青森山田高校にハマったラストピース。渡邊星来が発する勝者のポジティブオーラ 【NEXT TEENS FILE.｜高円宮杯】

渡邊星来

ここ数年は1トップを採用することの多かったチームにとって、この男の台頭が2トップに舵を切る大きな要因になったことは間違いない。加えて、いつでも笑顔を絶やさない“ポジティブオーラ”は、グループに大きな活力を与え続けている。「今年は自分たちの代なので、弱気になってはダメだと思っていますし、強気で全員を鼓舞する気持ちで、（松木）玖生、（宇野）禅斗、藤森（颯太）が注目されがちですけど、そこに自分も食い込んでいけるように努力していきたいと思います」。青森山田高校の成長を続けるストライカー。渡邊星来の存在感は日増しに高まっている。

快進撃は開幕戦からスタートした。高円宮杯プレミアリーグEAST第1節。浦和レッズユースとの一戦に挑んだ青森山田は4-0の快勝を収めたが、このゲームで2ゴール1アシストと圧倒的な結果を残したのが、プレミアデビュー戦に臨んでいた渡邊だ。

セットプレーからのワンタッチゴールで先制点を挙げると、圧巻は2点目。松木からのパスを中央で受け、相棒のFW名須川真光とワンツーで中央を崩し、さらにキックフェイントでマーカーを冷静に剥がしてから冷静なフィニッシュ。「思った通りにゴールに行けたので、ものすごく良かったです」と本人も振り返った通り、堂々たる正面突破からのゴールは、今シーズンの青森山田の攻撃における新たなバリエーションが明確に誕生したという意味でも、非常に大きな1点だった。

首位攻防戦となったプレミアEAST第7節の清水エスパルスユース戦でも、ストライカーの嗅覚を見せ付ける。コーナーキックから三輪椋平のヘディングがこぼれてくると、相手を背負いながら飛び出したGKの頭上を越えるシュートを選択。ボールはフワリとゴールネットへ吸い込まれる。決して簡単ではないフィニッシュでも、きっちりと決め切るあたりも勝負強さの証。ここまでリーグでは同じ4得点を記録している名須川と切磋琢磨しながら、日々成長を誓っている向上心も頼もしい。

憧れの選手はリヴァプールに所属する、ブラジル代表のフィルミーノ。「ドリブルしてゴールを決めたり、自分をおとりにして味方を生かすプレーが自分の中では得意なので、フィルミーノ選手は参考にしていますね。見ていて楽しいというのもありますし、自分でも行けるし、味方にもアシストできるという、その姿を見てから憧れています」。世界有数のセカンドトップに自身のプレーを重ねつつ、チームの中で課された役割もしっかり整理されている。

愛嬌も抜群。試合中の雄々しい姿とは対照的に、ピッチ外で浮かべる笑顔は実にかわいらしい。さらに、“星来＝せら”と読む名前も印象的。その由来についても、笑顔で明かしてくれた。「お母さんが付けてくれた名前で、星に来るって書いて“せら”なんですけど、『星に願いを込めて、願ったものが来る』ってことで“星来”になりました。だいぶ気に入っていますね。優しいお母さんです（笑）」。願い続けてきたものが、少しずつ実現に近付きつつある今だからこそ、これからの時間が何よりも大切になってくることは、自分が一番よく分かっている。

「個人としての目標は、まだ青森山田が獲れていない“三冠”で、みんなもそう思っていると思うんですけど、自分たちの年でやるしかないので、プレミアリーグ、インターハイ、選手権という大きな舞台で三冠を獲って、この1年を終わりたいと思いますし、まずは絶対にインターハイでも優勝して、この代を一番強い代にしたいです」。みんなの願いを背負いつつ、自分の願いもそこに乗せて、必ず頂点まで辿り着く。

『星に願いを』。様々な願いに彩られた、ポジティブオーラで包んでいる渡邊星来の“星”が、晴れ舞台でどこまで輝くのかが今から楽しみだ。

文　土屋雅史