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2019年の第8ステージはマコンからスタートした
ツール・ド・フランス2021でプロトンが訪れる、サイクルロードレースファンならずとも一度は訪れてみたい各土地の歴史と伝統に彩られた魅力をお届けします。
ブルゴーニュ / Bourgogne
2021ツール・ド・フランスで最長距離249.5kmを走る第7ステージは、フランス最長の河川であるロワール川をさかのぼっていき、後半部分は山岳地帯に突入し、ル・クルーゾにゴールする。じつはこの後半の山岳地帯というのがフランスの分水嶺のひとつ。ゴールのル・クルーゾは別の有名な大河の上流に当たる。ここはあのブルゴーニュ地方だ。
ブルゴーニュと言えばワインの一大産地であることをイメージする人もいるはず。毎年解禁日が決められるボジョレーヌーボーもブルゴーニュで醸造される。ブルゴーニュはソーヌ川によってもたらされた肥沃な大地を持ち、赤や白、ロゼなど多様なバラエティと味わいを備えたワインを世界中に提供している。
このソーヌ川はリヨンまで下ると、アルプス山脈から流れ出したローヌ川に合流してヴァランス、アヴィニョンの町をうるおし、最終的に地中海に注ぐ。いわば太陽へと向かう河川なのである。
フランスのマコンから西に8 kmのところにある石灰岩の断崖、ラロッシュ・ド・ソルトレ
ブルゴーニュ地方でもツール・ド・フランスの激闘は数多く演じられている。アルプスが大会後半に設定された年は、このブルゴーニュで最終決戦が行われることもあり、パリ凱旋前日のステージが終わるとプレスセンターで総合優勝を確実にした選手が会見に臨んできた。
1998年はイタリアのマルコ・パンターニが総合優勝しているが、最終日前日、ル・クルーゾをゴールにしたコースでタイムトライアルが行われ、前年の覇者ヤン・ウルリッヒが優勝し、一矢を報いている。2006年の最終日前日には、ル・クルーゾをスタートとした逆コースで個人タイムトライアルが行われた。
2003年のワインは100年に1度の出来といわれたが、この年はフランスが猛暑となり、ツール・ド・フランスを走る選手たちも大変だったことを記憶している。現在は薬物の不正使用で全記録が抹消されているが、ランス・アームストロングが7連覇(1999〜2005)の中で唯一苦戦した年だった。
とにかく猛暑だった。それまでのフランスといえば直射日光こそ強いものの、日陰に入れば過ごしやすく、日没後はセーターが必要なほど冷え込んだ。そのためクーラーは不要だったが、この年は夜になっても寝苦しく、体力を消耗したお年寄りの多くが他界。日なたに駐車していた取材車両も猛暑でタイヤ通気圧が異常値になり、アラームが鳴り出すほどだった。
2年に一度は最終日前日にブルゴーニュ泊。なにげない田舎宿だが、併設レストランがミシュラン掲載店ということがよくある
暑さに弱いのがアームストロング。その逆に暑さに強く寒さに弱いのが宿敵ウルリッヒだった。この年の総合優勝争いは大きくもつれ、最終日前日の個人タイムトライアルで総合2位ウルリッヒが首位アームストロングを逆転するのではと予想された。ところが決戦の日は朝から冷たい雨になった。アームストロングはどこまでラッキーなのかとつくづく思った。
ブルゴーニュ地方の主要都市と言えばマコン、ボーヌ、オーセルなどだ。ツール・ド・フランスはあまり通過しないが、アルプスからパリに戻るA6高速の途上にあり、後半にアルプスが設定された年はパリまでの大移動の途中で一息つくところ。
エスカルゴ、いただきます
選手はTGVで最終日のお昼過ぎにパリ近郊入りするが、ほとんどのチームスタッフや大会関係者は陸路へ。疲れ切った身体に最後のムチを入れ、パリを目指す。最終日は凱旋パレードとなるので、すでに戦い終えた感漂う各チームのスタッフが、長距離移動の中間に位置するブルゴーニュに宿泊し、エスカルゴに舌つづみを打ちながらワインで労をねぎらうシーンは定番だ。
期間中はカーゴパンツで過ごしていた大会運営の女性スタッフも、このブルゴーニュで必ずスカートに着替える。フランス人にとってパリはそれほど特別なものなのだ。
文:山口和幸
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山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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