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今回の新ルールでも、何らかの理由で“もう1人の交代”を使いたいチームが、実際にはそうではないのに「脳震盪だ」と主張して戦術的な交代を使うかもしれない。あるいは、逆に本当は脳震盪なのに、交代させたくないためにそれを隠してプレーを続行させることも起こりうる。
また、選手の健康や生命に危険を及ぼす恐れがあるというのなら、脳震盪以外でも、たとえば熱中症で倒れた選手でも交代を認めなければならないだろうし、重傷を負って出血がひどい選手が無理に止血をしてピッチに戻ることも望ましくない。つまり、「脳震盪等」を広く解釈すればすべての故障で追加交代を認めなければならなくなる。
そうしたトラブルを防ぐためには、第4審判の隣にニュートラルなドクターを配置して、プレー続行の可否を判定させる必要が出てくるでかもしれない。ボクシングの試合では、オフィシャルのドクターが負傷したボクサーを診察して試合をストップさせるシーンをよく目にするではないか。あれと同じだ。
さらに、せっかく「メディカル・レフェリー」を置くなら、プレー続行中にもピッチ内で負傷者の状態をチェックするようにしたらどうだろうか。
選手が負傷してピッチに倒れると、相手チームがボールを外に蹴り出してプレーを止める光景をよく目にする。もちろん、その選手が重傷を負っていたらすぐにプレーを止めるのは当然だが、倒れていた選手がすぐに立ち上がって何事もなかったように元気に走り出すのを見て興覚めしてしまうことも多い。
もし、「メディカル・レフェリー」がピッチに入って状態をチェックすることができれば、本当に重症の時に限ってプレーを止めるようにできるはずだ。
昔、「2人主審制」というアイディアがあって、そのテストがコッパ・イタリアの試合で行われていたのを見たことがある。結局、2人の主審の判定基準をそろえるのが難しくて「2人主審制」は採用されなかったのだが、選手が倒れた時に主審の1人が駆け寄ってプレーを止めるべきかどうかを判断できるので、無駄な中断が少なくなったのは確かだった。
「脳震盪等による交代」が試行されるということを聞いて、そんなことも思い出した。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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