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ツール3連覇&5勝クラブ入りなるか? 「現代の怪物」タデイ・ポガチャル|ツール・ド・フランス直前コラム vol.5
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介2022年オタカムでの死闘のあと
現在のサイクルロードレースシーンにおける絶対王者、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)。ステージレース、ワンデーレース問わず力を発揮し、今季は出場したレースのほとんどで優勝。ツール・ド・フランス2026年大会も、個人総合優勝候補の筆頭に挙げられる。
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今年ツールを勝てば、最多タイ記録となる5度目の大会制覇。エディ・メルクスやベルナール・イノーらとならび、「5勝クラブ」と称される領域に到達する。そこで、ポガチャルの強さをいま一度確かめながら、ツール2026での戦いぶりを展望。大会5勝目への道筋を確かめていく。
2020年以降4度のツール制覇
1998年生まれのポガチャルがツールにデビューしたのは、21歳で迎えた2020年大会だった。前年のブエルタ・ア・エスパーニャでステージ3勝を上げ、個人総合3位と堂々たるグランツールデビューを果たすと、翌年は満を持してツールへと向かった。
ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユでの大逆転
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、異例の9月開催となったこの大会では、前半戦こそ横風分断で遅れるなどあったが、山岳に入って徐々に追い上げ。個人総合2位で迎えた第20ステージ、ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユでの山岳個人タイムトライアルで、ツール史に残る大逆転。初の個人総合優勝を飾った。このときの相手は、自国スロベニアの友人でもあるプリモシュ・ログリッチ(当時チーム ユンボ・ヴィスマ)。両者の戦いは一層の感動と驚きでもって受け入れられた。
劇的なツール制覇に始まったポガチャルのウイニングストーリー。2021年大会は前年と違って追われる側に回ったが、なおも堂々たる戦いぶり。第1週後半にマイヨ・ジョーヌを着用すると、そのままパリまで守ってみせた。一方で、最大のライバルがこの大会で出現。ヨナス・ヴィンゲゴー(当時チーム ユンボ・ヴィスマ、現チーム ヴィスマ・リースアバイク)との関係は、いまにも続いていくこととなる。
順風満帆に思われたポガチャルのキャリアだったが、2022年と2023年は大きな壁が立ちはだかった。年々強さを増すヴィンゲゴーと、彼を盛り立てるヴィスマ勢の徹底したレース管理にポガチャルは苦戦を強いられる。力負けに終わった2022年、そのリベンジを誓った2023年も春に負った手首の怪我の影響で、ともに個人総合2位。いずれも勝利したのはヴィンゲゴーだった。
怪物ポガチャルに対しチームで挑んだヴィスマ
ただ、これで終わらないのがポガチャルである。2024年以降は、ツールに限らずワンデーレースや1週間程度のステージレースでも「1番」にこだわる姿勢を見せる。2024年は初のジロ・デ・イタリア制覇に続き、ツールでも快勝。マルコ・パンターニ以来となる「ダブル・ツール」を達成。さらには世界選手権ロードレースにも勝ち、史上3人目となる「トリプルクラウン」も果たした。
2025年大会も前半戦から全開。一時的にマイヨ・ジョーヌを手放す局面はあったものの、ヴィンゲゴーら総合系のライバルとのタイム差を計算しながらレースを展開。大会第3週では膝の痛み悩まされはしたが、トップは誰にも譲らず4度目の個人総合優勝をつかんだ。
ベルナール・イノー氏「ポガチャルならツール6勝は夢物語ではない」
ポガチャルとツール・ド・フランスとの相性は、言わずとも抜群であることは明白。
何よりも、その勝率にある。2020年の初出場から昨年まで6年連続でツールに挑み、その4回で個人総合優勝。敗れた2回も同2位で終えている。
これだけのハイアベレージは、ツール最多記録である5勝を挙げた4人に通じるものがある。例えば、エディ・メルクスは1969年から1974年の間に5勝し(1973年は欠場)、ベルナール・イノーであれば1978年から1985年までに5勝(1980年はリタイア、1983年・1984年欠場)した。2度の敗北を乗り越えながら近年のプロトン最強の座を保ち続けているポガチャルの戦績も、彼らとどこか似たところがある。だからというわけではないが、現在の実力やライバルとの差を考えていくと、ポガチャルのツール5勝目は早かれ遅かれ実現すると見るのが自然である。
実際に、前記した2氏はともにポガチャルの走りに太鼓判を押す。メルクスに言わせれば、「もはや私との比較の領域ではない」とし、「ポガチャルはこれからもトップであり続ける」とも。イノーも「彼はありとあらゆる記録を打ち破っていくことになるだろう。ツール5勝を超えて6勝も? 夢物語ではない。彼なら同一シーズンすべてのグランツールを勝つことだって可能だ」とその走りを評する。
ツールのレジェンドたちを称える、俗にいう「5勝クラブ」入りはポガチャルにとって通過点でしかないのかもしれない。現時点で27歳という年齢も加味すれば、6勝目、7勝目……と夢は膨らむばかりである。
ツール5勝目へ、最初のポイントはチームタイムトライアル
ポガチャルにとって3年連続5度目の個人総合優勝がかかる2026年大会。どんな戦術でレースをクリエイトしていくだろうか。
まずは第1ステージ、19.6kmのチームタイムトライアルの結果によって、その後の方向性が定まっていくことだろう。今回はチーム内一番手ライダーのフィニッシュタイムが有効となる特別ルールが採用されるので、よほどのことがなければポガチャル自身がチームの先鋒を担うはずだ。全体トップを獲ってマイヨ・ジョーヌを着ることになれば、ライバルとのタイム差をコントロールしながらその後のステージをこなしていくことになりそう。一時的にマイヨ・ジョーヌを他選手に譲るといった戦術的な対応も考えられるが、ヴィンゲゴーらとの総合タイム差さえ管理できれば問題はない。
逆に、チームタイムトライアルで後れを取った場合。どこから追い上げ態勢に入るかに注目だ。丘陵コースの第2ステージから狙っていくのか、特定のステージにフォーカスして反撃チャンスをうかがうのか。このあたりも、ヴィンゲゴーらとの総合タイム差次第か。
もっとも、マイヨ・ジョーヌを着ているかどうかを問わず、貪欲にステージ優勝にトライする彼である。総合成績と合わせて、ステージ何勝を挙げるかにも世界中の目が注がれることになる。
ちなみに、最終調整レースとして臨んだツール・ド・スイスでは、第1ステージで驚異の72km独走劇。第4ステージの個人タイムトライアルにも勝ち、文句なしの個人総合優勝。スイスで魅せた強さの再現をツールで……なんてことも、いまのポガチャルになら期待をして良いだろう。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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