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サイクル ロードレース コラム 2021年6月25日

Tourの景色に誘われて | ポー

ツール・ド・フランス by 山口 和幸
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病を治すと言われる泉がわき出るという聖地ルルドの大聖堂

病を治すと言われる泉がわき出るという聖地ルルドの大聖堂

ツール・ド・フランス2021でプロトンが訪れる、サイクルロードレースファンならずとも一度は訪れてみたい各土地の歴史と伝統に彩られた魅力をお届けします。

ポー / Pau

ツール・ド・フランスが定期的に発表するデータ集には、レースがよく訪れる町としてパリ、ボルドー、ポーがベスト3だと書かれている。フランス南西部に位置するポーはステージのゴールやスタートを担うだけでなく、ほぼ毎年のようにツール・ド・フランスが休息日を過ごす町でもある。

ルルドには世界中から集まった信徒がろうそくを掲げて巡礼に訪れる

ルルドには世界中から集まった信徒がろうそくを掲げて巡礼に訪れる

イギリス人に保養地として愛され、ヨーロッパ大陸初の本格的なゴルフコースやテニスコートも作られたポー。近年のツール・ド・フランスはあまりボルドーを訪問していないので、ポーがボルドーを抜いて2位に浮上するのは時間の問題だ。さらに言えば、パリはファイナルデスティネーションという位置づけなので、ツール・ド・フランスがレース途中に訪問する町はポーがダントツに多いのである。

フランスを13に分ける地域圏(日本で言う関東地方や関西地方のこと)としてはヌーヴェルアキテーヌ地域圏になる。赤ワインの産地として世界的に有名なボルドーに首府の座を譲るが、ピレネーアトランティック県の県都となるような大きな町だ。2021年大会で73回目のホストタウンとなった。ポーは自治体としても裕福であり、サイクルロードレースに好意的な町なのである。

第18ステージのパレード区間にあるジュランソンのブドウ畑

第18ステージのパレード区間にあるジュランソンのブドウ畑

ツール・ド・フランスがたまに訪問するタルブやルルドはポーから40kmしか離れていないが、この2市はオクシタニー地域圏。タルブやルルドが発着点となったときもチームや主催者が宿泊するのは行政区分を越えたポーの町だ。一方、ポーのホテルが満室であぶれた取材陣と観光客が流れるのが、巡礼地としてホテル数が多いルルドだ。

どうしてポーやルルドにツール・ド・フランスが毎年宿を取るかと言えば、ピレネーの勝負どころであるル・トゥルマレ峠やオービクス峠へのアクセスが容易だからだ。山の上にあるスキーリゾートにゴールしたときも、憲兵隊の先導によりチームバスとサポートカーが一気に下山すれば、ポーまでの100kmの道のりは1時間程度で乗り切れる。そのためピレネーの西半分がコースとなったときはポーに連泊するというケースも多い。

このあたりの名物料理は、ガチョウやブタなどの肉とインゲン豆を煮たカスレだ。またコースを走れば、沿道に「フォアグラあります」という看板を掲げた農家が点在する。

少女ベルナデットがマリア様に会い、泉を見つけたというルルドのほこら 

少女ベルナデットがマリア様に会い、泉を見つけたというルルドのほこら 

ツール・ド・フランスではボルドーと同様に伝統的なゴール都市としてフランス選手が頑張る傾向にある。2010年はピレネー3日目の第16ステージとしてポーにゴールした。Bboxブイグテレコムの新城幸也も出場していたが、チームメートであるピエリック・フェドリゴ(フランス)がゴール勝負でランス・アームストロングら7選手を制して優勝した。

2012年にポーにゴールしたときは、ピレネーを離れて比較的平たんなコースで行われた。FDJビッグマットに移籍していたフェドリゴがガーミン・シャープのクリスティアン・バンデベルデとの一騎打ちを制して優勝。ポーで連勝を挙げた。

特筆すべきなのが、新城(当時のチーム名はヨーロッパカー)の活躍ぶり。波状的なアタック合戦が一段落した31km地点で、新城ら5選手が集団を抜け出し、これに4人が追走して9人の第一集団を形成していた。59km地点で捕まるが、新城のチームエースであるトマ・ボクレールがカウンターアタックするなど、チームから求められた役割をしっかりとこなしていたのはさすがだ。

2017年もポーは平たん区間のゴール地点となり、このときばかりはクイックステップフロアーズのマルセル・キッテル(ドイツ)が2日連続のスプリント勝利で、この大会5勝目、大会通算14勝目を挙げた。

ル・トゥルマレ峠はいつもサイクリストでいっぱい

ル・トゥルマレ峠はいつもサイクリストでいっぱい

続く2018年。グルパマFDJのアルノー・デマールが伝統のポーで、コフィディスのクリストフ・ラポルトとのフランス人対決を制して大会通算2勝目を挙げた。フランスのスプリンターが平たんステージで1位と2位を占めたというのは、じつは40年ぶりだったという。

2019年のポーではこの大会唯一の個人タイムトライアルが行われ、フランスのファンが熱いエールを送る中、マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップが第1計測ポイント、第2計測ポイント、さらに第3計測ポイントをトップタイム通過していった。最終的にタイムトライアルを得意とするゲラント・トーマスを制してトップタイムでステージ優勝した。マイヨジョーヌを死守したことが決まった瞬間、ポーのサルドプレスからは拍手がわき起こるほどだった。

「信じられないよ。本当に幸せだ。ゲラント・トーマスにこれだけの差をつけて優勝できるなんて」とアラフィリップ。チームの監督もスタッフもこの偉業に感極まって涙を流したという。

ポーの奇跡。ポーはいつもフランス勢の味方だ。そしてマイヨジョーヌは勇者に想像以上のパワーを与えてくれる。

文:山口和幸

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山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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