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サイクルロードレース コラム 2026年7月14日

「5kmルール」が総合系ライダーの走りを変える スプリントステージ終盤に生まれている暗黙の了解|ツール・ド・フランス2026

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ツール・ド・フランス

ツール・ド・フランスはハードな1週目を終えたところ

ツール・ド・フランス2026は第1週を終えた。日々激動のレースに興奮が収まらず、身も心もいささか疲れている……なんて方もいらっしゃるのではないだろうか。それは現地取材陣も同様で、休息日は選手だけでなくツールに関係するすべての人々にとって憩いの1日。体を休めながら、美味しいものを食べて、第2週へと向かおう。

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さて、第1週の戦いで明らかになった、プロトンでのある事案を紹介したい。マイヨ・ジョーヌをかけた個人総合争いに身を置く選手たちが、リスクを回避すべく平坦ステージでとっている行動について。

残り5kmバナー通過とともに総合系ライダーが後方へ

それは、第8ステージを終えてプレスカンファレンス(記者会見)に臨んだタデイ・ポガチャルUAEチームエミレーツ・XRG)の口から発せられたものだった。

「“5kmルール”が総合成績を目指す選手たちにとって、かなり大きな違いを生んでいるのは間違いない。というのも、総合系ライダーは平坦ステージの終盤で、意識的に集団内のポジションを下げて落ち着いて走るよう心掛けているんだ。そのおかげでストレスがかなり軽減されているし、落車のリスクにもうまく対処できていると思う」

“5kmルール”とは、フィニッシュ前5km以内で発生した落車やバイクトラブルなどによって集団から遅れた場合に救済されるもので、どれだけタイム差がついても同一集団内でフィニッシュしたとみなされる。ステージリザルトはフィニッシュライン通過順に基づくが、所要タイムは当該集団と同じとカウントされる。

もともとは“3kmルール”としてサイクルロードレースシーンで知られるものだが、ツールの場合はレースレベルが高くなることやコースレイアウトなどを考慮し、2025年大会から“5kmルール”を用いている。

平坦ステージの場合、このルールが適用される区間まではスプリントフィニッシュを狙うチームに限らず、強力な総合系ライダーを擁するチームも隊列を組んで集団前方にポジショニングを図る。大規模落車を避けるためには、脚を使ってでもできるだけ前に位置することが安全との考えからだ。“3kmルール”であれば、フィニッシュ前3kmまで大多数のチームがポジション争いを繰り広げ、それが総合系ライダーかスプリンターかを問わず選手たちの大きなストレスになっていた。

ツール・ド・フランス

位置取り争いに変化あり

ツールでの“5kmルール”導入によって、少なくとも2km分のストレスは軽減される。ポガチャルによれば、フィニッシュ前5kmのバナーを通過すると同時に、総合上位陣が申し合わせるでもなく自然と後方へと下がってフィニッシュへと向かっているのだという。

ステージ順位からも推察できる“暗黙の了解”

確かに、レース最終盤での大規模なクラッシュは大会開幕以降発生していない。今大会最初の平坦カテゴリーだった第5ステージで、マイヨ・ジョーヌを着用していたトースタイン・トレーエン(ウノエックス・モビリティ)が落車し、ヨナス・ヴィンゲゴーハンセンチーム ヴィスマ・リースアバイク)も一瞬ながら足止めを余儀なくされた。それでも彼らは他の個人総合上位陣とステージを終えている。

トレーエンやヴィンゲゴーの事態がより総合系ライダーの慎重度を高めたのかまでは分からないけど、同様に平坦を走った第7・第8ステージはほぼノートラブルでレースはクローズ。ポガチャルとヴィンゲゴーを例に挙げれば、第7ステージはそれぞれ56位と59位(トップと同タイムは100人)、第8ステージは49位と51位(同89人)。他の総合上位ライダーも彼らの近くで走り終えていて、“暗黙の了解”が保たれていることがおおむね見て取れる。

ツール・ド・フランス

特別賞ジャージの上に特別賞ジャージ

彼らの対応には、同一集団であれば順位に関係なく同タイムフィニッシュとして扱われるサイクルロードレース特有のルールが大前提にある。ボーナスタイムが付与されるトップ3フィニッシュ以外は何位であっても、他の総合系ライダーたちと一緒にレースを終えられれば問題がない、との姿勢が重要なファクターになっている。

順位を超えたひとつの目的に向かって

残る2週で、平坦にカテゴライズされるステージは3つと少ない。それでも、ひとつのクラッシュやトラブルが結果に反映されやすいスポーツゆえに、個人総合で上位を目指す選手たちはこの先一層の緊張感のもと走ることになる。

そうしたなかで、言葉はなくとも約束ごとが守られ、「パリを目指す」という同一の目的へ向かう姿はサイクルロードレースの美しさといえるだろう。プロトンに広がるリスペクトは、第2週、第3週とより深まっていくはずだ。

文:福光 俊介 from Cantal, France

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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