的には青森山田が大津を上回っていた。パスをつないでボール保持率を上げようと思えば、いくらでも上げることができたかもしれない。しかし、青森山田はミスを避けることを最優先に戦った。
パス回しにこだわることで、自陣でカットされてショートカウンターを食うリスクが生じる。そこで、青森山田の選手たちは難しい場面では無理してつなごうとしなかった。無理をせずに相手陣内にロングボールを蹴り込んだのだ。ボール保持は捨てる代わりに、相手のラインを押し下げることでリスク回避ができる。
それでも開始から10分を過ぎるころには完全にゲームをコントロールした青森山田。だが、相手もそれは承知のうえで守備を固めてくる。「無理をしない」こともあって、チャンスは作ってもなかなかゴールをこじ開けられない。青森山田にとっては嫌な時間が続いた。
だが、そうなった場合にはセットプレーで打開できるのが青森山田の強味だった。
37分に藤森颯太のCKにDFの丸山大和が頭で合わせて先制ゴールを決めたのだ。その後、こぼれ球からもう1点を追加して2対0で折り返し、後半にも藤森のロングスローからキャプテンの松木玖生が3点目を決めて、勝負の行方は完全にきまった。
そういえば、準決勝の高川学園戦でも先制点はFKからのものだった。5人のDFを並べてロースコアゲームに持ち込もうという高川学園の思惑を、開始わずか3分で打ち砕いてしまったのだ。
相手が守りを固める時には、セットプレーが有効なのは当然のことだが。青森山田のCKは実に多彩だった。ニアに速いボールを蹴ったり、ふわりと浮かせたり、ファーに上げたり……。ゴール前の選手たちの動きもバリエーション豊富だった。決勝戦では前半だけでCKが9回あったが、そのすべてが違うパターンだった。
青森山田のエースと目されたのはキャプテンの松木だった。青森山田出身のプレーメーカーといえば、まず柴崎岳を思い出す。
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