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【シクロクロス2023/24 WC第13戦 ベニドルム:プレビュー】ビッグ・スリー対決の見納め、起伏が少なく長い直線はすさまじいスピードレースを演出する
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかワウト・ファンアールトとマチュー・ファンデルプール
この冬のビッグ・スリー対決も、ついに見納め。マチュー・ファンデルプール、ワウト・ファンアールト、そしてトム・ピドコックという新旧シクロクロス世界チャンピオンが、UCIシクロクロスワールドカップ第13戦ベニドルム大会にて、最後にもう一度だけ激突する。果たしてライバル2人が意地を見せるか。それともアルカンシェルをまとう現役王者が、全勝街道をそのまま突き進むのか。
寒い北を離れて、暖かな地中海岸へ。コスタ・ブランカ(白い海岸)の愛称で知られ、スペインが誇るビーチリゾートが点在するバレンシア州アリカンテ一帯は、自転車界ではおなじみの場所だ。ロードレースチームにとっては冬のトレーニングキャンプのメッカであり、そもそもヨーロッパでのロードシーズンの幕が開くのも、たいていはこのあたり。今年2024年だって、第13戦の前日に、会場からわずか10kmほどしか離れていない町から欧州最初のプロトンが走り出す。ただしロードレース界の大スターでもある3人は、本格的にロードバイクに乗り換える前に、このベニドルム大戦に挑まねばならない。
ブエルア・ア・エスパーニャの開幕地を務めたことのある同町は、昨冬、シクロクロスにも勢力を拡大した。スペインに11年ぶりのUCIワールドカップを呼び寄せ、青い空ときらめく太陽の下で、いきなり初回から12000人ものファンを熱狂させた。さすがにクリスマスシリーズのフルスト大会(12月30日)の22000人には叶わなくとも、たとえば歴史の長いナミュール大会の9500人を上回る人数をあっさり集めてしまったことになる。
ベニドルムのコースは、幸いにも、詰めかけたファンを一瞬たりとも退屈させなかった。起伏が少なく、長い直線が何度も登場するサーキットは、すさまじいスピードレースを演出した。乾いた大気には、土煙が舞い上がり、テクニカルなコーナーのたびに選手たちは土埃に車輪を滑らせた。自慢の砂セクターは、ふかふかのビーチを思わせて、誰もがずぶずぶと脚を取られて……。しかも2023年大会は、最終9周回の終盤まで4選手が先頭でもつれあった。ついに抜け出したファンデルプールとファンアールトも、文字通り、フィニッシュぎりぎりまで全力競り合った。最終コーナーで大きく膨らみすぎたワウトがフェンスに接触し、減速を余儀なくされたことで、まれにみる大接戦の勝敗は決した。
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2回目の2024年大会に向けて、コースはさらに進化を遂げた。長い直線路のコンビネーションは、よりスピードが出やすくなり、それでいて締めにテクニカルなコーナーの連続が付け加えられた。なにより単純に一直線だった砂地獄が、今回は途中で直角に曲がるらしい。1年前のファンデルプールは自転車を降りずに砂地を突っ切ったが、今年はさすがに、バイクを担ぎ上げなければならないだろう。
いずれにせよ、絶好調のファンデルプールに、攻略できないコースなどないのだ。ただ12月半ばにシーズンインし、22日以降は3日と開けずに暴れまわってきた後、計画通り、1月7日を最後にレースから離れていた。つまり2週間ぶりの本番。今季10戦10勝と負け無しを誇ってきたままのコンディションで、ベニドルムに乗り込めるだろうか。
今大会を最後にシクロクロスシーズンを切り上げ、春クラシックに向けた準備を開始するファンアールトは、たとえ勝てずとも……長年の宿敵の「ワンマンショー」だけはどうにか食い止めたいと誓う。また夏に大きなピークを持ってくる予定のピドコックにとっても、冬の転戦はこれにて終了。年末年始に体調を崩し、数戦スキップした後、アンドラで英気を養った。本調子の走りで、気持ちよく、シクロクロスの現場から立ち去りたい。
またUCIシクロクロスワールドカップもラスト2戦となり、総合首位を巡る争いもいよいよ正念場。第12戦までを終えて、首位エリ・イザビット(295ポイント)と2位ヨリス・ニューエンハイス(270ポイント)との差は、たった25ポイントしかない。1週間前にそれぞれ初めてナショナルチャンピオンの座を勝ち取り、かつてないほど絶好調の2人の、激しい順位争いも見逃せない。
もちろん数字の上では、3位ピム・ロンハール(260ポイント)、4位ラルス・ファン・デル・ハール(255ポイント)にも逆転優勝の可能性はいまだにある。ただイザビットが一番にベニドルムのフィニッシュラインを駆け抜け、ニューエンハイスが3位以下で終わった場合……最終戦を待たずに新ベルギーチャンプの2022年以来2度目のワールドカップ制覇が決まる。
気になる天気予報は晴れで、気温はちょっと肌寒い14度前後。ただ金曜日に雨が降ったせいで、もしかしたら、ウェットな泥ゾーンが発生するのかもしれない。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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