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サッカー フットサル コラム 2021年10月8日

【高円宮杯プレミアリーグEAST 市立船橋高校×FC東京U-18レビュー】 選手とスタッフで『一緒に乗り越える』。市立船橋高校が取り組む意識的な変化

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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市立船橋高校を率いる波多秀吾監督は、シーズンが進んでいくにつれ、少しずつ選手へのアプローチを変えてきているという。「言い方だったり、気持ちの持っていき方、雰囲気のところを少し考えてきました。彼らも責任を感じていたり、プレッシャーを感じていたりすることはゼロではないので、本当だったらそこを自分たち自身で乗り越えてきてほしいけれども、1つ1つ僕らと一緒に乗り越えていくような作業というか。そういうアプローチの仕方でもいいんじゃないかというような話ですね」。

今シーズンはプレミアリーグで青森山田高校に0-9と衝撃的な大敗を喫し、インターハイ予選でも準々決勝敗退を強いられるなど、苦しい時期を過ごしてきた市立船橋。波多監督は前半戦の自身について、こう振り返る。「僕はひたすらプレッシャーを掛けまくっていたんですよ。それは自分自身に対してのプレッシャーもそうなんですけど、『市船は勝たねばならないチームだ』と。常にそういう厳しいことを言い続けていたんです」。

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ただ、なかなか結果が出ない上に、選手たちも自信を失い掛けていたことは十分にわかっていた。さらに、コロナ禍で例年のようなトレーニングを積むことができない状況もあり、スタッフとの話し合いを経て、少し方向転換を図ることを決断する。

「僕らスタッフはOBなので、これまでの市船の鍛え方とはちょっと変えないといけないなっていうところもあって、単純に練習の中で“褒める量”を増やしたり、1人1人と向き合って会話する量を増やしたりとか、各スタッフが限られた時間の中で、どう鍛えていくか、どう上向きにしていくかということを考えてやってくれているので、そこは少しずつ軌道に乗ってきているんじゃないかなと思います」(波多監督)。

実際にコーチングスタッフが、選手1人1人との個人面談を実施。「『ああ、こんなことを選手たちは考えているんだ』と聞き出して、『じゃあこういうようなチャレンジをしようか』と話し合って。こちらの求めていること、要求することを下げるわけではなく、良い方向にトライしていけたらいいねと話してはいますね」と指揮官。改めて彼らの考えていることを把握したうえで、それぞれへのアプローチを考えている。

リーグ中断前のラストゲームとなった7月4日の柏レイソルU-18戦は、周囲から称賛を集めたことがあったそうだ。「選手たちにも『「いろいろな人が凄い良かった」って言ってくれるよ』と。『何が良かったって、ベンチのヤツらはアップしてなくて、声を出しているだけだもん』って(笑)。でも、それぐらい戦っていたよと。『本当は動かなきゃいけないんだぞ』とも言いながら(笑)。でも、それぐらい気持ちが入って、チーム一体となってというのは凄く良いことですからね」(波多監督)。

この日のFC東京U-18戦でも、ベンチメンバーはアップエリアから大声でピッチの選手たちを鼓舞し続けていた。その大半はポジティブな声掛け。ややおとなしめだったチームが、間違いなくパワーを発散できるように、力を結集できるようになりつつある手応えを、指導陣も感じているようだ。

「最後に集合した時に、『はい、じゃあオマエ一発芸』とか言って、『はい。全然面白くない』ってやったりとか(笑)。なかなか自己表現できない部分を、何とか引っ張り出してやりたいなっていうのはありますね。もう『何でやんねえんだよ』ってイライラすることもいっぱいありますし、『ああ、これは我慢だなあ』ということもありますけど、『締めるだけ締めても、これではダメだな』というのもあったので、いろいろとアプローチをして、選手がどう感じているかということを基にして、今は選手と向き合っています」(波多監督)。

心なしかチーム全体に笑顔が増えたような印象もある。生意気な下級生を、上級生がうまく泳がせているような雰囲気もある。市立船橋が掲げ続けている武訓の『和以征技』。以前から何より尊んできた“和”=すなわちチームワークに確実な変化が訪れている彼らが、ここから期す逆襲への準備は、着々と進行している。

文 土屋雅史

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土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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