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サイクルロードレース コラム 2026年7月16日

そこに見えるのはUAEチームエミレーツ・XRGの背中だけ 圧倒的なチーム力にライバルは何を思うか|ツール・ド・フランス2026

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ツール・ド・フランス

5度目のツール・ド・フランス制覇へ、タデイ・ポガチャル

5度目のツール・ド・フランス制覇へ。タデイ・ポガチャルUAEチームエミレーツ・XRG)の道のりに、障壁は今のところ存在していない。彼の進む道をクリアしにしているUAEのアシスト陣の働きもまた、このツールにおいては圧倒的だ。穴のないチーム力に、ライバル選手やチームは何を思うのだろうか。ただただ悔しさに唇を噛み続けるのか、トライ・アンド・エラーを繰り返しながらチャンスをうかがうのか。プロトンの声は果たして。

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「もうちょっと違ったレースができないか」

マチュー・ファンデルプールアルペシン・プレミアテック)が勝った第9ステージ。結果的に逃げ切りが決まったけれど、レース中盤から後半にかけてリーダーチームのUAEがメイン集団のペーシングを担い、徐々にマチューら先頭グループとの差を縮めていった。先頭には、マイヨ・ジョーヌを着るポガチャルにとって個人総合争いの脅威となる選手は含まれていなかった。グランツールにおけるレース展開で考えれば、追わずともステージをクローズさせても良かったはず。やがて数チームが集団牽引に加わったことも関係し、マチューらは逃げ切ったとはいえタイム差は6秒まで縮まっていた。

ポガチャルが会心の走りを見せた第10ステージでも、UAEは逃げる選手たちに確たるリードを持たせなかった。広がっても、その差は1分程度。ティム・ウェレンスやフロリアン・フェルミールス、ニルス・ポリッツのペーシングは、いまや今大会おなじみの光景に。彼らが好況を作り出すと、次は フェリックス・グロスシャートナーやアダム・イェーツが山岳での牽引。ポガチャルとイサーク・デルトロが上位進出できる下地づくりはここまで完璧だ。

彼らのレース構築に、「なぜだ?」「他チームにチャンスを与えても良いのではないか」といった声が現場からは聞こえている。実情として、平坦ステージ以外はUAEのつくるレースに誰も太刀打ちができず、ひたすら苦しめられているだけなのである。

このプロトンの状況に、スーダル・クイックステップの代表であるユルゲン・フォレ氏も諦め顔だ。

ツール・ド・フランス

UAEのコントロールにほかのチームはどうすることもできない

「チームの誰かを逃げに送っても、UAEがペースを落とさないからどうすることもできないんだ。彼らはわずかなタイム差でも許容しない。彼らが強いことは確かなんだ。でも、もうちょっと違ったレース運びができないのかとも思ってしまう。彼らがどんなステージでも勝ちたいと考えているのだろうね。そうなれば我々は勝ち目がないんだ」

ライバルチームの選手たちはUAEの走りに理解

レースが成り立っている以上、UAEの非情とも、無情ともいえる展開に文句は言えない。彼らには彼らのレースの運び方がある。スポーツディレクターを務めるアンドレイ・ハウプトマン氏は取材陣にこう答える。

「チームが好調であることが大前提にある。そのうえで、他チームや選手とのタイム差を常に把握しておくことを重視しているんだ。すべてはタデイのマイヨ・ジョーヌのためであって、最後の1週間に何が起きるか分からない……という緊張感もある。余裕がある状態でなぜ逃げを追ったのかと聞かれるけど、答えは簡単なんだ。逃げる選手たちとのタイム差が小さく、われわれのペーシングで追いつけるであろう状況にあったからだ」

彼らの言う「余裕」とは、逃げに個人総合成績を脅かす選手がおらず、そのままステージ優勝まで容認をして良いであろうシチュエーションのことである。そのような条件下でも前を行く選手たちを追いかける姿勢は、「プロトン内の平和を乱す」との声もある。

一方で、実際にレースを走る選手たちはUAEの戦い方に理解を示している様子。地元フランスの花形ライダー、ケヴィン・ヴォークラン(ネットカンパニー・イネオス)は「ポガチャルの強さに少々うんざりする」と冗談を交えながら、こう語る。

「ポガチャルとUAEが圧倒的に強い、これが真実なんだ。強い選手たちがなぜ勝利を狙っちゃ駄目なの? 僕たちが勝とうと思ってチャレンジをして、彼らに封じられたらすごく悔しいよ。だけど、彼らにも勝つ権利はあるんだ。僕がその立場だったら? 間違いなく勝ちにいくよ」

強い走りには大きな代償がともなっている

ポガチャルの、UAEの、あまりの強さにプロトンに限らず、現場関係者もお手上げな感があるけれど、彼らがあれだけの走りをするうえで大きな犠牲を払っていることも確かである。

ツール・ド・フランス

第10ステージでのポガチャル

ポガチャルが第6ステージでフィニッシュまでの43kmを独走し、第10ステージでも最後の15kmを攻め抜いたけれど、相応の消耗はしているはずだ。また、レースを作り上げているアシスト陣も、かなりのダメージを負いながら日々の戦いを終えている。実際、第10ステージではポリッツやグロスシャートナー、イェーツらはフラフラになりながらフィニッシュラインを通過していた。

いまのUAEの戦いを語るうえで、ハウプトマン氏の言葉がすべてといえよう。

「リスクは大きいけれど、リーダーチームである以上はやるしかない。すべてはわれわれのプランで」

UAEチームエミレーツ・XRGの強き戦い方を実行できる8人が、このツールを走っている。

文:福光 俊介 from Nevers, France

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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