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【Cycle*2021 クラシカ・サンセバスティアン:レビュー】カリフォルニア育ちのニールソン・ポーレスがプロ初勝利「言葉にすることすらできない」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかしかも残り30km。アーライツからの下り最終盤で、ロレンツォ・ロタとミッケルフレーリク・ホノレ、モホリッチが追走へと走り出して行ったとき、EFからポーレスが流れにすかさず飛び乗った。もちろんチームメートが前にいるおかげで、先頭交代に加わる必要などちっともなかった。残り23kmで合流した後は、そのカーが残る力を振り絞り、ポーレスのために精力的に働いた。モホリッチもまた惜しみなく牽引を行った。おかげでメイン集団との差はみるみるうちに開いた。
【フィニッシュシーン】クラシカ・サンセバスティアン|Cycle*2021
濡れた路面に苦しみ、すでに30〜40人にまで数を減らしていた後方メイン集団では、トレック・セガフレードが必死に追走を試みた。UAEも時に力を貸したが、他に協力者は現れなかった。前線にホノレを送り出したドゥクーニンク・クイックステップは「ブレーキ役」として集団前方に踏ん張ったし、どうやらモレマ曰く「スプリントに向け体力温存を好むチームが多かった」。しかも最終ムルギル・トルトラ峠への突入直前、再び落車が集団を襲う。多くの選手が地面に投げ出され、追いかける脚は鈍るばかり。残り10km、登坂口での差は1分10秒。わずかな望みに懸け、上りでチッコーネが飛び出しを仕掛けるも、すべては遅すぎた。万事休す。
ムルギルの激坂が始まると同時に、ここまで奮闘してきたカーが静かに力尽きた。代わりにアタックを打ったのはポーレス。上手く温存してきた力を、山頂まで1.2km、ちょうど激勾配15%ゾーン・最大19%に突入するタイミングで解き放った。バスクの熱狂的な観客の前を、ポーレスはひとり先頭で駆け上がる。
ただしライバルたちを完全に引き剥がせたわけではない。モホリッチが恐るべき執念で、しかし黙々とマイペースで、山頂間際で追いついてきた。その後輪にぴたり張り付いたオノレも、一旦は引き離されたロタも、やはり再合流を果たす。
むしろ4人の運命を分けたのは、ダウンヒル中の右カーブだった。残り4.9km。攻めすぎたモホリッチは、ぎりぎり難を逃れ曲がり切ったものの、一旦減速を余儀なくされた。背後にいたホノレはガードレールに衝突し、あわや崖下に転落寸前。ロタは滑って地面に転がり落ちた。ただポーレスだけが、なにごともなく先を急いだのだ!
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