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サイクル ロードレース コラム 2008年7月6日

【ツール・ド・フランス2008】第1ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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曇りと雨続きだったブルターニュ地方の空に、ようやく太陽が顔を出した。2008年ツール・ド・フランスの船出には、最高のお天気だ。・・・ただし海辺の町ブレストには、時おり時速90kmを超える強風が吹き荒れた。青い海原には白い三角波がたち、スペイン国旗を掲げた古い軍艦が波間に揺れていた。そして大砲の合図と共に、180人の選手たちがスタートを切っていった。

スタートからわずか2km地点で、第95回ツール最初のエスケープが誕生する。地元ブルターニュ生まれのリリアン・ジェグー(フランセーズデジュー)だ。7月1日に同コースをすでに下見していたそうだから、アタックをかける場所もあらかじめ目星をつけていたのかもしれない。こんな地元っ子の“地の利”を利用しようと、その後7選手がジェグーに合流。フランス選手4人、スペイン選手3人、そしてドイツ選手1人という8人のエスケープ集団が出来上がった。

1967年以来初めて、プロローグ(もしくは初日個人タイムトライアル)のないツール。つまりTTスペシャリストだけではなく、全ての選手が“初日区間優勝=マイヨ・ジョーヌ”という望みを抱くことが可能だ。前を行く8選手は25km地点で早くも後続に8分以上もの差をつけ、マイヨ獲得への意欲を大いに見せ付ける。ただし2004年に大逃げでマイヨ・ジョーヌを手に入れた“経験者”トマ・ヴォクレール(ブイグテレコム)は、「このエスケープ集団では逃げ切れないだろう」と早い段階で悟る。狙いを山岳賞に切り替えると、ゴールでは同ポイントで並んだビヨーン・シュレーダー(ミルラム)とゴール順位勝負を繰り広げ、見事に僅差(ヴォクレール127位、シュレーダー130位)で赤玉ジャージを着用する栄誉を手に入れた。

またヴォクレールの狙い通り、エスケープはゴール前7kmで終了した。残り35km地点で最後のチャンスを掴むために先頭集団から飛び出したダビ・デラフエンテ(サウニエルデュバル)とジェグーだったが、ツール総合本命を抱えるサイレンス・ロットとケースデパーニュの驚異的なスピードコントロールに抗うことは出来なかった。

細く曲がりくねったブルターニュの難しいアップダウンステージでは、何度も落車が目撃された。補給地点では他選手のサコッシュに引っかり、地面に叩きつけられたエルヴェ・デュクロラサル(コフィディス)が、残念ながら今ツールリタイア第1号に。28歳にして初めて掴んだツール出場権を、わずか1日で失ってしまった。また昨ツール山岳王フアンマウリシオ・ソレル(バロルワールド)は、ゴール前10km地点で激しく落車。左太ももと左膝から鮮血を流したままなんとかゴールしたが、グローブを外すと左手首上部が紫に腫れ上がっていた。骨折の疑いがあるそうで、精密検査の結果が待たれる。

ゴール地点は今ツール初日にして、最初の“頂上”フィニッシュ。1962年のアマチュアレースで史上初めて自転車レースを迎え入れ、「金の鉱脈を発見した!(つまり凄い登りを発見した)」と関係者たちに言わしめたカドゥダル坂への登りだ。ソレルの落車で大きく分断されたプロトンだったが、前方集団には名だたるクラシックハンター、登れるスプリンター、総合大本命たちがひしめいていた。そして本格的な登りが始まったゴール前1.5km地点から、集団は目くるめくアタック合戦へと突入した。

真っ先に勇気を出してアタックをかけたのはロメイン・フェイーリュ(アグリテュベル)。続いて残り1km“フラム・ルージュ”からステファン・シューマッハー(ゲロルシュタイナー)が単独先頭を引き受ける。ただし2007年アムステル・ゴールドレースで、最終峠カウベルグを力強く上り詰めたときのようにはうまく行かなかった。今季のフレーシュ・ワロンヌ勝者キム・キルシェン(チーム コロンビア)に、先を越されてしまったのだ。ただし「ステージ優勝よりも総合上位入賞のほうが大事。でもゴール前のスピードには自信があるから、チャンスがあったら区間勝利も狙う」と語っていたルクセンブルク出身選手も、ユイ峠同様に先頭で登り切ることは出来なかった。

いや、アルデンヌ3連戦の中でも最も格式高く最も難しいリエージュ〜バストーニュ〜リエージュを2度制した男に、単純にかなわなかっただけかもしれない。最終300メートルで急加速をしたアレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)が、ゴールラインまで凄まじく、しかし軽やかな登坂スプリント力を見せ付けると、人生2度目のツール区間優勝を手に入れた。もちろん同時に今ツール初、そして人生初のマイヨ・ジョーヌにも袖を通している。

賛否両論を呼んだボーナスタイムの不採用だが、総合優勝ライバルたちにとっては幸いな結果となった。6位カデル・エヴァンス(サイレンス・ロット)や7位フランク・シュレク(チーム CSC)はわずか1秒を失うに留まったし、17位アンディ・シュレク(チーム CSC)や21位ダミアーノ・クネゴ(ランプレ)、26位デニス・メンショフ(ラボバンク)は7秒損失だけで救われた。これで昨年通りに“1位20秒”のボーナスタイムが付いていたとしたら・・・。


●アレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)
ステージ優勝、マイヨ・ジョーヌ

ボクにとってもチームにとっても非常に大切な勝利だ。ボクらチームは1日中、エスケープの後ろでコースをコントロールし続けた。チームメイト全員が本当にとんでもない仕事を成し遂げたよ。ボクにとっては非常に印象的な勝利だ。コースプロファイルは全く知らなかった。最後にカーブがあることも知らなかったんだ。でも今日はとにかく体調がよかったから、『トライしてみよう』と自分に言い聞かせた。

(マイヨ・ジョーヌを初日に獲得したことは)プレッシャーとは感じない。ボクは2つの目標を立ててこのツールに乗り込んできた。区間優勝をあげること、そしてマイヨ・ジョーヌを着用すること。2つとも今日すでに達成できた。プレッシャーを感じるどころか、目標達成はボクに大いなる冷静さをもたらしてくれるだろう。ただしジャージを守っていくのは難しいだろうね。ツールはまだまだ長いから。とにかく今日の勝利には大満足だし、自分がジャージを獲得したことを本当にうれしく感じている。


●リリアン・ジェグー(フランセーズデジュー)
敢闘賞

スタート直後から飛び出した。監督に前方で戦いを仕掛けるよう指示されていたんだ。ゴールまで逃げ切ろうと思ったら、10〜15分差をつける必要があったね。でもプロトンはボクらに6〜7分しか与えてくれなかった。特に2人で逃げた最終盤は本当にきつかった。プロトンの“マシーン”にスイッチが押されてしまっていたからね。

ブルターニュは常に上り下りが登場するから難しいし、しかも今日は風が強かった。それでも後方にいるよりも、前方で走るほうがいいんだよ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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