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【Cycle*2022 ミラノ~サンレモ:レビュー】秘密兵器を備えたプロトン随一の下り巧者がプリマヴェーラの王に!モニュメント初制覇のモホリッチ「自分を信じることを、決して止めなかった」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかアタックを打つポガチャル
しかもポガチャルの加速は、1度ではなかった。ツール・ド・フランス2連覇中の王者は全部で4度、強烈なアタックを打った。しかし平均3.7%、最大8%の勾配は、ポガチャルが一気に差をつけるには緩すぎたし、3.7kmの坂道は短すぎた。ファンアールトやファンデルプール、さらにはログリッチがことごとく穴を埋めた。
むしろセーアン・クラーウアナスンの渾身の一撃が、集団を破壊した。2年前のツールでは、下りアタックで区間2勝をもぎ取ったダウンヒル巧者は、頂上間際で長い長い加速を断行。ただポガチャル、ファンアールト、ファンデルプールだけが食らいつき、残り5.5km、4人でサンレモへの下りへと飛び込んだ。
「もしも調子が十分に良くて、ポッジオで脱落さえしなければ、最高の下りに打って出るチャンスがあると分かってた。ほんの少しリスクを冒すことになるけど、勝利に向かって粘れるはずだ、とね」(モホリッチ)
2月に体調を崩し、そこから100%にまで復調しながらも、ストラーデ・ビアンケの大集団落車で膝を痛めた。だから「絶好調ではなかった」と振り返るモホリッチは、上りでの差を最小限に食い止めた。マシューズやピーダスンらスプリンターたちと共に追走を仕掛け、そして、下りで素早く前の4人をとらえた。追いつくと同時にするすると最前線へと上がり……そのまま先頭で下り始めた。クレイジーなまでのスピードで!
ただ本人はクレイジーな状態などではなかった。グランツールで手にしてきた区間4勝はすべて200km超ステージという長距離巧者のモホリッチは、290kmを超えた先のスリリングなダウンヒル中でもなお、判断力と集中力とを保ち続けた。道路脇の段差をジャンプで回避し、家壁ぎりぎりにコーナーを攻めた。前走するオートバイのスリップストリームを、衝突ぎりぎりまで利用することも忘れなかった。
かつて独特なダウンヒルテクニック(トップチューブに座る「スーパータック」ポジション+ペダルを回す)でアンダー23世界選手権を制し、自転車界に新たな波を起こしたプロトン随一の下り巧者は、しかもこの日は秘密兵器を備えていた。それが「ドロッパーシートポスト」。マウンテンバイクではおなじみの、走りながらサドルを上下できるシステムは、モホリッチ曰く「普通に走ればより安全性が増し、全力で走ればものすごいスピードが出せる」もの。
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