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サイクルロードレース コラム 2026年9月5日

驚異のフィジカルを生かしたクレバーさ ワウト・ファンアールトが展開を読み切って今大会初勝利!|ブエルタ・ア・エスパーニャ2026 レースレポート:第13ステージ

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ブエルタ・ア・エスパーニャ

ファンアールトが今大会初勝利

優れたフィジカルを生かすために、クレバーに立ち回る。ワウト・ファンアールトチーム ヴィスマ・リースアバイク)は、最大で40人まで膨らんだ先頭グループに乗り込むと、チームメートのマシュー・ブレナンとのコンビネーションを披露。終盤にかけては2人で揺さぶりを駆けながら、短い上りでみずから決定打を放つ。最後はヴァランタン・パレパントル(スーダル・クイックステップ)とのマッチアップを制して、今大会初勝利を挙げた。

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「この大会は平坦ステージが少ないけど、その分アグレッシブなレース展開が多くなるのは分かっていたんだ。その方が僕たちに合っていると感じていたし、今日のコースこそ力を発揮できるんじゃないかと思っていたんだ。イメージしていた通りになったよ」(ワウト)

アタックの応酬からヴィスマ勢が有利な展開に

前日に秀峰カラル・アルトを上ったプロトンは、舞台を変えてアンダルシアの広大な大地を進む。中級山岳コースにカテゴライズされる192.8kmのルートは、序盤に2つのカテゴリー山岳をこなし、その後も緩やかな上りを進む。2級山岳を越えたのちに中間地点を過ぎると、そこからは細かなアップダウンを含みつつもおおむね下り基調。フィニッシュ前36kmでこの日最後の山岳ポイントになる2級の上りを越えて、あとは目的地のロハへと突き進んでいく。「逃げ向き」とのスタート前の予想通りに、レースは展開していくことになる。

スタートアタックで4人が飛び出し一時は40秒差をつけたが、山岳区間に入ったところで集団へと引き戻される。いくつかの出入りがあった流れから、今度は27人が集団からの抜け出しに成功。この間に1級山岳の頂上に達して、ワウトが1位通過。山岳賞で首位に立つサンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)も隙を見せることなく2位で続く。少しずつ、この2人によるマイヨ・デ・ルナレス争いの形が明確になっていっている。

彼らの後ろでは、まだまだ集団からの飛び出しが続いている。いつしか40人超に膨らんだ先頭グループは、この状況を嫌う選手たちが再びのアタック。10人になったり、かと思えば3人になっていたり。先頭を走る選手の人数がめまぐるしく変わったが、スタートから70kmを過ぎたところで11人のパックに落ち着く。おおよそ1分30秒差で第2グループが続き、個人総合上位陣が待機するメイン集団は4分近い差で進んでいく。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

先頭集団の壮絶な追いかけっこ

途中、先頭グループでアクセル・ローランス(ネットカンパニー・イネオス)が落車し脱落するが、形勢が大きく変わることはなくコース中盤をクリア。変化は、フィニッシュまで40kmを残したところでのケヴィン・ヴェルマーク(UAEチームエミレーツ・XRG)のアタックがきっかけになった。

タイミングを同じくして、第2グループに位置していたワウトがヤルノ・ウィダー(ロット・アンテルマルシェ)らとともに先頭グループへのブリッジを図る。アタックが散発している中で合流に成功し、そのままペースアップに応戦。やはりワウトが動くと他選手もすぐにチェックに走る。すると、次はチームメートのブレナンがカウンターで仕掛けて、また他選手が対応を急ぐ。

「僕もマシューも勝つチャンスが大きくなっていた。同時に、僕たちは互いのために犠牲になる覚悟もできていた。とにかくどちらかが勝てれば良かったから、攻撃し続けたんだ」(ワウト)

数的にも優位となり、ワウトとブレナンがステージ優勝争いの主導権を握った。

勝利につなげた“頭脳”

下り基調の道を行く終盤戦。先頭グループはときに時速70kmを超えるようなハイスピードで進む。いくつものアタックはなかなか決定打とはならず、10人がまとまったままフィニッシュまで10kmを切った。

大きな局面は残り3.5kmでやってきた。ブレナンが他選手のチェックに入ったのを見て、ワウトがカウンターでアタック。短い上りで踏み込むと、後ろについたのはパレパントルひとり。さらに数人が続こうと動いたが、ワウトのパワーについていくことができなかった。

「決めきるならこの場所かな……とは思っていた。あのくらいの残り距離は、どうしてもスプリント勝負を意識してしまうタイミングなんだ。だから、タイム差を付けられれば、後ろは牽制するんじゃないかと思ったんだ。フィニッシュまで逃げるにも十分な距離で、うまくやる自信もあったよ」(ワウト)

展開の作り方は、さながらクラシックレースのよう。パレパントルとのマッチアップに持ち込んだワウト、あとはきっちりクローズさせるのみである。前に立ってライバルの動きを制すると、最後の200mでスプリント。スピードの差を見せつけて、今大会最初のステージ優勝の瞬間を迎えた。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

白壁の村が点在するスペイン南部の風景

「やるべきことが多くて毎日が楽しいんだ。ポイント賞だけじゃなく、山岳賞もチャンスがある。毎日逃げているうちに、今日みたいに勝つチャンスもめぐってきた。すぐにでも家族に“勝ったよ!”と伝えたいよ」(ワウト)

レース前半で先頭グループがシャッフルした際は、意識的にブレナンを前に送り出し、みずからは次の大きな動きに備えて脚を残す判断をしていたという。

「あの状況で無駄なエネルギーを使わずに済んだのは大きかった。どちらかが先頭にいれば、最後はスプリントで勝つことができる。僕たちには最高の武器があるんだ。ブリッジしたタイミングもパーフェクトだったし、何よりも冷静だった。勝てるとは思っていたけど、思い通りにいかない場合にどうするべきかの想定もできていたよ」(ワウト)

怪我の影響でツール・ド・フランスを走ることはできなかったが、コンディションを戻してブエルタで好走を続ける。今大会後に待つロード世界選手権も視野に入っていて、スペインでの3週間は自信を確信に変えるための日々でもある。

「この勝利でかなり気持ちは高まったね。今日のような厳しいコースで勝てたことは、世界選手権へ確実につなげることができる。もちろんブエルタにも集中するよ。もっと勝てると良いね」(ワウト)

絶好調だったのに落車ですべてが台無しになった2年前の悔しさは忘れてはいない。自身に課すミッションのひとつであるマイヨ・ベルデは、このステージ優勝によって一層有利なものになった。

マスはマイヨ・ロホをキープ 第14ステージは南峰パンデラへ

“別のレース”になったメイン集団は、前を無理に追うことはせず安全策。リーダーチームのモビスター チームがコントロールして、そのままステージをクローズさせた。結果的に、ワウトから3分差でフィニッシュへと到達。個人総合上位陣は、同9位でスタートしたグレゴール・ミュールベルガー(デカトロン・CMA CGM チーム)が落車リタイアしたほかは、同グループで走り終えている。

マイヨ・ロホは引き続きエンリク・マス(モビスター チーム)が着用する。日々の安定度は増していく一方。次、第14ステージでは南スペインの南峰パンデラを上るが、いかにして攻略を図るだろうか。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

オリーブ畑が続く道を進むメイン集団

「2022年のブエルタで走ったときは負けてしまって、総合タイム差を広げられてしまったんだ。ただ、悪い印象ばかりではないよ。今度はうまく走れると良いね。そう簡単にリードを拡大できる上りではないので、まずはいまあるタイム差を守ることを考えたい。まだまだステージが残されているし、エネルギーを温存しておかないといけないからね」(マス)

第13ステージでは気温が40度まで上がっていたとの情報も。その暑さはまだまだ続く見通しで、パンデラは酷暑のクライミングとなる可能性が高い。

「あまりに暑かったら対応を考えないといけないね。レースをやるべきなのかどうか、話し合う必要があるかもしれない。本来なら、こんな中でサイクリングはするべきじゃないからね」(マス)

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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