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何よりも川崎の選手たちを見ていて感心させられるのは、スペースを見つける“眼”である。守備の時なら「危険察知能力」というのか、パスがどこに出てくるのかをいち早く察知して、パスを受ける選手を事前に封じ込めておくのだ。前線の選手がうまくパスコースを規制するのも「ここに出されたら危険だ」という意識をしっかり持って守備をしているからなのだろう。
スペースを見つける“眼”はおそらく攻撃のトレーニングの中から培われたものなのではないだろうか。
今シーズンの川崎の攻撃を見ていると、もちろん正確にパスをつなぐ能力は高いのだが、スペースを見つけてそこに選手が入り込み、そしてパスの出し手もそれを感じてつないでいく場面が目につく。小さな、ほんの1、2メートルのスペースを利用することもあれば、中盤にぽっかりとあいた大きなスペースを利用することもあるし、逆サイドまで50メートル以上のロングボールを使うこともある。
だが、いずれにしてもパスの出し手と受け手が同じビジョンを描いてパスを駆使しているからこそ、「なんで、ここにこの選手がフリーになっているのか」と驚かされることになる。
その“眼”を、川崎の選手たちは守備面でも応用して、スペースをいち早く見つけてそこをカバーしているのだ。
もちろん、そうしたスペースを見つける“眼”はJリーグの選手なら誰もが持っているだろう。だが、川崎の選手たちのように高い精度で、そして素早く見つけるのは難しい。
現在の川崎フロンターレ川崎の基礎を築いた風間八宏前監督は、守備がうまくいった試合の後によく「“眼”が速くなった」という言葉を使っていた。
優れたトレーニングを積み重ねていけば、ここまで選手たちの能力とチームとしての意識の統一ができるのだということを証明したのが今年の川崎の優勝だった。「2020年という大変な年に川崎フロンターレという優れたチームがあった」という事実を日本サッカーの歴史に伝えるためにも、最後に5対0という完ぺきな勝利で優勝を決めたことはよかったのではないか。来シーズンは、このサッカーをどのように発展させていくのか。さらには、AFCチャンピオンズリーグという国際舞台でも、この川崎のサッカーを見せてほしいものだ。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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