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高温での距離短縮は大会史上初! 中央山塊ステージはファンデルプールが通算3勝目|ツール・ド・フランス2026 レースレポート:第9ステージ
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸大会通算3勝目を挙げたマチュー・ファンデルプール
アルペシン・プレミアテックのマチュー・ファンデルプール(オランダ)が4選手によるスプリント勝負を制して今大会初勝利、大会通算3勝目を挙げた。7月12日にマルモール〜ユセル間で行なわれたツール・ド・フランス第9ステージは、異常高温により距離が180.4kmから154.6kmに短縮された。総合成績ではUAEチームエミレーツ・XRGのタデイ・ポガチャル(スロベニア)が首位のマイヨ・ジョーヌを守った。
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フランス気象局が赤色警報を発令して距離短縮
フランスの中央部に位置する中央山塊は火山活動によってできた山岳地帯で、真夏は時として高温になる。今年は開幕前から恐ろしいほどの熱波が押し寄せ、ついにこの日の舞台となるコレーズ県に赤色警報が発令された。主催者はこの状況下でもレースが安全に実施できるように配慮して、ステージをおよそ30km短縮させた。
日中の最も暑い時間帯にペダルを漕ぐ選手のみならず、大会運営を支えるスタッフや沿道で待ち構えるファン、さらにはコース近くの地域社会で最も弱い立場にある人たちから健康面の救急支援要請があった場合の対応などの予防措置を取ったのである。
ステージは序盤がカットされたので、コース後半に設定された4つの山岳ポイントは残り、獲得標高は依然として3000m。難易度としてはそれほど変わらなかった。中間スプリントポイントの位置が当初の44.9km地点から13.9km地点になった。
最初の休息日を前に、猛暑のなかをスタートした176選手は激しい戦いを繰り広げた。レース開始の旗が振られるとすぐに、アタッカーが集団を活性化させ、いきなりの上り坂で逃げを試みていく。飛び出した選手はステージ優勝できる実力を備えた有力選手も多くいた。
こういったアタッカーに対して、リドル・トレックが中間スプリントポイントのベイナ(13.9km地点)まで逃げようとする選手らを徹底的にコントロール。この動きにより、ポイント賞トップのマッズ・ピーダスン(デンマーク)がNSNサイクリングチームのビニヤム・ギルマイ(エリトリア)を抑えて1着通過の25点を獲得する。
ファンデルプールとピドコックが第1集団に加わる
この日最初の山岳ポイント、46km地点のコート・ド・ナーヴ(カテゴリー3級)に向かう途中もアタックが続く。スーダル・クイックステップのヴァランタン・パレパントル(フランス)がこの頂上で先頭に立つが、逃げたい選手らはまだ第1集団を形成できずにいる。
先頭集団にはファンデルプール、ピドコックの姿が
幾多の攻撃とカウンターアタックで主導的な役割を果たしたファンデルプールは、57km地点で再びアタックを仕掛けた。16選手からなる集団が先頭に集まり、新たにウノエックス・モビリティのトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー)、ピナレロ・Q36.5プロサイクリング チームのトーマス・ピドコック(英国)、グルパマ・FDJユナイテッドのクレマン・ブラズアフォンソ(フランス)が加わった。
ヨハンネセンとリドル・トレックのクイン・シモンズ(米国)は、2つ目の山岳スック・オ・メイ(カテゴリー2級)の手前で16人の集団からアタックを仕掛けた。ピドコックとファンデルプールが追走を開始し、ピドコックを先頭にファンデルプール、ヨハンネセン、リドル・トレックのデレク・ジー=ウェストとシモンズ、ロット・アンテルマルシェのレナルト・ファンイートヴェルト(ベルギー)、モビスター チームのパブロ・カストリーリョ(スペイン)、EFエデュケーション・イージーポストのアレックス・ボーダン(フランス)が第1集団として山頂を通過した。
これを追うメイン集団はUAEチームエミレーツ・XRGが力強いペースを刻み、スック・オ・メイの頂上でもその差は1分25秒を超えることはなかった。残り40km地点でネットカンパニー・イネオスが追走に加わって主導権を握りにかかる。タイムが縮まったことで第1集団のアタッカーたちは苛立ち、もはやスムーズに連携できなくなっていた。
ファンデルプールは、この日最後の登り、残り24.5km地点を頂点とするカテゴリー4級のモン・ベッソウでアタックを仕掛ける。ヨハンネセン、ピドコック、ボーダンがそれに続き、残り20km地点で4人の先頭集団を形成する。その後ろでは、シモンズとジー=ウェストがメイン集団を待ち、ピーダスンのために集団スプリントに持ち込もうとする動きを見せた。
4人の先頭集団は最後の1kmまで息の合った走りを見せる。ファンデルプールが先頭に立ち、ライバルたちをコントロールしながら集団との差も広げ、最終的にヨハンネセンとピドコックを抑えて勝利を収める。ネットカンパニー・イネオスのフィリッポ・ガンナ(イタリア)を先頭にメイン集団は6秒遅れでゴール。ポガチャルら総合成績の上位選手はこの集団の中でゴールして、総合成績の上位に変動はなかった。
恐ろしいほどの熱波に覆われたツール・ド・フランス
「今日は本当に大変な一日だった。ツール・ド・フランスの開幕時はチームにとっていい状態ではなかった。比較的楽な日でも回復に苦労していた。でも、いつものように冷静さを保った。私たちは素晴らしいチームだから必ず好転すると信じ続けてきた。今日ではないかもしれないし、2週目、3週目かもしれない……。そんな最初の数日間よりは確実によくなっていて、ここ数日は少しずつ調子がよくなってきた」とファンデルプール。
「最初の休息日を勝利で迎えられるのは本当にうれしい。前日までの2日間は楽なステージが続き、今日はようやく全力で走れるだけの体力が戻った。この日のゴールスプリント前は、正直自信がなかった。逃げ集団を維持するために、かなりのエネルギーを費やしていたからね。集団からのプレッシャーも相当なものだった。一日中向かい風が吹いていて、逃げ集団にとっては最悪のコンディションだった。本当に必死で戦い、無事にゴールできてよかった。もしかしたら、私にとっては一日限りのフェスティバルなのかもしれない。でも、少なくとも素晴らしい一日だった」(ファンデルプール)
勝てなくてもポイントを獲得したピーダスンは納得の走り
UAEチームエミレーツ・XRGは第9ステージの一部でメイン集団のペースを形成し、ポガチャルを6秒遅れの区間11位でゴールさせた。
「計画はただゴールまでたどり着くことだった。我々は1分程度の差に抑えようとしていたが、その後、ネットカンパニー・イネオスがガンナを擁してステージ優勝を目指して引っ張り始めた。結局、逃げ集団はゴールまで走り切った。非常に厳しい一日だったので、明日は穏やかな時間を取ったりゆったりとサイクリングをしたりして、しっかり休養できることを願っている」とマイヨ・ジョーヌを守ったポガチャル。
連日晴天・快晴に恵まれている
「もちろん、一番の目標はマイヨ・ジョーヌを守ることで、時には攻撃こそが最良の防御策となることもあるし、なにが起こるかは誰にもわからない。今後数日間でなにが起こるか見てみたい。ただ、休息日の翌日は間違いなく厳しい一日になるよね」(ポガチャル)
ポイント賞トップのピーダスンはゴールでもメイン集団の2番手、区間6位になって15点を獲得。ポイント賞総合では268点として、2位に浮上してきたギルマイの223点に差をつけた。
「複雑な気持ちだ。できる限りのことをしたが、最終的には先頭集団のパワーは信じられないほど強力で、追いつくことは不可能だった。ステージ優勝争いに加われたらよかったけど、今日はそういう日ではなかった。一番急な登りでは、自分自身との戦いだった。なんとか自分のペースで登り切り、無事にメイン集団に戻ってくることができた」とピーダスン。
「それでも今日はポイント賞の得点をいくつか獲得できた。まずまずのステージだったと満足している。全体的に見ていい気分で休息日を迎えられる。来週が待ち遠しい」(ピーダスン)
第113回大会は7月13日に最初の休息日を迎える。その翌日はフランス革命記念日で、中央山塊での激しいステージが待ち受ける。ツール・ド・フランス初登場となるグリフール峠など、クライマーがライバルたちを振り切るのに十分なほど急勾配な山岳ポイントが設定されている。ゴールとなるスキー場も、強豪選手たちの激しい戦いの舞台となる可能性がある。
一方、天気予報によればこの猛暑は第2週のなかばまで続くという。真夏のフランスを駆け抜ける大会。選手たちは暑さという敵とも戦っていかなければならなくなった。
文:山口和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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