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ティム・メルリールが「プレッシャーを払う」スプリント勝利 マイヨ・ジョーヌのポガチャルにとっては楽な1日|ツール・ド・フランス2026 レースレポート:第7ステージ
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介メルリールがツール区間通算4勝目
ピレネーに別れを告げて、ボルドーを目指したツール・ド・フランス2026第7ステージ。2日ぶりの平坦カテゴリーで、セオリー通りのスプリント決戦。ライバルを大きく上回るスピードを見せつけたティム・メルリール(スーダル・クイックステップ)が今大会初勝利。ツール通算4勝目を挙げた。
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「フィニッシュまで何百メートル残っているのか分からなかったんだ。頼りにしたのは自分の勘。なかなか良いポジションに入れず大変だったけれど、最後はしっかり脚が動いてくれて良かったよ」(メルリール)
ヴェストロフールが再び逃げる
タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)が演じた伝説的な走りから一夜が明けた。記録にも記憶にも残るピレネーに別れを告げて、プロトンは本格的に北進を始める。第7ステージは、ツール初登場の村・アジェモーがスタート地に。椅子製造で有名で、村の入口には大きな椅子のオブジェが飾られている。
アジェモーとは対照的に、フィニッシュ地のボルドーは登場回数2番目となる82度目のツール訪問。「ボルドーといえばスプリント」というくらいに、スピードマンによる頂上決戦が幾度となく行われてきた。3年前のツールでも第7ステージでボルドーに赴いていて、ヤスペル・フィリプセン(現アルペシン・プレミアテック)がマーク・カヴェンディッシュ(当時アスタナ・カザクスタン チーム)に先着した。
今回もスプリントフィニッシュが大方の予想。実際にその通りになるのだけれど、そこへ至るまでには相応のストーリーが描かれた。2日前に続いてバティスト・ヴェストロフール(ロット・アンテルマルシェ)が飛び出し、すぐにヤコブ・オトルバ(カハルラル・セグロスRGA)が同調。2人逃げでレースは進む。
メイン集団は彼らを容認したとはいえ、タイム差は1分から1分30秒といったところ。60km地点を過ぎたところでウノエックス・モビリティが意識的にペースを上げて、集団を揺さぶる。前日までマイヨ・ジョーヌを着たトースタイン・トレーエンがトゥルマレからの下りで落車し、肋骨4本骨折と脳震盪により大会を離脱。北欧の雄は、新たな戦術のもとレースを進めていく。
逃げに乗ったヴェストロフールとオトルバ
120.2km地点に設けられた中間スプリントポイントでは、先頭2人が競った末にヴェストロフールが1位通過。少しおいてやってきたメイン集団は、ポイント賞首位でマイヨ・ヴェールを着るマッズ・ピーダスン(リドル・トレック)が先着して全体3位通過。16点を加算している。
この日唯一のカテゴリー山岳である4級の上りもヴェストロフールが1位で通過。その頃にはメイン集団が数十秒差まで迫っていて、先頭2人をキャッチするのは時間の問題。結果的に残り18kmで吸収。ヴェストロフールとオトルバは、157kmを逃げ続けた。
「ロードレースそのものが変わってきていて、逃げられる機会が減りつつある。でも、ツールで逃げがなくなるのは嫌なんだ。僕としては、先頭を走ることに魅力を感じている。ツールで逃げることほど素晴らしいものはないと思っているんだ」(ヴェストロフール)
位置取りに苦慮しながらも勝ってみせたメルリール
フィニッシュまで残り10kmを切ると、数チームが代わる代わる集団先頭へと上がって主導権争い。残り2.5kmではアルペシン・プレミアテックのトレインが一気に上がって流れを引き寄せる。フラムルージュを過ぎて最後の1kmに入ると、マチュー・ファンデルプールが牽引役を担い、エーススプリンターのフィリプセンへとつなぐ。
アルペシン・プレミアテックとしては、完璧なまでの勝ちパターンだ。ただ、スプリントを始めるタイミングがいくぶん早かったか。残り250mでスプリントが一斉に始まると、フィリプセンの脇からフェルナンド・ガビリア(カハルラル・セグロスRGA)が上がって、両者が接触しそうに。逆サイドからは、ソーレン・ヴァーレンショルト(ウノエックス・モビリティ)も加速する。
ただ、この日はメルリールが一枚も二枚も上だった。スプリントラインをこじ開けるようにして加速をすると、前にいた選手たちを一気にパス。2位に入ったヴァーレンショルトにバイク1台分の差をつけて、一番にフィニッシュラインを通過した。
集団牽引はスプリンターのチームが担う
「フィリプセンの後ろに入ろうと思っていたのだけれど、みんな同じことを考えていたようで残り600mで隊列から外れてしまったんだ。でも、今日は絶対に最後まで戦い抜くと決めていた。諦めずに走って本当に良かった。これでツールは3回目だけど、毎回最低でも1勝はできていることになるね。とても誇らしいよ」(メルリール)
両肩に乗ったプレッシャーを完全に払った
2勝を挙げた昨年は、総合成績を狙って臨んだレムコ・エヴェネプール(現レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)との共闘もあり、チームとしてスプリントへのコミットが手薄だった。かたや、今回はメルリールで勝つことを意識した布陣を敷く。リードアウトマンのベルト・ファンレルベルヘのリタイアは痛いが、最終局面に向けた態勢を構築し直してこのステージに臨んでいた。
「ベルトがいないのは個人的に寂しいし、彼抜きで戦う影響はこれからきっと出てくると思う。覚悟はしている。だけど、他のメンバーも頼もしくて、“僕たちがやるんだ!”という気持ちになっているんだ。僕のチームメートへの信頼は変わっていないよ」(メルリール)
そうして、堂々と勝ってみせた。ウイニングセレブレーションでは肩のつきものを払うようなしぐさ。レース後にその真意を明かしてくれた。
「ツールの開幕前に、パトリック・ルフェーブル(スーダル・クイックステップ元GM)に“両肩にプレッシャーが乗っかりすぎていないか?”と言われたんだ。そうかもしれないと思って、彼の前で肩を払う仕草をしてみせたんだ。今日も同じことをしてみたよ。これでプレッシャーからは完全に解放されたね」(メルリール)
山岳比重が高い今大会で、スプリントチャンスは決して多くはない。それでも、残された可能性に賭けて戦うと改めて誓った。
ボルドーへ至る巨大な植林地を走る
「ツールは特に、ひとつ勝つとふたつ、みっつ……と勝利を重ねる選手がいるからね。そう思うと、1勝できたことはとても誇らしいよ。まだまだやれるという気持ちにさせてくれるね」(メルリール)
チームのオーガナイズを誇るポガチャル
この日は、ステージ100位までがトップと同タイムでのフィニッシュ。個人総合上位陣は問題なく走り終えている。順位変動はなく、次のステージへと向かう。
3ステージぶりにマイヨ・ジョーヌを着直したポガチャルも、危なげなくフィニッシュラインを通過。引き続きリーダーを務める。
「集団で走っている間、何人かに聞いたけどみんな疲れていると言っていた。昨日がすごくハードだったんだ。今日が楽な1日で良かった。ツールに感謝だね」(ポガチャル)
気温30度を超える暑さの中で強いられる長旅にも、チームとしてのオーガナイズが整っていることをアピールする。
「地獄のような暑さでも、僕の体温は低く保たれているんだ。チームとして、僕たちがクーリングに真剣に取り組むよう促してくれていることが大きい。それに、レースが終わったらすぐに明日のステージへの計画を立てて、モチベーションを上げていくんだ。僕個人の経験だけでなく、チームの組織づくりもかなりうまくいっているのは間違いないよ」(ポガチャル)
続く第8ステージも平坦カテゴリー。それぞれの立場でコースへの適応と暑さへの順応を図りながら、先へ進んでいく。
文:福光 俊介 from Bordeaux, France
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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