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サッカー フットサル コラム 2018年5月21日

エデン・アザールがねらった、ユナイテッドの守備のつなぎ目

今週のプレミアムゴール by 清水 英斗
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今週のプレミアムゴールは、FAカップ決勝のチェルシー対マンチェスター・ユナイテッド、前半22分に決まったエデン・アザールの先制決勝弾!

試合を決めたのは、チェルシーのロングカウンターだった。自陣深い位置でポグバの浮き球パスを、ケーヒルが頭で跳ね返すと、こぼれ球をモーゼスが拾った。ラッシュフォードの追撃をかわし、セスクにわたすと、そこからワンタッチでスペースへ。

最初はプルアウェイして外にふくらんだアザールだったが、裏ではなく表へ出たセスクのパスに対し、三日月の動きで中央へコースを取り直す。そして、前向きに勢いを備えてボールに出会うと、絶妙なファーストコントロールで前方のスペースへ。一気にDFジョーンズを置き去りにした。

さらにドリブルで加速。ペナルティーエリアへ侵入し、ゴールエリアに差し掛かったところで、回り込んで追いついたDFジョーンズが身体を投げ出してスライディングタックルに来たが、ボールには触れず。アザールは倒されてPKの判定となった。これをアザールが自ら決めて先制。チェルシーはこの1点を守りきった。

アザールがDFジョーンズを振り切ったところで、勝負ありだ。要因はいくつかあるだろう。攻守の切り替えで、アザールのマークが浮きやすいタイミングだった。さらにアザールのオフザボールの駆け引き、ファーストコントロールの質も、素晴らしく高かった。

そして、もう一つ。両チームのマッチアップのすき間を利用し、アザールが浮いたポジションを取り続けたことも大きい。

[3-5-2]で中盤が逆三角形となるチェルシーに対し、ユナイテッドは[4-4-2]の中盤ダイヤモンド型で、配置をかみ合わせた。アンカーのカンテを、トップ下のリンガードがマークし、相手3バックはサンチェスとラッシュフォードの2トップが見る形を取った。配置をかみ合わせ、ユナイテッドは高い位置から積極的にプレスをかけている。

一方の最終ラインでは、チェルシーの2トップであるアザールとジルーに、DFジョーンズとスモーリングが同数で付く。真ん中に留まるジルーに対し、アザールはサイドに出たり、中盤へ下がったりと、広範囲に動くが、最終ラインが同数なので両DFは深追いをしない。逆に中盤は、セスク、バカヨコ、カンテに対し、マティッチ、ポグバ、エレーラ、リンガードで1枚の数的優位があるため、広範囲に動いたアザールのマークは中盤が引き取る形で、ユナイテッドは守備を構築していた。

アザールがねらったのは、まさに、ユナイテッドの守備のつなぎ目だ。中盤がマークを引き取りづらく、DFジョーンズとスモーリングは、どこまでアザールを追いかけるべきか迷う、ハーフスペース辺りの中途半端な場所。アザールはこのすき間にポジションを取り続けた。

前半15分辺りから、アザールがポジションを変えたことも大きな効果があった。序盤のチェルシーの2トップは、ジルーが右、アザールが左だったが、左サイドでアザールが動き回っても、天敵エレーラに捕まりがち。そこで15分辺りから、ジルーが左、アザールが右と、2トップの左右が入れ替わった。ポグバやヤングなど、ユナイテッドが攻撃的なポジションを取る左側のサイドで、すき間をねらうようになった。その矢先、アザールの先制ゴールにつながったロングカウンターが決まっている。

ユナイテッドは積極的な試合にチャレンジしたが、それ以上にコンテ・チェルシーの戦術が際立った印象だ。攻めに抜け目なし、守りに隙なし。過密日程でリーグ戦はあまり良い成績を残せなかったが、シーズンの最後を飾るFAカップ決勝では、さすがの機能美が見られた。

代替画像

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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