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サイクル ロードレース コラム 2022年7月29日

濃厚かつ史上最速のツールがシャンゼリゼでフィナーレ|辻啓のStravaデータから読み解くツール・ド・フランス

ツール・ド・フランス by 辻 啓
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街中を走り抜けるメイン集団

第16ステージ カルカッソンヌ ~ フォワ

1級山岳ミュール・ド・ペゲール(距離9.3km/平均7.9%)のうち、頂上手前の急勾配区間(距離3.5km/平均11.7%)でトップタイムを叩き出したのはマイヨ・ジョーヌグループを牽引したセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)で、その登坂タイムは13分36秒(平均スピード15.4km/h)。一方、グルペット内のフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)の登坂タイムは21分07秒(平均スピード9.9km/h)でした。

タイムリミットが迫っている場合、グルペットは超高速で下りをぶっ飛ばしますが、この日は余裕があったためフィニッシュ地点まで比較的ゆったりと走行。マイヨ・ジョーヌグループのポガチャルが残り26kmを25分29秒(平均スピード60.9km/h)で駆け抜けているのに対し、グルペットのガンナは27分32秒(平均スピード56.3km/h)でした。

先頭を走る3人(マクナルティ・ポガチャル・ヴィンゲゴー)

第17ステージ サンゴダンス ~ ペラギュード

ピレネー山脈の険しい山道が牙をむく第17ステージ。129.7kmという、最終日のパリ・シャンゼリゼとタイムトライアルを除くと今大会最短のコースレイアウトでありながらその獲得標高差は3,300m。残り70kmを切ってからは文字通り登りと下りしかないコースでマイヨ・ジョーヌをかけた激しい戦いが繰り広げられました。

ポガチャルのアタックにヴィンゲゴーが反応し、気づけば先頭はアシスト役のブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)を含めた3人だけに。最後の1級山岳ペイラギュード(距離8km/平均7.5%)を平均スピード21.7km/hという高速で駆け上がっても3人の隊列は崩れず、勝負は最大勾配16%、平均勾配14%の登りが400mにわたって続くペイラギュード飛行場の滑走路区間へ。

少しの牽制を経て残り100mからスプリントしたポガチャルは、平均勾配14%の登りを最高スピード24.5km/hで駆け上がってヴィンゲゴーに先着しています。この日の結果を受けてポガチャルはボーナスタイムで4秒挽回したものの、両者の総合タイム差は2分18秒。爆発力の有無を除いて両者の力はほぼ拮抗しており、翌日の第18ステージの超級山岳オタカムで今大会最後の山岳決戦が繰り広げられることになりました。

参考までにグルペット内で1級山岳ペイラギュードの登りをこなしたアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)の平均心拍数は、タイムオーバーまでかなり時間的な余裕があったこともあり、124bpmという低さ。タイムオーバーまで16秒というギリギリのタイムでフィニッシュに滑り込んだファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル)を含めてスプリンターたちは完走に駒を進めています。

ステージ優勝を飾ったヴィンゲゴー

第18ステージ ルルド ~ オタカム

「ツールの山岳決戦、ここに極まれり」という第18ステージは、超級山岳オービスク峠と1級山岳スパンデル峠(ツール初登場)を越え、超級山岳オタカムにフィニッシュするという獲得標高差4,000mの過酷なレイアウト。

攻撃的な走りに徹したポガチャルは1級山岳スパンデル峠を29分32秒で駆け上がってKOM獲得。VAM1,725のハイペースでもヴィンゲゴーを振り切ることができず、そこからテクニカルな下りをこなして最後の超級山岳オタカムへ。ちなみに逃げグループのファンアールトの1級山岳スパンデル峠の登坂タイムは31分52秒で、グルペットは43分06秒。そして下り区間はファンアールト12分00秒、ポガチャル12分28秒、グルペット11分53秒でした。

下りコーナーで転倒したポガチャルをマイヨ・ジョーヌのヴィンゲゴーが待つというスポーツマンシップを見せながら、今大会最後の山岳決戦がスタート。超級山岳オタカム(登坂距離13.4km・平均勾配7.7%)でファンアールトが「前待ち作戦」を成功させてヴィンゲゴーをアシストし、ついにポガチャルが脱落します。ポガチャルは超級山岳オタカムを37分36秒で駆け上がったものの、ヴィンゲゴーから1分04秒遅れ。ステージ優勝を飾ったヴィンゲゴーの登坂タイムは36分32秒でした(ファンアールト41分11秒、グルペット53分06秒)。グルペット内のクリストフは相変わらず平均心拍128bpmという低強度です。

最終ストレートでロングスパートを仕掛けたラポルト

第19ステージ カステルノ・マニョアック ~ カオール

ピレネー決戦を終えてツールは一路パリへと北上開始。いわゆるトランジション(移動)ステージとなった第19ステージはスプリンター向きの平穏な展開になると思いきや、強力な5人が逃げたこと、そしてスプリンターチームが力づくでスプリント勝負に持ち込むために強力に集団牽引したことで高速な展開に。スタートからフィニッシュまで全くスピードが落ちなかったためこの日の平均スピードは48.684km/h。第6ステージの49.376km/hに次ぐ今大会2番目に速いロードステージになりました。

ステージ9位に入ったルカ・メズゲッツ(スロベニア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)のSTRAVAログを見ると、粘り強く先頭で逃げ続けていた選手がいたためラスト25kmの平均スピードは56.1km/h(平均出力は297W)。平均勾配3.2%の最終ストレートで59秒間にわたって平均出力602W、最大出力1,063Wで踏みましたが、ロングスパートを仕掛けたクリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ)が勝利を手にしています。

最後のロスピタレ峠を走行するファンアールト

第20ステージ ラカペル-マリバル ~ ロカマドゥール

獲得標高差400mほどのアップダウンのある40.7kmの個人タイムトライアルで再びユンボ・ヴィスマが圧倒的なチーム力を披露。3つの中間計測地点でマイヨ・ジョーヌのヴィンゲゴーがトップタイムを連発しましたが、総合優勝を確実なものにしたため終盤はリスクを負うことなく守りの走りに。最終的にファンアールトがステージ優勝し、ヴィンゲゴーがステージ2位に入るワンツー勝利を果たしています。

フィニッシュに向かう最後のロスピタレ峠(登坂距離1.57km・平均勾配7.2%)を、TTバイクに乗ったファンアールトは平均スピード26.5km/hで走破してKOM更新。ファンアールトは平坦区間でもKOMを連発する走りで、下り区間でリードを広げてのステージ優勝でした。

走行データを公開している選手のSTRAVAログを見てみると、ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)は50分41秒間にわたって平均心拍162bpm、平均出力359Wで踏み、平均スピード48.134km/hでステージ17位。ちなみにステージ最下位のフランク・ボナムール(フランス、B&Bホテルズ・KTM)は平均心拍152bpm、平均出力298W、平均スピード42.457km/hでした。

凱旋門に向かうプロトン

第21ステージ パリ・ラデファンス ~ パリ・シャンゼリゼ

ツール最終日はパリ郊外をスタートしてパリ中心部のシャンゼリゼに至るお決まりの平坦ステージ。前半はマイヨ・ジョーヌのヴィンゲゴーを囲んで和やかに進み、シャンゼリゼ周回コースに入ったところで本格的なレースがスタート。マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、モビスター)のSTRAVAログを見ると、荒れた石畳が敷かれているにもかかわらず、シャンゼリゼ到着からフィニッシュまでの平均スピードは50.0km/hに達しています。

合計8周する周回ごとに平均スピードを見ると、51.6km/h、50.8km/h、49.9km/h、47.3km/h、49.6km/h、49.8km/h、50.1km/h、55.0km/hでした。石畳の凸凹に跳ねるバイクを抑え込みながら、ヨルゲンソンは下り基調のシャンゼリゼ復路を最高スピード70.8km/hで駆け抜けています。本来の力を発揮できない疲労困憊のスプリンターたちが大勢いる中、ステージ優勝はヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)でした。

初日の個人タイムトライアルを除いて一回も雨に降られないという、とにかく暑くて乾いたツールが終了。デンマーク、フランス、ベルギー、スイスの4カ国を駆け抜けた大会は、決して山岳ステージが少ないという訳ではないにもかかわらず、連日激しいアタック合戦が繰り広げた結果、42.026km/hという史上最速平均スピードを記録しています。

文:辻 啓
代替画像

辻 啓

海外レースの撮影を行なうフォトグラファー

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