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サイクル ロードレース コラム 2025年5月11日

フォレリングが山岳ステージ2勝で2連覇を達成。そしてスペインのグランツールで見せたオランダ勢全勝の驚異!【Cycle*2025 ラ・ブエルタ フェメニーナ:レビュー】

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ラ・ブエルタ フェメニーナ

左からスーパー敢闘賞ファンデルブレッヘン、総合優勝+山岳賞フォレリング、ポイント賞フォス

女子ワールドツアー屈指のステージレース、ラ・ブエルタ フェメニーナが5月4日から10日まで、スペイン北部を舞台として全7ステージで開催され、FDJ・スエズのデミ・フォレリング(オランダ)が大会連覇を達成した。オランダ勢はチームタイムトライアルを除く6ステージで6勝。個人総合1位のリーダージャージ、真紅のラ・ロハも第2ステージ以外は掌握。女子ロード界におけるオランダ選手の実力が際立つ大会となった。

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1年前に途中離脱したファンダイクを先頭にするようにチームが指示

第1ステージはバルセロナでの距離8.1kmのチームタイムトライアル。建築家アントニオ・ガウディが設計したカサ・ミラからスタートし、ペドラルベス宮殿で折り返す世界的観光地に舞台が設定された。レースは米国のリドル・トレックがトップタイムを叩き出す。チーム内で最初にフィニッシュラインを通過したエレン・ファンダイク(オランダ)がまずは首位に。表彰台で真紅のリーダージャージ、ラ・ロハに袖を通した。La Rojaは赤いジャージという意味で、スペインのサッカーナショナルチームの代名詞でもあるが、近年のラ・ブエルタ フェメニーナもこの名称を好んで使用するようになった。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

ファンダイクが先頭でフィニッシュ

リドル・トレックはタイムトライアルのナショナルチャンピオンを3人も擁する大本命で、2024年大会でも初日に行われたチームタイムトライアルで優勝している。ファンダイク自身も二度のタイムトライアル世界チャンピオンに輝いている実力者だが、ファンダイクは前年にコース途中で単独落車してしまい、大きく遅れていた。

「昨年もチームタイムトライアルで優勝したけど、ひどいクラッシュに見舞われてその後に棄権せざるを得なかったので、あまりいい思い出ではない」とファンダイク。
「トップでフィニッシュするときは私が最初にゴールラインを通過するようにとチーム監督が指示してくれた。チームメートにもリーダージャージを着てほしいと言ってもらえて光栄。だからこのリーダージャージは私のものではなく、チーム全員のもの」

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【フィニッシュシーン】ラ・ブエルタ フェメニーナ 第7ステージ|Cycle*2025

チーム SDワークス・プロタイムは3秒遅れ。連覇を狙うデミ・フォレリング(オランダ)を擁するFDJ・スエズは6秒遅れ。一方、チーム ヴィスマ・リースアバイクは、一部の選手がスタート時のカウントダウンに遅れ、足並みが乱れて21秒遅れと誤算だった。

第2ステージは序盤に起伏があるコースで行われ、チーム ヴィスマ・リースアバイクのマリアンヌ・フォス(オランダ)が上りスプリントで抜け出して優勝した。大会通算5回目の優勝で、ステージ最多記録を塗り替えた。

この日は激しい雨に見舞われ、チーム SDワークス・プロタイムのアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)が濡れた路面で転倒。すぐに復帰してゴールタイムに影響はなかったが、間一髪のアクシデントだった。さらにフィニッシュまでの長い下り坂では大きな落車はなかったものの、集団が分散。首位のファンダイクも遅れてしまい、ラ・ロハを手放すことになった。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

フォスが圧巻の勝利で256勝目!

ステージ勝利争いはスプリント合戦に持ち込まれた。チーム ヴィスマ・リースアバイクはポーリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)とイモージェン・ウォルフ(英国)が最後の数kmで素晴らしいリードアウトを見せ、フォスがゴールまでのスプリントで圧倒的なアドバンテージを握った。区間2位レティツィア・パテルノステル(イタリア、リブ・アルウラー・ジェイコ)を引き離して優勝した。

「チームタイムトライアルで失敗した昨日の出来事があったので、今日のステージには全力を尽くしたいと思っていた」とフォス。
「ポーリーヌとイモージェンがずっと一緒に走ってくれた。最後の数コーナーをトップで通過するには、2人のタイヤを追うだけでよかった。2人は私をいいポジションに保ってくれた」

2位に入ったパテルノステルはボーナスタイム6秒を獲得して首位となり、ファンダイクからラ・ロハを奪った。
「ラ・ブエルタ フェメニーナに出場する予定はなかったけど、春先のアルデンヌ(ベルギーのワンデーレース週間)でチームと話し合い、ここに来るのはいい考えだと判断した。最終コーナーでフォスに先を越され、ステージ優勝は叶わなかったけど、2位でも私にとって最高の結果。でもその後、ラ・ロハを着ろって言われて、すごく感激した」

オランダの若いスプリンターがレジェンドを制して名乗りをあげる

平坦路の第3ステージはチーム SDワークス・プロタイムのフェムケ・ヘリッツェ(オランダ)がゴール勝負でフォスを制して優勝。総合成績でもトップに立った。ヘリッツェはこの日のスタート時点で、首位のパテルノステルからわずか2秒差の位置にいた。ヘリッツェは中間スプリントで6秒のボーナスタイムを獲得し、その時点でパテルノステルを暫定で逆転した。そして最終スプリントでフォスを抑えて勝利を収めたことで、総合1位の座を確定させた。

「今日はこんな結果になるとは思ってもいなかった。中間スプリントでボーナスタイムを数秒獲得して、『よし、スプリントは大丈夫だ』と確信した。そこでマリアンヌ(フォス)に勝てたことで、自分もチームも大きな自信を得ることができた。最後はとにかく冷静さを保っていた。誰かが迫ってくるのを感じていた。マリアンヌだったと思うけど、それでもフィニッシュラインまでトップの座を守り抜くことができた。本当に信じられない気持ち」とヘリッツェ。

ヘリッツェはワールドツアー初優勝、そしてグランツール初ステージ優勝。ミーシャ・ブレーデウォルツとともに若手のスプリンターとして注目されていたが、今回はエースのロレーナ・ウィーベスが欠場していて、チャンスをものにした。
「自分たちのプランを貫けばマリアンヌに勝てると確信していた。そして、それが完璧にうまくいった」

ラ・ブエルタ フェメニーナ

4年ぶりの現役復帰でも強さを見せたファンデルブレッヘン

続く第4ステージでもチーム SDワークス・プロタイムの総合力が光った。元世界チャンピオンのファンデルブレッヘンが独走勝利。チームメートのヘリッツェが首位を守った。ファンデルブレッヘンは、プロサイクリストとして最後に勝利を収めてから3年10カ月、昨冬のレース復帰後初の勝利を飾り、チームメイトのヘリッツェに次ぐ総合2位に浮上した。ステージ2位のフォスは総合3位に、3位のフォレリングは総合4位に。

「チームの計画ではなかったので、こんな結果になるとは思ってなかった。下り坂で先頭に立つことができた。レースのスピードが落ちていたので、アタックして独走する絶好のタイミングだと判断した」とファンデルブレッヘン。
「当初の戦略は、再びゲリー(ヘリッツェ)で優勝を狙うこと。最後の登りが厳しいことは分かっていたので、チームメイトと一緒にそこにいたかったが、集団が小さくなってしまった。明日は上り坂のスピードがかなり速いと思うので、間違いなく厳しいステージになる」

ラ・ブエルタ フェメニーナ

FDJ・スエズの山岳アシスト陣

FDJ・スエズの山岳アシスト陣が頼もしい動きを見せる

第5ステージはいよいよ本格的山岳。体調不良のフェランプレヴォはスタートできなかった。レースは4選手が第1集団を形成。57km地点で3分22秒の最大リードを記録した。リドル・トレックとFDJ・スエズは、4選手を追う最も有力なチームとなり、93km地点で吸収。FDJ・スエズのアリー・ウォラストン、エヴィータ・ムジックがカテゴリー2級の峠を猛烈なペースで駆け上がり、わずか15人の優勝候補ばかりの集団にした。

残り11kmでマライレ・メイエリング(モビスター チーム)がこのチャンスを逃さずアタックを仕掛けると、ムジックがエースのフォレリングのためにペースメーカーとして再びペースを上げた。残り4kmでこの若きフランス人クライマーが後退すると、同じフランス人でチームメイトのジュリエット・ラブースが代わりに走り、何度か加速してメイエリングを吸収。ここでファンデルブレッヘンがリードを奪おうとしたが、フォレリングは残り3kmでカウンターアタック。独走で優勝するとともに、チーム SDワークス・プロタイムのヘリッツェに替わって首位に立った。

第6ステージは再びフォスが優勝し、フォレリングが首位を守った。ラ・ロハの行方は最大の勝負どころ、最終日の第7ステージに委ねられた。スペイン北西部のアストゥリアス地方が舞台。距離152.6kmで、獲得標高は2500mを超える。これはスペイン女子グランツールのステージとしては史上最高記録となる。

すでに次のツール・ド・フランスファムのことを考えている(フォレリング)

2024年大会で初優勝したフォレリングはチーム SDワークス・プロタイムからFDJ・スエズに移籍して、スペインのグランツールに挑み、その実力を最大限に発揮した。第5ステージのラグナス・デ・ネイラ山頂で真紅のリーダージャージ、ラ・ロハを獲得すると、最終日のアルト・デ・コトベロ山頂で華々しくレースを締めくくることになる。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

霧の難峠を制したデミ・フォレリング、総合優勝

フォレリングは最終ステージの最後の800m地点で力強い加速を繰り出し、勝利の両手を高く掲げた。ステージ2位、総合2位はマーレン・ロイサー(スイス、モビスター チーム)、ステージ3位、総合3位はファンデルブレッヘンで、かつてのチームメートだった。フォレリングは山岳賞に加え、チーム部門でもチームメイトとともに優勝した。フォスは2つのステージで優勝し、3年連続でポイント賞を獲得した。

「このレースで2連勝できて本当にうれしい。最終日もステージ優勝も狙っていた。アタックを仕掛けるまでは、できるだけ長く待つことにした。待つのは辛かったけど、こうして勝てた。自分の才能を証明するのが常に楽しみで、すでに次のレースのことを考えている」とフォレリング。

チームとともに総合優勝を成し遂げたことを本当に誇りに思っているという。新しいチームでグランツールに参戦するのは少し不安だった。どんな展開になるか分からないからだった。しかし、このステージレースでは、チームメートと互いのペースを掴み、素晴らしいチームワークを発揮できることを証明した。

「チームメートはスタートからゴールまで素晴らしい仕事をしてくれた。誰にとっても新しい仕事だけど、全員がステップアップし、新しい役割を担う中で自分の道を見つけていく姿を見るのは、本当に素晴らしい経験だった。FDJ・スエズのチームメートはモチベーションも高くて一緒に走りやすかった。レース序盤は辛い時期もあったが、彼女たちは素晴らしいサポートと励ましを与えてくれた。おかげで、チームはさらに結束を深めることができた」とフォレリング。

強いオランダの象徴。7月26日に開幕するツール・ド・フランス ファムで2年ぶり2度目の総合優勝に挑む。

文:山口和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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