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サイクルロードレース コラム 2026年9月9日

ブレナン圧巻の4勝目。ヴィスマの徹底した仕事と、ファンアールトの完璧な発射台をつなぐ|ブエルタ・ア・エスパーニャ2026 レースレポート:第16ステージ

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ブエルタ・ア・エスパーニャ

グランツール初出場で区間4勝目、マシュー・ブレナン

生まれて初めてのグランツール、初めての3週目。約1か月前に21歳の誕生日を祝い、ほんの2週間前に初の区間勝利に歓喜したばかりのマシュー・ブレナンが、圧巻のスプリントで4勝目をもぎ取った。前日の休息日に記録への挑戦を誓ったというヴィスマ・リースアバイクが、チーム全員でつかんだ一勝だった。

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「信じられない気分だ。これで4勝目。そもそもの目標は1勝だったのに。そして、チームとしては……これで6勝目かな。数えきれれないよ。いくつか分からなくなったほど、たくさん勝ったんだ」(ブレナン)

風の中で、黙々と。ヴィスマがすべての仕事を背負う

表面上は、動きの少ないステージだった。2度目の休息日を終え、大会3週目へと走り出したプロトンから元気よく5人が飛び出すと、その後はレース最後の30分まで、特筆すべき動きはほぼ見られなかった。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

5人の先頭グループが山火事の傷跡残る場所を走り抜ける

無風だったわけではない。タイム差が3分に広がる前に、ヴィスマ・リース・ア・バイクが素早く集団制御に乗り出した。すでに2人が大会を去り、チームの人数を6人に減らしながらも、そのうちの3人をメイン集団の最前列に配置。第8ステージ勝者のブライアン・コカール(コフィディス)が「あえて彼らにすべての仕事を押し付けた」と語ったように、すでにブレナンで3勝を挙げていた最強スプリント隊列に、協力するチームは現れなかった。

風はむしろ強かった。摂氏40度を超えた休息日前日ほどの暑さに見舞われなかったのは幸いだったが、ステージ前半の大部分は横風の中。終盤に入ると、今度は向かい風との戦いに変わった。ヴィスマの黄色い戦隊は、ひたすら計画の達成を目指し、アンダルシアの乾いた大地で黙々と集団を引き続けた。

残り23.5km。逃げの5人を、静かに吸収した。

「お家で観戦していた人なら、今日1日中、チームのみんなが風の中でどれほど力を尽くし、仕事をやり遂げてくれたのかが見て取れたと思う」(ブレナン)

風が生んだ小さな攻防。それでもヴィスマは主導権を譲らない

吸収とほぼ同時だった。総合3位プリモシュ・ログリッチを擁するレッドブル・ボーラ・ハンスグローエが、全員で隊列を組んで前線へと駆け上る。この日、唯一とも言える、短い「追い風気味の横風」区間を利用した企みだ。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

アンダルシアの乾いた大地で黙々と集団を引き続けるヴィスマ

ライバルたちは冷静だった。マイヨ・ロホのエンリク・マスをすでに8日間支えてきたモビスターは、ぴたりと背後につき、決して遅れを取らない。ピニョン松の立ち並ぶ防砂林を貫く一本道を吹き抜ける風にも、どうやら分断を生み出すほどの威力はなかった。

最終的に総合上位勢は、全員が無事に休息日明けの1日を切り抜けた。ステージの終わりに、順位にもタイムにも一切の変動はなかった。

そして再び、向かい風の中へ。見えない壁に押し込められたような緊迫感が、じわじわと集団内に満ちていく。それでもヴィスマは着々と作業を続けた。これまでの3人に代わり、ヒルクライマーのセップ・クスが、先頭で力を尽くした。

主導権をむしり取ろうと、いくつかのチームは果敢にスピードを上げた。一時は落車による分断で後方に沈みながらも、絶妙のタイミングでマグナス・コルトを前に連れ戻したウノエックス・モビリティは、巨体を武器に最前列へと駆け上がる。また北クラシック精鋭軍で名高いスーダル・クイックステップは、ピュアクライマーを鉄砲玉に使って、ラスト1km手前のコーナーに最前列で突っ込んでいく。

最強の2人。ワウトが道を開き、ブレナンが決める

しかし最終ストレートに入った直後、ワウト・ファンアールトがカオスを切り裂いた。脇目も振らず、まっすぐに先頭へと進み出る。路面が石畳に変わろうとも、パリ〜ルーベ現役王者はびくともしない。

先手を打てるライバルなどいなかった。向かい風が強かった。コカールがそうだったように、「石畳に苦戦した」選手もいたのかもしれない。なにより、ファンアールトのスピードが凄まじかった。誰一人として、横に並ばせない。マイヨ・ベルデは毅然と突き進む。後輪に、大切なスプリントリーダーを引き連れて。

最初の2勝で最終発射台を務めたクリストフ・ラポルトは、第14ステージで途中リタイアし、不在だった。つまり、3勝目を挙げた第11ステージと同じく、ファンアールトこそが最後の1人だった。

「ワウトを心から信頼して、彼の後ろについていった。あれほど混沌としたレースの中で、あれほど完璧な位置まで導いてくれたなんて、信じられないほどすごいこと」(ブレナン)

ブエルタ・ア・エスパーニャ

おめかししてプロトンを迎えたコルテガナ

その頼もしい背中にじっと潜んでいたブレナンは、ぎりぎり残り150mまで待つと、トップスピードに切り替えた。あとはそのまま、フィニッシュラインまでまっしぐら。まさにアンタッチャブル。勢いよく突き上げた右手は、はっきりと「4」の字を示していた。

チーム史上最多タイ6勝の……その先へ

21歳の若さでのブエルタ区間4勝は、1936年大会のビセンテ・カレテロ以来の快挙。グランツール初出場で4勝をさらったのも、2017年ジロのフェルナンド・ガビリア以来となる。

しかも翌日の第17ステージには、再びスプリントフィニッシュのチャンスが待っている。1976年ツールでフレディ・マルテンスが成し遂げたグランツールデビューで区間8勝というクレイジーすぎる記録には程遠いとしても、ブレナンに5勝目は十分に射程圏内のはず。

またファンアールトの2勝と合わせ、ヴィスマは今大会の区間勝利数を6に延ばした。

創設1年目の1984年に早くもグランツール区間初勝利を挙げた同チームは、1988年と2022年のツールでそれぞれ区間6勝ずつ積み上げている。この春のジロ・デ・イタリアでは、改めてチーム史上最多タイとなる区間6勝(ヴィンゲゴー5、クス1)を実現した。

だからこそプロ入り以来17年間変わらずこのチームに尽くし、今季末限りでの引退が決まっている39歳ステフェン・クライスヴァイクにとって、7勝目は、悲願でもある。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

クライスヴァイクに感謝を伝えるブレナン

「昨日の休息日にみんなで話したんだ。僕らはひとつのグランツールで6勝を超える勝利を挙げたことがない。だから明日は挑戦だ。この挑戦を僕らは受け入れ、勝ちに行く」(クライスヴァイク)

ちなみに2026年の3つのグランツールにおける区間最多勝利は、これにてUAEチームエミレーツ・XRG(ジロ4、ツール6、ブエルタ3)とヴィスマ(ジロ6、ツール1、ブエルタ6)が13勝で並んだ。ご存知、総合優勝も1つずつで肩を並べるライバル同士の接戦は、最後まで目が離せそうにない。

そしてファンアールトは、発射台の任務を終えたあとも、脚を緩めなかった。ハンドルを投げ、区間6位入賞。ポイントをさらに積み上げ、2位には早くも100ポイント近い差を有している。……そもそも、その2位は、チームメイトのブレナンなのだ。最終日まで残り5日。マイヨ・ベルデ争いにおいて、ヴィスマは極めて快適なポジションにつけている。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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