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サイクル ロードレース コラム
【速報 ツール・ド・フランス2024】タデイ・ポガチャルが区間6勝で総合優勝、26年ぶりにダブルツールを達成!/第21ステージ
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【Cycle*2023 ツール・ド・フランス 1週目まとめ】濃密で、鮮烈だった9日間。ヴィンゲゴーとポガチャルの一騎打ちに酔いしれ、カヴェンディッシュの早すぎる別れに涙
ツール・ド・フランス by 宮本 あさか1週目から熾烈な一騎打ちを繰り広げるヴィンゲゴーとポガチャル
アダムとサイモンによるイエーツ双子対決が、なんだか、はるか遠い昔のことのように感じる。2023年ツール・ド・フランスは、いまだ大会1週目を終えたばかりだというのに。濃密で、鮮烈だった9日間。スペイン・バスク地方のまるでローラーコースターのようなコースで、いきなり緊張と興奮の針は振り切れ、3日間の難関山岳ステージそれぞれが、ヨナス・ヴィンゲゴーとタデイ・ポガチャルによる一騎打ちの舞台となった。
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初日からタイマン状態
それは約3400kmにもわたる長い長い戦いにおける、ほんの170km地点に過ぎなかった。第1ステージ最終盤、オレンジ色に染まる3級コート・ド・ピケの激坂で、ポガチャルが弾けるように加速した。4月末のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで左手首を骨折して以来となる、2カ月と1週間ぶりの国際レースで、かつてとなんら変わらぬ攻撃性を披露した。
ツール総合2勝の後輪にすかさず飛び乗れたのは、前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネで圧倒的な強さを示したディフェンディングチャンピオンと、翌日ステージ優勝を飾ることになるヴィクトル・ラフェだけ。その他大勢のライバルたちは、一気にまとめて後方へと放り出された。
ただ、この日は、軽いジャブ程度。代わりにアダム・イェーツがUAEチーム・エミレーツに今大会初のイエロージャージをもたらし、後方では両手を天に突き上げながら、ポガチャルが区間3位のボーナスタイム4秒をさらい取った。
「最高のスタートが切れた。自分の走りにも、チームの走りにも満足している。今日、エンジンが、動き始めた。最後の上りではいまだ完全ではなかったけれど、調子の良さは確認できた」(ポガチャル)
2日目も同じ風景が繰り返された。やはりステージ最後の2級ハイスキベルで、ポガチャルとヴィンゲゴーが競り合う。しかもこの日は山頂に「ボーナスポイント」が設置されていたものだから、スプリントはさらに過熱した。1位通過8秒をかっさらったのはポガチャル。フィニッシュではユンボ・ヴィスマはワウト・ファンアールトの区間取りに失敗し、対するUAEはA・イエーツのマイヨ・ジョーヌ保守とポガチャルの区間3位=4秒ボーナス獲得を成功させた。
「僕はとにかく総合争いに集中して、ポガチャルの動きに反応した。自分の脚の調子には好感触を抱いてる。望んでいた通りの状態にあるし、今後3週間に向けて自信もある」(ヴィンゲゴー)
即興でヴィンゲゴー先制
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【ハイライト】ツール・ド・フランス 第5ステージ|Cycle*2023
ライバル候補に名を挙げられていたはずのエンリク・マスとリチャル・カラパスは、初日の落車のせいで、無念にも今大会のリタイア1号・2号となった。一方で昨年のジロ・デ・イタリア覇者ジャイ・ヒンドレーは、一騎打ち状態に待ったをかけようと試みた。早くもピレネーに入った5日目、初めてのツール出場で、初めての区間勝利と初めてのマイヨ・ジョーヌ。総合2位以下にまんまと47秒もの差をつけた。ただこれも一日限りの天下に過ぎない。
そもそも逃げを容認されたこと自体がかなりの異常事態だった。ヴィンゲゴーが「まるで自分向きのコースではない」と考え、自ずとユンボが「チームから複数を逃げに乗せ、区間を狙う」プランを建てていたせいでもあった。ところが「ミリ単位の計算で動く」と評判の男が、第5ステージの最終峠、1級マリー・ブランクの途中で即興に転じる。急遽セップ・クスにテンポを上げるよう命じ、さらには自らがアタックを打った。
「少し彼をテストするつもりだったんだ。自分の脚の状態が最高だったから」(ヴィンゲゴー)
そのポガチャルは、反応できなかった。3年前に生まれて初めてツールの区間勝利を手に入れた思い出のコース上で、全速力で遠ざかっていくヴィンゲゴーの背中を、無言で見つめるしかなかった。この日だけで1分04秒ものタイムを失った。幸いにも序盤2日間に収集したボーナスタイムのおかげで、宿敵に対する総合被害は53秒差に食い止めた。
「僕自身はそれほど悪くはなかったんだ。ただヨナスがとてつもなく速かっただけ」(ポガチャル)
ポガチャルが流れを引き戻す
翌日、素早く、ポガチャルは反撃に出た。前日と違って、この第6ステージはヴィンゲゴーは計画に則って着々とレースを進めたが、だらかこそ読解可能でもあった。「ユンボはトゥルマレで強烈なテンポを刻み、そこからの下りでファンアールトが前待ちしてる」と、1年前の夏、同じような計画に幾度となく苦しめられたポガチャルは言い当てた。
「トゥルマレでは、とにかく後輪にしがみついていくよう心掛けた。最終峠が僕とヨナスとワウトの3人だけになることは、あらかじめ分かっていたから」(ポガチャル)
昨ツールの反省から、衝動を踏みとどまる賢さもまた、ポガチャルは身につけた。まさしくファンアールトが最終登坂で驚愕の牽引を終えた直後、残り4kmですぐにアタックを……とも、もちろん考えた。しかし無線で「スマートに動け」と指示され、フィニッシュ手前2.7kmまで我慢した。
ヴィンゲゴーを置き去りにするポガチャル
「フィニッシュラインにたどり着いた時は、全力を出し切ってへとへとだった。だからアタックのタイミングは後悔していない。もっと早く飛び出していたら、どこかで脚がなくなっていたかもしれない」(ポガチャル)
逆に前日の即興と超級トゥルマレでの猛攻で、ヴィンゲゴーは脚を使い果たしていた。弾丸のように飛び出していったポガチャルに、24秒の遅れを喫した。今大会初の山頂フィニッシュはポガチャルが射止め、ヴィンゲゴーが総合首位の座を獲得した。それぞれにボーナスタイムも10秒、6秒ずつ収集。つまり2人の総合タイム差は、53秒から25秒へと縮まった。
「マイヨ・ジョーヌを再び着ることができて嬉しい。もちろん区間勝利が欲しかったけど。このままパリまでとんでもない戦いが続いていくんだろう。待ちきれないね」(ヴィンゲゴー)
名よりも実をとる
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【ハイライト】ツール・ド・フランス 第9ステージ|Cycle*2023
35年ぶりのピュイ・ド・ドーム帰還に、多くの自転車関係者の胸は高鳴った。数々の伝説が紡ぎだされた特別な場所に、59年前の夏にジャック・アンクティルとレイモン・プリドールが肩と肩とをぶつけ合った山に、新たにその名を刻むのは果たしてどちらなのか……と。
ところが肝心の第9ステージは、集団をコントロールする立場にあるユンボは、大きな逃げを見送った。しかも最大15分近くもリードを与えた。もしかしたら、ポガチャルに、これ以上のボーナスタイムを与えたくなかったのかもしれない。
「そりゃあスポーツ選手だからいつだって勝ちたいとは思うけど、去年の経験から、常にステージ勝利を獲りに行けるわけではないということを学んだんだ。常に最優先すべきは総合だから」(ポガチャル)
ただし36歳マイケル・ウッズが見事なツール区間初優勝を遂げた背後では、恐ろしく壮絶な一騎打ちが待っていた。ポガチャルが仕掛け、ヴィンゲゴーだけが喰らいついた。山頂まで1.4km、世界は2人きりになった。休火山の激勾配で繰り広げられた、数十メートル差を巡るぎりぎりの攻防は、まるで永遠に続くかのようで。広い青空の下で、2人を隔てたのは、8秒というごくごく小さな空間だけだった。
「全力を尽くした。わずかだけどタイムを奪えたことが嬉しいし、相手にプレッシャーをかけられたことに満足してる」(ポガチャル)
「今日の最終盤はタデイのほうが強かった。僕はこの先も戦い続けるだけ。パリまでジャージを守るよう努力していく」(ヴィンゲゴー)
風の強い山頂では、ヴィンゲゴーが4日連続でマイヨ・ジョーヌ表彰式に臨んだ。初日から新人ジャージをまとい続けているポガチャルは、総合17秒差の2位で、第1回目の休息日を迎えた。総合3位ヒンドレーは2分40秒、さらには4位以下は、すでに軒並み4分22秒以上の遅れを喫している。
カヴェンディッシュの早すぎる別れ
総合エース、カラパスのリタイアの報を受け、即日ニールソン・パウレスは本格的に山岳ジャージ獲りへ向け動き出した。第1ステージの2級峠で収集していた5ポイントを元手に、第2、第3ステージと2日連続で逃げ、さらには第6、第9ステージの難関山岳2ステージでも得点を重ねた。もちろん行く手には、いまだジュラ、アルプス、ヴォージュと3つの山脈が待ち受ける。その上、総合を争う2人が、本人の意思とは関係なく自動的に大量ポイントを積み上げていくはずだから、本当の赤玉勝負はこれからだ。
一方で大会3日目にようやく火蓋が切られたスプリント大戦では、4度のスプリントチャンスのうち3度、ヤスペル・フィリプセン(とマチュー・ファンデルプール)が最速の証明を果たした。残す1回の第8ステージでさえ、決して自分向きではない地形ながらーーむしろ脚質的にも心情的にもファンデルプール向きの土地だったーー、死にもの狂いでもがきマッズ・ピーダスンに続く2位。望み通りにマイヨ・ヴェール用ポイントを最大限回収し、2位以下には早くも110ポイントもの大差をつけている。
悲報もあった。今季限りの引退を発表しているマーク・カヴェンディッシュが、落車による鎖骨骨折で、第8ステージの半ばに帰宅を余儀なくされた。前日には鋭い早駆けで2位に飛び込み、38歳でなお衰えぬ脚力を見せつけたばかりだったというのに。単独史上最多ステージ勝利となる35勝にあと一歩届かぬまま、史上最強スプリンターとツールとの恋物語は、最終章を迎えた。
昨夜病院からカヴェンディッシュが戻ってきて、チームメイトにお別れのシーンです今日家に帰るようですが、はやく良くなりますように!そして、またすぐ戻ってきてください#jspocycle https://t.co/W0bXMQWcxs
— J SPORTSサイクルロードレース【公式】 (@jspocycle) July 9, 2023
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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