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サイクルロードレース コラム 2026年8月20日

国際化が進むプロトン 勢力図の大きな変化がスペインでの3週間でより顕著になるか|ブエルタ・ア・エスパーニャ2026

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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近年は自転車強豪ではない国の選手が台頭してきている

2026年のサイクルロードレースシーズン最後のグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャはいまのプロトンを表す3週間になるかもしれない。というのも、7月に行われたツール・ド・フランスでは、開催国フランスのほか、イタリア、スペインのサイクルロードレース大国が1勝も挙げられないという史上初の事態が起こっていたのだ。この3国はグランツール開催国でもあり、これまでレースシーンにおいて大きな存在感を誇示してきた。そんな彼らが勢いに乗り切れないままツールを終えてしまったことに、世界中が驚きを覚えている。ブエルタはサイクリング大国にとって復権の機会となるのか。彼らが苦戦する要因と合わせて、現況を分析してみる。

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ツールでは勝利者の国籍が分散

今年のツールで起こった、フランス・イタリア・スペインのライダーたちが1勝も挙げられなかったという事実は、これまで302回開催されてきたグランツールにおいても初めての出来事だった。

開催国フランスでは、ポール・セクサス(デカトロン・CMA CGM チーム)が総合表彰台を目指し奮闘していたこともあり、現場の注目度は彼に集中していた。一方でステージ優勝はゼロのまま進行し、最後の最後まで勝つ選手は現れず。現地取材を行った者からすると、この事実はセクサスの走りの陰に隠れていた……という印象である。

イタリア勢は、2025年大会でジョナタン・ミランリドル・トレック)が2勝を挙げてポイント賞のマイヨ・ヴェールを獲得したが、今年は未勝利。世界ナンバーワンスプリンターに挙げられ、勝ちを計算できるミランがジロに回ったこともツールの結果に影響したと見られている。

さらに厳しい状勢にあるのが、スペイン勢である。2023年にカルロス・ロドリゲスネットカンパニー・イネオス)が勝って以来、ツールでウイニングセレブレーションを演じた選手は現れていない。今年の大会ではパブロ・カストリーリョやハビエル・ロモらモビスター チーム勢が繰り返し逃げにトライをしたが、勝利には届かなかった。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

さまざまな国籍の選手が混在するプロトン

ツール2026で、この3つの国に代わって勝利を挙げたのは以下の8カ国(国名横の数字は合計勝利数)。

スロベニア 6(タデイ・ポガチャルの個人総合優勝も含む)
ベルギー 6
オランダ 3
エクアドル 2
メキシコ 1
デンマーク 1
ノルウェー 1
スイス 1

ベルギー、オランダといった前記3国と同等レベルのサイクリング強国も含まれてはいるが、これら多くの国のライダーたちに勝利が分散したあたり、現地ではプロトンの国際化の進行が大きく影響しているとの見方が強い。

また、この大会では27カ国からライダーがスタートラインについたが、そのうち最大勢力はベルギーの31選手。2番手がフランスの30選手だった。オランダ17選手と続き、イタリアがドイツと並ぶ12選手。スペインは11選手だった。フランス、イタリア、スペインはいずれも勢力としては大きかったが、これだけの国から猛者が集まっている中で1つの勝利を挙げるというのは、やはり難しくなっているというのが実情のようだ。

いま最も勢いのある国は?

国際化というところでもう少し深掘りを。いま勢いのある国はどこなのか。本記では今シーズンのUCIワールドツアーにおける勝利数をもとに見ていくことにする。

ブエルタ2026開幕2日前時点でのUCIワールドツアー勝利数上位10選手は以下の通り(選手名横の数字は勝利数)。

タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG、スロベニア)19
ヨナス・ヴィンゲゴーハンセンチーム ヴィスマ・リースアバイク、デンマーク)12
イサーク・デルトロ(UAEチームエミレーツ・XRG、メキシコ)9
ジョナタン・ミラン(リドル・トレック、イタリア)9
マチュー・ファンデルプールアルペシン・プレミアテック、オランダ)6
ポール・セクサス(デカトロン・CMA CGM チーム、フランス)5
レムコ・エヴェネプールレッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、ベルギー)5
ドリアン・ゴドン(ネットカンパニー・イネオス、フランス)5
ポール・マニエ(スーダル・クイックステップ、フランス)4
ジョナタン・ナルバエス(UAEチームエミレーツ・XRG、エクアドル)4

ブエルタ・ア・エスパーニャ

スペインのグランツールでスペイン人は勝てるだろうか?

ポガチャルの勝利数が群を抜いているところはあるにせよ、こうして見てみると、世界最高峰の戦いで勝つ選手たちの国は分散している印象。特定の国の選手たちが飛びぬけて勢いづいているわけではないことがおおよそ分かる。

そうしたなかでも、フランス勢が3選手トップ10入り。先のツールにはセクサスとゴドンが出場しており、セクサスは総合争いにフォーカス、ゴドンは大会途中で落車負傷。また、マニエはジロで大活躍し、ツールは回避。それぞれに事情があった。

イタリア勢では、ミランがひとり気を吐いている。こちらも今年のツールは回避していた。トップ10圏外まで視野を広げて、ミランに続く選手としてはフィリッポ・ガンナ(ネットカンパニー・イネオス)が3勝、あとは数選手が1勝ずつ挙げている。

スペイン勢にいたっては、イゴール・アリエタ(UAEチームエミレーツ・XRG)とアレックス・アランブル(コフィディス)の1勝ずつにとどまっている。

これらの事象が、ツールの勝利者の幅につながった一端として見ることができそう。同時に、3つのサイクリング大国が苦戦をした要因になったと言えるだろう。

スペインから30選手が参戦見込みのブエルタ 威信をかけた戦いに

ブエルタはどうなるだろうか。

本記執筆時点ではまだ全出場選手が確定していないが、開催地スペインから30選手が参戦する見通しになっている。続くのがフランスの22選手、ベルギーの19選手。イタリアは13選手が臨む見込みだ。

今大会参戦ライダーで最も注目が集まるポガチャル、4度の個人総合優勝を誇るプリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)を擁するスロベニアからは7選手。ちなみに、ポガチャルとログリッチは現役ライダーの通算勝利数(UCI1クラス以上、国内選手権優勝も含む)でワン・ツーを占めていて、それぞれ127勝と92勝を挙げている。両者がこのブエルタで勝利数を伸ばす可能性は高く、地元スペイン勢らに立ちはだかる存在となるだろう。

ブエルタ2026は、サイクリング大国が威信を示すか、または進む国際化をより明確とするのか、この先のプロトンのあり方にもつながっていく重要な大会になる。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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