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サイクル ロードレース コラム 2022年7月19日

パヴェや激坂フィニッシュをこなし、ツールは決戦の地アルプスへ|辻啓のStravaデータから読み解くツール・ド・フランス

ツール・ド・フランス by 辻 啓
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第4ステージ ダンケルク 〜 カレー

猛烈な勢いで駆け抜けたファンアールト

ツールの公式セグメントの一つである最初の4級山岳カッセルではルイス・マス(スペイン、モビスター)が3分05秒をマーク。しかしまだまだステージ前半だったためペースはゆったりで、過去にダンケルク4日間レースで登場した際のタイムには及んでいません。ちなみにプロライダーの平均は4分00秒で、アマチュアライダーの平均は5分55秒。タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は3分17秒でした。

この日の最大のサプライズはなんと言ってもマイヨジョーヌを着るワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)のロングアタックです。平均勾配7.9%の最後の4級山岳キャップ・ブラン・ネでペースアップしたユンボ・ヴィスマのトレインに発射される形で、登りを平均スピード32.1km/hという猛烈な勢いで駆け抜けたファンアールトがそのまま独走状態に。登りだけでライバルたちに8秒程度のリードを築いたファンアールトがそこからフィニッシュまで平均スピード61.7km/hで快走しています。

第5ステージ リール・メトロポル 〜 アランベール・ポルト・デュ・エノー

パヴェが設定された第5ステージ

合計11ヶ所、合計19.4kmのパヴェ(石畳)が設定された第5ステージ。過去にもパヴェがツールに登場したことはあったものの、セクターの長さや難易度は過去最高とも言われる危険なステージで、実際に落車やパンク、メカトラが続出して荒れたレース展開になりました。

どれだけタイヤ幅を大きくして空気圧を落とすなどのパヴェ対策を施しても荒れたパヴェを走るのは難しいもの。最後のセクター1を最速で駆け抜けたのは、落車で遅れたエースのオコーナーを引き上げるために尽力したボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、アージェードゥーゼール・シトロエン)で、所要時間2分06秒、平均スピード46.2km/hという猛烈なスピードで荒れたパヴェを突き進んでいます。

同じくヴィンゲゴーのためにメイン集団を牽引してポガチャルを追いかけたファンアールトが所要時間2分08秒、平均スピード45.5km/hをマーク。しかしジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)とともに飛び出したポガチャルのリードは大きく、ファンアールトはこのセクターでタイム差を9秒縮めるのがやっとでした。

気になるのはジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスの同年出場に挑戦中のマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)の元気のなさ。この日も自由な役割が与えられつつも目立つ走りが出来ず、セクター1を心拍数172bpm、平均スピード41.0km/h、平均出力329Wという平均的なスピードで駆け抜けています。しかし流石はオフロード走行に長けているファンデルプールだけに、パヴェ区間の出力は同じ体重の選手たちよりも低い印象です。

第6ステージ バンシュ(ベルギー)〜 ロンウィー

シャルルヴィル=メジエールを通過するプロトン

気が休まらないステージが続くツール前半戦。パヴェで苦しんだ選手たちはこの今大会最長(219.9km)で逃げを見送ると思いきや、スタートから延々とアタック合戦が続く消耗戦に。レース開始から2時間が経過しても平均スピードが51.2km/hという高速な展開で、マイヨ・ジョーヌを着るファンアールトが逃げに乗るという珍しい光景が見られました。ファンアールトのSTRAVAログを見るとステージ終盤にかけての独走中もペースを維持。しかし最終的にメイン集団に捉えられ、マイヨ・ジョーヌ防衛に失敗しています。

そして最後は登坂距離1.6%/平均勾配5.8%の登りフィニッシュ。手前の3級山岳で絞られた精鋭集団によるスプリントに持ち込まれ、ポガチャルがステージ優勝を飾るとともにマイヨ・ジョーヌを獲得しています。ツール公式セグメントの最終ストレートのデータを見ると、ポガチャルは勾配3.9%の緩斜面を44.5km/hで駆け抜け、パンチャー系スプリンターのマイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)を力で下しています。スプリント中のトップスピードは51.8km/hでした。

第7ステージ トンブレーヌ 〜 ラ・シュペールプランシュ・デ・ベルフィーユ

激坂フィニッシュでポガチャルのパワーが炸裂

1級山岳ラ・シュペール・プランシュ・デ・ベルフィーユの頂上決戦。ただでさえ厳しいプランシュ・デ・ベルフィーユの登りをさらに1km延長し、しかも未舗装路&最大勾配24%の激坂が登場するフィニッシュで、またもやポガチャルのパワーが炸裂しました。

ハイペースを刻むメイン集団の中から、ラスト1kmを切って先頭に立ったポガチャル。最大のライバルであるヴィンゲゴーのアタックに食らいついてペースを上げると、序盤から逃げていたレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)をあっけなくラスト100mでパスしてしまいます。そのまま踏み続けたポガチャルがヴィンゲゴーを差し切ってステージ2連勝。ポガチャルのSTRAVAログを見ると、登坂距離7km/平均勾配8.7%の登坂タイムは19分37秒のセグメントトップで、その平均スピードは21.2km/h。

1級山岳ラ・シュペール・プランシュ・デ・ベルフィーユでのポガチャルのVAM(平均登坂速度=1時間あたりの上昇量)は1,830に達しています。この登坂スピードを(空気の薄さや勾配を無視して)単純に乗鞍ヒルクライムに当てはめると、乗鞍高原から頂上まで41分18秒で登ってしまうという驚異的な数字。ちなみにスプリンターたちを含むグルペットのVAMは1,100から1,300程度で、乗鞍ヒルクライムを58分〜1時間8分で登ってしまう計算です。

第8ステージ ドル 〜 ローザンヌ(スイス)

ファンアールトがトップスピードで駆け抜け勝利

スイスに向かう第8ステージは再び逃げ向きと見られながらも蓋を開けてみれば集団スプリントに。とはいえ最後は3級山岳(登坂距離4.8km/平均勾配4.6%)を駆け上がる登りフィニッシュ。最大勾配が12%に達する3級山岳でピュアスプリンターたちが脱落する中、精鋭集団に残ったマイヨ・ヴェールのファンアールトが安定感抜群の加速で今大会ステージ2勝を飾っています。ファンアールトのSTRAVAログを見ると、残り200mから本格的に踏み始め、勾配2.2%の緩斜面をトップスピード57km/hで駆け抜けての勝利でした。

ステージ3位に入ったのはマイヨ・ジョーヌのポガチャルで、着実にボーナスタイムを稼いで総合リード拡大に成功しています。なお、ポガチャルはスイス入国後の下り区間でトップスピード89.3km/hをマークしており、これは一般車両であればスピード違反で罰金を支払うレベル(もちろんレース中は適用されない)。この日は集団内で走行していただけにもかかわらず、ポガチャルは合計5つのKOMを獲得しています。

第9ステージ エーグル(スイス)〜 シャテル・レ・ポルト・デュ・ソレイユ

峠道を走るプロトン


スイス国内を走り、いくつものアルプスらしい峠道を越えてフランスに戻る第9ステージの獲得標高差は3,600m。逃げグループ内でステージ優勝争いが繰り広げられた結果、残り63kmを独走したボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、アージェードゥーゼール・シトロエン)が勇敢なる逃げ切り勝利を果たしました。

フランスとの国境に佇む登坂距離15.4km/平均勾配6.1%の1級山岳パ・ド・モルジャンをユンゲルスは39分54秒で登り切っています。それに対して、追走グループから追い上げたティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)は38分15秒。フランスの期待を背負ってステージ優勝を狙ったピノでしたがタイム差を詰めきれずにステージ4位に終わっています。UAEチームエミレーツ率いるメイン集団はピノとほぼ同じペースで登りをこなし、最後はポガチャルとヴィンゲゴーが登りフィニッシュでライバルたちから3秒差を奪うことに成功しています。

長い長い大会1週目が終わり、選手たちはアルプスの山間の町シャテルやモルジヌに散らばって休息日を迎えています。どの選手もおおむね30kmから60kmほどを低強度でリカバリーライド(リカバリーと言っても平均スピードは30km/hを超えるライドばかり)をこなし、生活リズムを崩さずに大会2週目へ。週明けのアルプス3連戦で再び頂上決戦が繰り広げられます。

文:辻 啓
代替画像

辻 啓

海外レースの撮影を行なうフォトグラファー

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