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ロワール地方のシェール県でサイクリング
ツール・ド・フランス2021でプロトンが訪れる、サイクルロードレースファンならずとも一度は訪れてみたい各土地の歴史と伝統に彩られた魅力をお届けします。
ロワール / Loire
2021年ツール・ド・フランスの第6ステージはロワール川が流れるトゥールからスタートする。ツール・ド・フランスの姉妹レースである「パリ〜トゥール」のゴール地点と知られるトゥール市は、ロワール地方の中心都市。第6ステージでは、ロワール川沿いにある数々の古城が空撮で映し出されるのは間違いない。
フランスで最も長いロワール川の流域は温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、古くから王侯貴族たちが自然や狩りを楽しむために競って優雅な城館を建てた地方なのだという。
ツール・ド・フランスはひとつのスポーツイベントだが、同時にシャンボール城やシュノンソー城の美しき観光地を堪能できるのもその魅力の1つ。レースの国際映像に映し出される一大パノラマに息をのむ人も多いはずだが、ロワール川流域はまさにそのクライマックス。おうちにいながらにして世界随一の観光大国フランスをバーチャル旅行できるのがうれしい。
個人タイムトライアルがゴールするマイエンヌ県のラヴァル
ロワール渓谷周辺280kmは「ロワールの古城群」としてユネスコ世界遺産に指定されているのだからスゴいのはお墨付きだ。まさに世界随一の観光大国フランスのなせる技。
ロワール川の古城を代表するのは、小塔と煙突が林立するシャンボール城だ。フランソワ1世の命によりレオナルド・ダ・ヴィンチが設計したという。点在する城の庭園もみごとだ。ヴィランドリー城の雛壇式菜園も見学可。ショーモン・シュール・ロワール城は、世界中の造園家が自由に作品を作ることができる国際庭園フェスティバルが開かれることでも有名だ。
ガストロノミー(美食)もご一緒に。ラードで煮込んだ豚肉のリエット、焼きソーセージのアンドゥイエット、腎臓の煮込み、セル・シュール・シェールのヤギのチーズ、フランスで最古のコルムリーのマカロンなどおいしいものもいっぱいある。前菜からデザートまで特産物が盛りだくさんで、これを地元のワインと一緒にいただく。
ロワール渓谷ワインは産地が広大なのでバラエティに富むのが特徴で、どんな料理にも合うのがうれしい。ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ、シノン、ソミュール、ブルグイユ、サンセールの丘陵地帯で作られるワイン、発砲性のクレマン・ド・ロワールなど豊富な種類のワインがある。
第7ステージのスタート、ヴィエルゾン
そして隣のブルターニュ地方と同様に、自転車競技がとても盛んなエリアでもある。新城幸也がフランスでの拠点としている町はナント近郊にあるが、ナントはロワール川の下流域にあって、行政区分上はペイ・ド・ラ・ロワール地域圏だ。2011年に開幕地となったヴァンデ県もこの地域にある。
自転車好きのみならず普通の観光客が楽しくサイクリングするのもうってつけ。ロワール川沿いには800kmにわたって整備されたサイクリングロード「ロワール・ア・ヴェロ」があって、ホテルを泊まりながら数日間のサイクリングを満喫することができる。一般道だって快適だ。見渡すかぎりの大地が広がり、それを貫通する1本道はうねりを帯びながら地平線まで続いている。
こんなところに泊まれたら王様・女王様気分だ
アクイユ・ヴェロというサイクルツーリズム向けのサービスも充実している。自転車に適した宿泊施設、自転車のレンタル屋、観光局、観光地での自転車レンタル、自転車に乗っているときの荷物の移動、修理、駐輪場、サイクリングルートのアドバイスなどの情報を提供。レンタルスポットや駅まで送迎してくれたり、自転車の乗り捨てスポットなどをフル活用させると、ロワール川一帯を自転車で走りながら旅行ができるというわけ。
ロワール・ア・ヴェロというアプリはサイクリングルートの細かい部分までGPSで情報を教えてくれる。それだけでなく、宿泊施設やレストラン、レンタルや観光スポットを自分でセレクトして保存。アプリの出題チャレンジに挑戦し、アプリ内でトロフィーを獲得して、アマチュア、美食家などの称号をゲットできるというものもある。ちなみに最上級の称号は「ロワール・ア・ヴェロの王」だ。
ツール・ド・フランス取材時に何回かお世話になった大平原の中の農家がある。地平線まで広がる麦畑の中の一軒家。部屋は中世の古城のように手入れされていて、王様になった気分で眠りに落ちることができた。2011年の東日本大震災により、東日本が困難な問題に直面したとき、「もし移住するような事態になったら…」と頭に浮かんだ場所がじつはこのロワール地方だった。
「フランスの庭」と呼ばれるロワール渓谷は、小さな丘に美しい小川と美しい景観が広がり、昔から王侯貴族を魅了してきた。今もロワール川やその支流に沿って優雅にただずむ古城は22もある。お城の生活を体験したいならシャトーホテルに泊まることをオススメ。いつかツール・ド・フランスを現地観戦するなら、ロワール渓谷の古城に寝泊まりしながら、レースの沿道にくり出すなんてプランはいかが?
シュノンソー城
文:山口和幸
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山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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