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ブルトン語で「小さな海」という語源のモルビアン
ツール・ド・フランス2021でプロトンが訪れる、サイクルロードレースファンならずとも一度は訪れてみたい各土地の歴史と伝統に彩られた魅力をお届けします。
ブルターニュ / Bretagne
ツール・ド・フランスが「地の果て」と呼ばれるブルターニュ半島最西端のブレストで開幕するのは2008年以来のこと。サイクリストならブレストと言えば、世界で一番有名な長距離サイクリング大会「パリ〜ブレスト〜パリ」を思いつくはずだ。パリから600kmも離れたブレストを目指し、しかも往復する。だから距離は1200km。「地の果て」と感じるのも不思議ではない。
ところで2021年の第108回ツール・ド・フランスは当初、デンマークのコペンハーゲンで開幕するはずだったが、新型コロナウイルス感染拡大により東京五輪とサッカー欧州選手権が1年延期となったことで状況が一変した。コペンハーゲンは欧州選手権3試合のホストシティで、同時期に2つの国際大会を運営・警備することが困難と判断。この年のツール・ド・フランス開幕地を返上したのである。
モルビアンの巨石遺跡
前代未聞の困難を救済するために、開幕地を名乗り出たのが自転車愛に熱いブルターニュ地方だ。難局を切り抜けたコペンハーゲンは改めて2022年にツール・ド・フランス開幕地となることを表明した。
2021年は東京五輪が開催され、近代五輪の慣例として自転車男子ロードは大会初日に行われることから、ツール・ド・フランスは7月23日に開幕する東京五輪との日程重複を避けるため、通常よりも開催を1週間前倒ししている。つまり第108回大会がブレストをスタートするのはいつもの7月第1土曜ではなく、6月最終土曜なのである。
華やかな開幕の代替地となったブルターニュ地方ってどんなところなのだろう? フランス北西部に位置し、地図で見ると大西洋に突き出したブルターニュ半島がそれだ。ブルターニュを英語に置き換えると「ブリテン」となるくらいだから、歴史的・文化的に英国との接点が色濃い。バグパイプを吹きながら練り歩く伝統行事は英国北部のスコットランドさながらだ。
ブルターニュ地域圏の首府となるレンヌは、日本ナショナルロードチームの浅田顕コーチが現役時代に拠点としていた町。「自転車レースが盛んだから」という理由でレンヌを選んだという話を聞いたこともある。往年の名選手であるルイゾン・ボベがこの町の出身だ。
2018年もツール・ド・フランスはブルターニュ半島を走った
歴史をさかのぼれば、かつてはブルターニュ公国というひとつの国だった時代もある。そのときは南部に隣接するペイドラロワール地域圏の一部、ナントとその周辺も公国の一部だった。新城幸也がフランスの拠点とするベルビルシュルラビーもかつてはブルターニュだった。日本の自転車選手にもなじみの深いエリアなのである。
そしてツール・ド・フランス5勝のベルナール・イノーは「ブルターニュのアナグマ」というニックネームからも分かるとおり、ブルターニュ出身選手だった。
「ブルターニュでは数多くのレースがあるので、自転車レースで盛り上がるのも自然のことだ。ブルターニュ半島はどこにいってもアップダウンがあり、美しい大地と入り組んだ海岸線が特徴」とかつて来日したイノー氏。
ブルターニュの人たちは常に自転車レースが大好き
「町と町をつなぐ主要道路は交通量があるが、そこをはずせばクルマとほとんど遭遇せずに景色を堪能できるサイクリングルートがいっぱいある」
気候的には、ブドウが収穫できる北限を越えているのでワイン製造には不向き。そのためリンゴを原材料にしたシードルが名産だ。そんな飲み物にピッタリなのが白カビのチーズ。乳牛が口にする牧草地に海水が混じるところもあり、ちょっとだけ塩味の効いたチーズなどは格別で、それをシードルとともにいただくのが、ツール・ド・フランス取材時の楽しみだ。
シードルは白カビチーズと相性がいい
今回のツール・ド・フランスではブルターニュ地域圏にある4つの県で1ステージずつ開催されるのが見どころとなる。フィニステール県(第1ステージ=ブレスト〜ランデルノー)、コート・ダルモール県(第2ステージ=ペロス・ギレック〜ミュール・ド・ブルターニュ ゲルレダン)、モルビアン県(第3ステージ=ロリアン〜ポティヴィ)、イル・エ・ヴィレーヌ県(第4ステージ=ルドン〜フジェール)だ。
第1ステージから小刻みな起伏が連発し、集団を分断しかねない舞台設定。第2ステージは「ブルターニュのラルプデュエズ」と呼ばれるミュール・ド・ブルターニュに異なるアプローチで2回上ってゴール。第3ステージでは古代の巨岩遺跡で知られるカルナックを通過。第4ステージはスプリンターがこぞってねらう短距離区間。
蕎麦粉を焼いたクレープがこの地方の名物
2021年のツール・ド・フランスは開幕からの4日間だけをとってもじつにバラエティあふれる。個人タイムトライアルが設定された第5ステージから、いよいよ総合優勝をねらう有力選手らの出番となるが、序盤戦に一発を仕掛ける選手らが開幕からフルパワーで激走してくるのは必至。コロナ禍での異例含みのレースではあるが、激闘は例年以上に熱くなるに違いない。
文:山口和幸
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山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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