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すべては2019ブエルタから始まった。7年前、ポガチャルのグランツール・デビュー再録|ブエルタ・ア・エスパーニャ2026
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸ポガチャルが2019ブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージで3勝目
ツール・ド・フランスに7回出場して総合優勝5回と2位2回。ジロ・デ・イタリアは唯一参戦の2024年に制覇。UAEチームエミレーツ・XRGのタデイ・ポガチャル(スロベニア)がグランツール全制覇に向けて2度目のブエルタ・ア・エスパーニャを走り出した。2019年、20歳で初のグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャに出場し、総合3位という「過去最悪の成績」を残す。今大会の第4ステージ、アンドラはそんなポガチャルが初勝利した思い出の場所だ。
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2019シーズンはグランツールを走らない予定だった
ツール・ド・フランスで歴代最多タイとなる5度の総合優勝(2020年、2021年、2024年、2025年、2026年)、2度の総合2位(2022年、2023年)、ジロ・デ・イタリアで総合優勝(2024年)を果たしたポガチャルだが、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝は果たせていない。27歳となった2026年、2019年以来7年ぶり2度目のブエルタ・ア・エスパーニャへ。10度目となるグランツール出場だが、このスペイン一周レースこそ、ポガチャルの出発点となったのは間違いない。
2018年に「アマチュア部門のツール・ド・フランス」と呼ばれるツール・ド・ラヴニールを制して、すでにその将来性を見出されていたポガチャルではあるが、プロ転向の2019年にグランツールに出場する予定はなかった。チームの育成計画では、ワンシーズンをつつがなく走り、2020年に本人の希望も加味してジロ・デ・イタリアかブエルタ・ア・エスパーニャへ。2021年にツール・ド・フランスを経験して、2022年に本格的に挑戦するというイメージだった。
ところが2019年のツール・オブ・カリフォルニアを制覇してしまったことでそのプロセスが加速した。宇宙人の片鱗が明るみになったからである。2019年に初めてのグランツールとしてブエルタ・ア・エスパーニャに出場することになった。当時のUAEエミレーツは2015年の総合優勝者ファビオ・アル(イタリア)がエースで、ポガチャルはナンバーカード177番のアシスト。アレハンドロ・バルベルデとナイロ・キンタナを加えた過去大会の覇者3選手が優勝候補だった。
2019ブエルタ・ア・エスパーニャのポガチャル(左)とログリッチ
初日からUAEエミレーツチームは苦戦した。好調のバルベルデとキンタナに対してアルが早々と優勝争いから脱落。一方、ポガチャルの先輩格であるスロベニアのプリモシュ・ログリッチ(当時ユンボ・ビスマ)がここで頭角を現してきた。ログリッチはこの年のジロ・デ・イタリアで総合3位に食い込んだが、グランツールではまだ優勝したことのない選手だった。
2019年のアンドラでグランツール初勝利
ところで2019ブエルタ・ア・エスパーニャは他の2つのグランツールにならって、ヤングライダー賞が新設定され、純白のリーダージャージが提供されるようになった。この賞を争ったのがアスタナのミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)とポガチャルだ。大会初日からロペスがホワイトジャージを獲得していたが、第5ステージでロペスが首位に躍り出て、ポガチャルは第6ステージでホワイトジャージを代理で着用することになった。
第7ステージで世界チャンピオンのアルカンシエルを着たバルベルデが過酷な山岳でアタックし、ポガチャルは51秒遅れでゴール。バルベルデは最年長、ポガチャルは最年少だった。ここからポガチャル時代が始まる。アンドラのコルタルス・デンカンプにゴールする第9ステージでポガチャルはグランツール初ステージ優勝を果たすことになる。
ピレネー山中の小国アンドラで開催されたレースは雷雨に見舞われる厳しい闘いとなったが、ポガチャルが有力選手の集団から抜け出して、まずはグランツール初優勝を挙げた。
「天気予報で雨が降ると聞いてこのステージをねらっていた。自分にとってはそれがチャンスで、計画通りに勝利をつかむことができてうれしい」とポガチャル。
2019ブエルタ・ア・エスパーニャ最終ステージ
総合成績争いでは首位のロペスが総合成績のライバル選手を置き去りにする走りを見せたが、未舗装区間で落車。最終的に1分01秒も遅れを取ってしまい首位を陥落。ポガチャルから23秒遅れの区間2位に入ったキンタナが首位に立った。そんな思い出のアンドラに今年の大会の4日目にポガチャルは再訪する。
第10ステージの個人タイムトライアルではログリッチが大会初勝利を挙げ、ここで首位に。そして第13ステージで世界の勢力図を変えるようなレースが演じられた。峠の頂上にゴールが設定されている難関区間でポガチャルと首位のログリッチのスロベニア勢が抜け出し、最後はポガチャルが先着して、第9ステージに続く2勝目を挙げた。
「この日はリタイアすることなく生き残ろうと思っていた。まさか最後にこんな調子がよくなるなんて思わなかった」とメジャー初出場にして2勝目を挙げたポガチャル。総合成績で前日の5位から3位に浮上。さらにヤングライダー賞でロペスを逆転してトップに躍り出て純白のリーダージャージを獲得した。
2019総合優勝のログリッチを中央に左が2位バルベルデ、右が3位とヤングライダー賞を獲得したポガチャル
タイム差なしの2位になったログリッチはライバル選手との差をさらに広げ、初の総合優勝に前進した。
「ログリッチはとても強い。だから最終日のマドリードで彼の横にヤングライダー賞ジャージを着て登壇できたらうれしい」(ポガチャル)
欧州ロードシーンにスロベニア旋風が到来
ヤングライダー賞に関して言えば第18ステージでポガチャルからロペスにジャージが移るのだが、第20ステージですべてが決した。大会最後の山岳ステージでポガチャルが独走を決めて、第9、13ステージに続く今大会3勝目を挙げた。ポガチャルは総合成績でも再び5位から3位に浮上するとともに、ヤングライダー賞でも1位を奪還した。
総合成績ではログリッチが堅実な走りを見せ、前日までの貯金を守ってゴール。全23日間の大会は残り1日となり、同国選手として初の総合優勝を確実にした。
「多くのスロベニアファンがボクに声援を送ってくれた」とポガチャル。
「スタート後は積極的に行けるとは思えなかったが、みんなが冷たい雨に苦戦しているのを見てアタックした。区間3勝を挙げ、最終日の表彰台にスゴい選手たちと立てるなんて夢のようだ」
2019ブエルタ・ア・エスパーニャでヤングライダー賞を獲得したポガチャル
最終的にログリッチがスロベニア選手として初めての総合優勝を達成した。2分33秒遅れの総合2位はバルベルデ。同3位はポガチャルでヤングライダー賞も獲得した。
「もう1人のスロベニア選手が一緒に表彰台に上ることができた。ボクたちの歴史は書き始めたばかりで、ボクがレースをやめるころにどんな歴史が積み重ねているか楽しみだ」と、2019年9月15日にログリッチは語っている。
あれから7年後、最終到着地のグラナダでだれがどんなコメントを語るだろうか?
文:山口和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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