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サイクルロードレース コラム 2026年9月10日

グランツール初出場の21歳ブレナンが5勝目! チームは7勝目! マスが首位を堅持してタイムトライアルへ|ブエルタ・ア・エスパーニャ2026 レースレポート:第17ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ブエルタ・ア・エスパーニャ

ブレナンが今大会5勝目、チームでは7勝目

ブエルタ・ア・エスパーニャは9月9日、ドス・エルマナス〜セビリア間の平坦コースで第17ステージ(184km)が行なわれ、チーム ヴィスマ・リースアバイクのマシュー・ブレナン(英国)が第2、5、11、16ステージに続いてスプリント優勝。総合成績ではモビスター チームエンリク・マス(スペイン)が首位のリーダージャージ、マイヨ・ロホを守った。

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スプリンターにとってはラストチャンス?

第81回ブエルタ・ア・エスパーニャは闘牛とフラメンコの本場、スペイン第4の都市セビリアへ。これまでに15回、ブエルタ・ア・エスパーニャのゴール地点となっているが、2010年には開幕地としてグランツール初のナイト・チームタイムトライアルが行なわれた。

それはサイクルロード界を驚かせた試みだったが、8月末の南スペインの暑さを回避するための策でもあった。レースは最速タイムをチームHTC・コロンビアが記録。マーク・カヴェンディッシュが先頭でゴールラインを通過し、最初のリーダージャージを着用した。最終的にはリグイガス・ドイモのヴィンチェンツォ・ニバリが総合優勝している。

そんなセビリアをブエルタ・ア・エスパーニャは2年ぶりに訪れた。今回のコースは165km地点に中間スプリントポイントがあるだけで、山岳賞ポイントはひとつもない。それでも獲得標高は890mあるのだが、プロのサイクルロードレーサーにしてみればこの日は全くの平坦路だ。途中で逃げ集団ができれば、有力スプリンターを擁するチームがレースをコントロールするはずで、セビリアの市街地を駆け抜けるスプリントフィニッシュが濃厚だ。

第17ステージはスプリンターにとって最後のチャンスか? 最終日のグラナダも一部のスプリンターは狙っているが、アルハンブラ宮殿の登りを4回も越える周回レースで、そこを乗り切る必要がある。それに比べればこの日のステージはもっと単純だ。

今回のブエルタ・ア・エスパーニャは山岳が厳しく、実績のある多くのスプリンターが出場を見送った。加えて、過去のブエルタ・ア・エスパーニャでよくあったことだが、調子のいいスプリンターが勝ち星を量産する傾向もある。今大会ではグランツールのデビュー戦となったブレナンが、チャンスを活かしてその才能を開花させた。ブレナンがこの日もキーとなることは確実だ。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

パレニとフェルナンデスが先行した

レースが始まると、グルパマ・FDJユナイテッドのエンゾ・パレニ(フランス)、ウノエックス・モビリティのフレドリク・ドゥヴァーシュネス(ノルウェー)、ブルゴス・ブルペレット・BHのシヌヘ・フェルナンデス(スペイン)の3人が集団から素早く飛び出した。3人とも逃げの常連だが、ドゥヴァーシュネスはすぐに脱落し、パレニとフェルナンデスの2人旅となった。

18km地点でメイン集団との差は4分30秒に広がったものの、チーム ヴィスマ・リースアバイクがペースメークを始めると縮まっていく。チームが7回目のステージ優勝を果たせば、UAEチームエミレーツ・XRGが2025年に達成した記録に並ぶことになる。今大会でこれまで4勝しているブレナンがゴールスプリント勝負に挑む作戦で、グランツール初出場でステージ5勝を達成すれば1979年にフォンス・デ・ウルフがこの大会で達成して以来の記録となる。

最後まで自分を信じたパレニも残り3kmで捕まる

先頭を交代で務めるパレニはこの日、集団にとどまって大きな集団が抜け出すかどうか様子を見るつもりだったという。わずか2人という少人数の先行は必ずしも計画通りではなかった。

「結局、僕たち3人だけになって、ウノエックス・モビリティの選手がすぐに遅れたから、最終的には僕たち2人だけになった。状況をうまくコントロールしなければならなかった。まるでトレーニングのように2人で走ったんだ」とパレニがこのときの心境を回想する。

第8ステージで1勝しているブライアン・コカール(フランス)を勝たせるためにコフィディスがメイン集団のペースメーカーを引き継ぐ。タイム差は3分から3分半で安定するが、ステージ中盤で集団のペースが落ちる。パレニとフェルナンデスはここから5分10秒とリードを挽回し、残り90kmに入る。

「最後の1時間まではゆっくり走って、最後は全力を尽くして集団から逃げようと考えていた。レース中盤で集団が少しペースを落としたおかげでプラス2分もタイムを稼げたし、それが本当に僕たちにとって有利に働いたんだ」(パレニ)

ブエルタ・ア・エスパーニャ

遮るものは何もない広大な大地

たまらずチーム ヴィスマ・リースアバイクのステフェン・クライスヴァイク(オランダ)がメイン集団の先頭に立ち、タイム差を再び着実に縮めていく。さらにレッドブル・ボーラ・ハンスグローエが残り50kmでペースを上げると、緊張感が高まる。集団は風の影響で一時的に分裂するが、すぐに落ち着きを取り戻す。チーム ヴィスマ・リースアバイクとコフィディスが先頭集団に復帰する。

強風の中を長時間走り続けたフェルナンデスは疲れ果て、残り20km地点でパレニが単独走行となった。パレニは必死に抵抗するが、結局残り3km地点で追いつかれてしまう。

「最後は一人で走った。少し長く感じたが、グランツールでの勝利は努力して勝ち取るものなので、最後まで戦い抜かなければならない。ゴールまで3kmのところで捕まってしまったけど、そういうことはよくあること」とゴール後のパレニ。
「でも、楽しかった。いつか必ずうまくいくと確信している。自分が信じなければ、誰も私を信じてくれない。私は常にそれを信じ、成功の可能性を最大限に高めるための最適な戦略を練ろうとこれからも努力していきたい」

ステージ優勝の行方は予想通りに最後の集団スプリント争いとなった。ウノエックス・モビリティが大会通算6勝の実績を持つマグナス・コルト(デンマーク)のために集団の主導権を握る。しかしブレナンが最後に中央から抜け出し、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのヨルディ・メーウス(ベルギー)を抑えて今大会5勝目の快挙。コルトは3位だった。

「今朝、2024年のセビリアでのスプリントについて、2位になっていたファンアールトにどんな状況だったのか話し合ったんだ。今日はそれを繰り返したくなかった。一番にゴールしたかったし、実際にそうできた。ファンアールトはずっと私のそばにいてくれた。素晴らしい光景で、彼のサポートにとても感謝している」と、2年前のファンアールトの雪辱を果たしたブレナン。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

グアダルキビル川のほとり、黄金の塔を横切りながらスプリント勝負

「ここで勝てて最高だ。大会も終盤に差し掛かったけど、今日もチャンスがあることは分かっていた。チームは全力を尽くしてくれた。このチャンスを最大限に活かすために、できる限りのことをした。これでチームは7勝目。グランツールでチームとしてこれほど多くの勝利を挙げたのは初めて。自分自身のステージ5勝も信じられない。しかもまだ21ステージ目も終わっていない! 本当に素晴らしい。僕は楽な役割を担っているような気がする。チームメイトは一日中一生懸命頑張ってくれている。本当に感謝してやまない」

勝利の立役者となったファンアールト自身も今大会2勝し、ポイント賞でもトップに君臨する。

「ミーティングでは、前回のセビリアで2位になった経験があるから最後の直線について詳しく話すことができた。でも、今回のスプリントは全く違う展開だったと思う。計算していたようなリードアウトはできなかった。その前に何度かアタックを仕掛けなければならず、私ができたのはブレナンをスプリントしやすい位置につけることだけだった」とファンアールト。

翌日は個人タイムトライアルで、チームにはこの種目を得意とするブリュノ・アルミライユ(フランス)がいる。ここ2年ほどはタイムトライアルに力を入れていなかったファンアールト自身も、モナコでの開幕戦のタイムトライアルをきっかけに少し意識するようになった。チームとして8度目のステージ優勝を果たす可能性がある。

「長いタイムトライアルだから、どうなるかは分からない。僕とブリュノならチャンスはあるかもしれない。調子が良いので挑戦してみたいと思っている。でも、チームにとってグランツールでの7度目の勝利はすでに歴史に残る偉業だ。その功績を心から誇りに思っている」(ファンアールト)

マスは2分以上の貯金で個人タイムトライアルへ

総合成績の上位選手はトップと同タイムの大集団の中でゴールしたので、総合優勝候補のタイム差は変わらず。デカトロン・CMA CGM チームのフェリックス・ガル(オーストリア)が2分06秒遅れの2位、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)が2分10秒遅れの3位だ。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

激しい横風に晒されても集団は分断することを避けた

翌日は2回目のタイムトライアル。選手たちはカディスの海岸線からスタートするが、風が重要な役割を果たす可能性がある。有力選手間の実力差が明らかになる日となるだろう。

「調子はいい。昨日と今日は完璧な仕事ができたと思う。明日、明後日、そしてその次の日を見据えなければならない。自信はある。明日のタイムトライアルはかなり平坦で、コーナーは多くない。パワーとポジションに集中すればいい。マイヨ・ロホを守り抜くことが目標だ」とマス。

モナコで行なわれた第1ステージの個人タイムトライアルは距離9.4kmで、ログリッチが24位。クライマーのマスとガルはタイムトライアルを得意としていないので、マスはログリッチから11秒遅れの50位、ガルは24秒遅れの91位だった。この実力差を単純に適用すれば、マスはログリッチに差を詰められるものの、これまでの貯金を利して首位を堅持。ガルはログリッチに逆転されて総合2位に落ちることが予測される。

バーレーン・ヴィクトリアスのサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア)は、第17ステージを無事にゴールして、引き続き山岳賞ジャージを手にしている。
「これまで厳しいステージを乗り越えて、いわば少し楽な日々を迎えるわけだが、それでも集団には常に多少のストレスや緊張感が漂っている。最終週になると選手たちは少し疲れてきて、風による緊張感も高まっていた。こうして無事にセビリアに到着できてよかった。明日は私のキャリアで初めて、無理せず、一日を楽しみ、週末の非常に興味深いレースに向けて脚を温存できるタイムトライアルになると思う」と、得意とする第19、20ステージの山岳区間を見据える。

ヤングライダー賞もネットカンパニー・イネオスのオスカー・オンリー(英国)が守った。
「タイムトライアルが大好きだったとは言えないけど、それが私のサイクリング人生の最初のきっかけだった。だから、タイムトライアルについてはよく知っている。その過程全体は好きだが、得意分野ではない。明日のコースについてはあまり詳しく知らない。明日の朝、下見をするつもり。かなり平坦なコースで、ポジションに長時間留まることになりそうだ。タイムトライアルは総合順位に差を生むもので、距離が32kmもあるので、選手間の差はかなり大きくなると思う」と警戒する。

タイムトライアルの翌日にはゴールまで標高差1200mを駆け上がる第19ステージがあり、さらに過酷な山岳コースで行なわれる第20ステージが待ち構える。全23日間で争われるグランツールだけに、最終到着地にだれが最も少ない所要時間で到達するかで王者が決する。だからこれからの3連続ステージのどれも必見!

文:山口和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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