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ロードレースステージ史上最速の50.91km 早掛けしたヴァーレンショルトが鮮やかにツール初勝利|ツール・ド・フランス2026 レースレポート:第11ステージ
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介ソーレン・ヴァーレンショルトが早駆けに成功!嬉しいツール区間初勝利!
第2週ではひとつめの平坦ステージ。フランスではおおよそ10日ぶりに雨が降って、スタート地ヴィシーは荒れ模様。それもレースが進むうちに回復して、ヌヴェールにフィニッシュする頃には晴れて暑さも戻ってきた。ステージ優勝争いはセオリー通りのスプリント。とはいっても少々イレギュラーな展開になって、早めに仕掛けたソーレン・ヴァーレンショルト(ウノエックス・モビリティ)がライバルたちの猛追をかわして逃げ切ってみせた。
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「早すぎるな……とは思ったよ。でももう思い切っていくだけだった。迷いはなかったし、昨日落車していて僕には失うものは何もなかった。やるだけのことはやってみようと飛び込んでいったんだ」(ヴァーレンショルト)
雨の中でレースがスタート
前日のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)の走りに沸いた中央山塊に別れを告げ、プロトンは北進していく。ヴィシーからヌヴェールまでの161.3kmは高低の変化がほとんどない、スプリンター向けのレイアウト。
マイヨ・ブランにアユソ、ジャージの下にはラ・ロハ...
ヴィシーやその周辺では前の晩から雨が降っていて、レース当日の朝を迎えたら一層強まった。時間とともに風も強くなってきて、ときに大雨じゃないかと感じてしまうほど。その風が新たな歴史をつくることになるのだけれど。
この日もリアルスタートからいくつものアタックがかかって、その中にはマチュー・ファンデルプール(アルペシン・プレミアテック)やジュリアン・アラフィリップ(チューダー プロサイクリングチーム)の姿も。ヴィシーから130kmほど北に位置するサン=タマン=モンロン出身のアラフィリップ、気合いがいつも以上だ。数回のトライを実らせて、他の3人と逃げの態勢を整えた。
27.8km地点に設置された中間スプリントポイントでは、先頭グループの4人と追走ライダーに続いて集団がやってきて、ヤスペル・フィリプセン(アルペシン・プレミアテック)が先着して全体6位通過。マイヨ・ヴェールのマッズ・ピーダスン(リドル・トレック)も8位通過として、8点を加算させている。
先頭グループの4選手、タイム差は最大で1分40秒ほど
メイン集団は、フィニッシュでスプリントを狙うチームが主にコントロール。先を行く4人とのタイム差を最大でも1分40秒にとどめると、フィニッシュまで70kmを切ったあたりからその差を縮めていった。
早めのスプリントが奏功
レースが進むうちに天候は完全に回復し、ロードコンディションもドライに。先頭グループからアラフィリップが真っ先に下がってしまったが、アントン・チャーム(ウノエックス・モビリティ)、ネルソン・オリヴェイラ(モビスター チーム)、マティス・ルベール(トタルエネルジー)の3人は懸命に逃げ続ける。ただ、勢いは集団が明らかに上回っている。スプリントに向けてペースが上がっていくメイン集団は、残り5kmで逃げメンバーを吸収。健闘の3人は握手をしながら互いをねぎらった。
残り2kmでNSNサイクリングチームとデカトロン・CMA CGM チームのトレインが集団前方へと上がったのを機に、集団は一気にスプリントモードへ。いくつかの緩やかなコーナーを抜け、残り1kmを示すフラムルージュを通過すると同時にヨナス・アブラハムセン(ウノエックス・モビリティ)がアタック。リードしたのは一瞬だったが、集団を混沌とさせるには十分な効果があった。
フィニッシュ前600mでケース・ボル(デカトロン・CMA CGM チーム)が先頭に出るが、エーススプリンターのオラフ・コーイはこれに続かず、スプリントポジションを整え直している。それによって空いた隙間に、集団右端からヴァーレンショルトが飛び込んでボルを追いかけた。
「集団内のポジションを下げてしまって、何とかして前に戻ろうとしていたときだったんだ。あのスペースに飛び込んだら何かが起きるかもしれないと思った。大急ぎでボルまで追いついて、そこで一呼吸おいて改めてスプリント。フィニッシュまで250mあったし、スプリンターたちにパスされても仕方ないと覚悟はしていた。でもそうはならなかったね」(ヴァーレンショルト)
コーイらが猛追するもわずかに届かず。第7ステージでは2位に食い込むなど、今大会のスプリント戦線に顔をのぞかせていた大型スピードマン(身長195cm!)が初めてツールでの勝利を挙げた。
レーススピードはツール史上最速の50.91km
スプリントとタイムトライアルを得意とする26歳にとって、昨年のオムループ・ヘットニュースブラッドに続くビッグタイトル。2021年のプロデビュー以来、自国ノルウェーが誇るウノエックス・モビリティで走っていて、ツールにも4年連続で出場している。前日のステージでは落車して脚と手指を負傷。最下位でフィニッシュ(175位)していたけど、今度は1番。地獄から天国へひとっ飛びだ。
南風に押されてステージの平均時速は50.91km
実は、レース前の朝にチームから「今日のステージを勝ったらジェットスキーをプレゼントする」と言われていたのだとか。本当に勝ったけれど、チームはどうするのだろう。
「もともとは去年から言われ続けているジョークなんだ(笑)。あるレースで手首を痛めてリタイアしたことがあって、その理由をチームメートが“家に帰ってジェットスキーがしたいからだ”なんて言ったのが始まりでね。僕の地元(ノルウェー南部のマンダール)はリゾート地で、ウォータースポーツが盛ん。僕も実際にジェットスキーを所有しているのだけれど、これで新しいのが手に入るかな。届くのを楽しみに待つよ」(ヴァーレンショルト)
強い南風に押され続けたことによって、このステージの平均時速は50.91kmに。これはツールのロードレースステージとしては史上最速。思いがけず、ヴァーレンショルトはレコードホルダーとなった。
「走っている間はそれほど速いとは感じていなかったのだけどね。レース距離も長くはなかったし、集団全体が逃げの選手たちとのタイム差をしっかりコントロールしていたから、自然とペースが速まったのだと思う。このくらいのスピードなら僕は慣れているから問題ないよ」(ヴァーレンショルト)
あまりのハイスピードにポガチャルも慌てた!?
個人総合上位陣は問題なく走り終えて、次へと駒を進める。順位変動も起きておらず、ポガチャルが引き続きマイヨ・ジョーヌを着用する。
ファンサービスに応じるアラフィリップ
「集団の後ろに下がってから前に戻るまでが大変だったよ(笑)。僕にしてはクレイジーなスピードで走っていたんじゃないかな。そのときに、“あっ、今日は早くレースが終わるな”って確信したね」(ポガチャル)
いま一度トップ3の総合タイム差を確認しておくと、1位のポガチャルから2位ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(チーム ヴィスマ・リースアバイク)までが3分36秒、同じく3位レムコ・エヴェネプール(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)までが4分6秒となっている。
続く第12ステージも平坦コース。スプリンター陣がステージ優勝を狙える機会は実質最後との見方もあり、“ラストチャンス”に賭ける選手たちが全力でもがくことだろう。
文:福光 俊介 from Nevers, France
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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