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サイクル ロードレース コラム 2022年7月23日

【Cycle*2022 ツール・ド・フランス ファム:プレビュー】フィナーレはラ・シュペル・プランシュ・デ・ベル・フィーユ!女子版ツール・ド・フランスが、華々しく路上へと走り出す

ツール・ド・フランス by 宮本 あさか
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4賞ジャージ

栄光の4賞ジャージを着るのは誰だ

すべての自転車乗りにとって憧れであり、ロードレース界最大のシンボルであるマイヨ・ジョーヌが、ついに強くて速い女性を美しく飾る日がやって来た。男子版ツール・ド・フランスの長くてとびきり熱かった戦いが、シャンゼリゼに凱旋するほんの数時間前に、新しい歴史の幕が開く。史上第1回目のツール・ド・フランス・ファム……つまり女子版ツール・ド・フランスが、華々しく路上へと走り出す!

かつて女子版フランス一周が存在しなかったわけではない。ただし1955年に41選手で争われたツール・ド・フランス・フェミナンは、第2回目が行われぬまま消えていった。1980年代には、旧ツール開催委員会が女子版を試みたが、「採算が取れない」という理由で6回で終了。1990年に形式を変えて再開されるも、やはり4度で打ち止めに。本家ツールの愛称「グラン・ブークル(大きな輪)」を拝借し、グラン・ブークル・フェミナンという名で1992年から17回に渡って生き延びた大会もあった。最後の2009年は全4ステージ制で行われ、当時22歳だったマリアンヌ・フォスが総合3位に食い込んでいる。

そして2022年、機は熟した。現ツール開催委員会は2014年以降、男子大会と同じコースを使用したワンデーレース(もしくは2日制)「ラ・クルス」で準備を重ねてきたし、国際自転車競技連合が2016年に発足させたウィメンズワールドツアーは、年々着実に発展してきた。「我々ツール開催委員会が始めるからには、必ずや継続性のあるものでなくてはならなかったのだ」と語るツール開催委員長クリスティアン・プリュドムは、競技水準も認知度も、なにより採算面でも、女子自転車ロードレースが「ツール・ド・フランス」の名を冠するだけの十分なレベルに達したと判断。ゴーサインを出した。

もちろんツール・ド・フランス・ファムのボスには、とびきりふさわしい人物が選ばれた。元フランス女子チャンピオンという実力派選手であり、本場フランスのテレビ局で女性として初めて解説に座った先駆者でもあり、私生活ではジュリアン・アラフィリップのパートナー……というマリオン・ルスが、旗を振り、女子プロトンを新たな次元へと導くのだ!

マリオン・ルス

マリオン・ルス

歴史的な第一歩は、8日間かけて刻まれる。フランスのシンボルとも言えるエッフェル塔からシャンゼリゼまでを駆け抜けて、バカンス中のパリっ子たちを熱狂させた後、一行は東を目指す。

スプリンター向けの2日間を終えると、続く2日間は、シャンパーニュの産地で、アップダウンに強いパンチャーたちの脚がパチパチと弾け上がる。第3ステージの勝負地が最終盤に突き出す勾配12.2%の激坂なのだとしたら、翌第4ステージの目玉は「白い道」。ストラーデ・ビアンケやパリ〜トゥールでおなじみ、ぶどう畑を縫うように走る土の道が、全4セクター・計12.9kmも待ち構える。

続く第5ステージはほぼ平坦基調とは言え、コース距離は175.6km。たしかに男子エリートにとっては、なんてことのない平凡な距離かもしれない。しかし今年の女子版ジロ最長ステージが126kmで、今季女子ワールドツアーのワンデーレースでさえ163kmが最長だったことを考えると……自転車に乗ったレディーたちにとってはいきなりミラノ〜サンレモ並みの長距離ステージが挟み込まれたことになる。

そしてヴォージュ山塊で過ごす週末へ。大会6日目の金曜日に軽めのアップダウンで脚を目覚めさせたら、土曜日と日曜日は本物の難関山岳へと挑みかかる。

大会7日目のセレスタ〜ル・マルクシュタイン127.1kmの道の上には、3つの1級山岳が聳え立つ。ステージ半ばに連続して上るプティ・バロンとコル・デュ・プラッツエルヴァーゼルは、いずれも平均勾配8%を超える難峠だ。フィニッシュ直前には、登坂距離が13.5kmと極めて長いグラン・バロンによじ登らねばならない。

7月最後の日、第1回ツール・ド・フランス・ファム最後のステージは、「イエロー月間」の締めくくりにふさわしいクイーンステージが待っている。

ステージは平地から静かに始まる。47.4km地点の中間ポイントで、「クイーン・オブ・スプリンター」の証であるマイヨ・ヴェール争いを済ませたら、いよいよステージ終盤の山場へ。52.5km地点の2級コート・デスムリエールは、登坂距離こそ2.3kmと短いものの、8.5%の平均勾配で早々に脚のない者たちを切り捨てにかかるだろう。また84.6km地点の1級バロン・ダルザスは、1905年から男子チャンピオンたちの熱い走りを見守って来た「大会史上初の本格山岳」であり、今年は女子たちのバトルの証人となる。

なにより、フィナーレは、おなじみラ・シュペル・プランシュ・デ・ベル・フィーユ!

日本語に訳せば「美しいお嬢さんたちの超高台」となる山道だが、決して優しいお嬢さんなどではない。登坂距離は7km。平均勾配8.7%。前半から11%超のゾーンがいくつも点在するし、ラスト1kmにはグラベル路。さらにフィニッシュ直前の最終コーナーでは勾配は24%にも達する。7月8日には、タデイ・ポガチャルが爆発的な山頂スプリント力を見せたが、この7月31日に、恐ろしき激坂を従えることができるのは、ただ最強の女王だけなのだ。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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